建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2002年2月号〉

寄稿

札幌市の除雪事業に対する取り組みについて

札幌市建設局長 西條 肇昌

西條 肇昌 さいじょう・ただまさ
昭和8年7月26日生
昭和41年3月日本大学理工学部経営工学科土木 卒業
昭和43年4月札幌市役所採用
昭和50年7月水道局拡張部配水課工務二係長
昭和51年5月 〃 西部配水事務所工務一係長
昭和55年4月 〃 拡張部工事課工事二係長
昭和58年6月 〃 拡張部工事課工事一係長
昭和59年5月 〃 拡張部計画課長
昭和63年4月 〃 工務部計画課長
平成元年4月建設局土木部街路建設課長
平成3年7月水道局工務部配水担当部長
平成6年4月 〃 給水部長
平成7年6月 〃 工務部長
平成9年4月建設局土木部長
平成3年4月建設局長

札幌市は、人口180万人を抱える大都市でありながら、多雪寒冷地域に位置し、年間の累計降雪量もおよそ5mに達することから、冬期間における交通の確保、生活環境の創造に向けた雪対策の充実が大きな課題となってきました。このため、除排雪のレベルアップや雪対策施設の整備を図ってきた結果、いまや雪対策にかかる費用は、年間150億円にものぼっています。
一方、高齢社会の到来や厳しい社会経済情勢のなか、雪対策に対する多様化した市民ニーズに応えるためには、より一層のパートナーシップの推進や、投資効果の高い事業の展開が必要となってきたところであります。
そこで本市では、平成12年8月、中長期的な視点に立ち、今後の雪対策を推進する上で、確かな目標を定め、様々な施策を着実かつ戦略的に展開していくことが重要であるとの認識から、「札幌市雪対策基本計画(平成12〜21年度)」を策定しました。
計画では、「冬期道路交通の円滑化と安全性の向上」、「パートナーシップによる冬期生活環境の充実」、「人と環境にやさしい雪対策の実現」を基本的な方針とし、この方針に基づき5つの目標を定め、各種事業を展開することとしております。
目標の1つ目は「効率的な幹線道路ネットワーク除排雪」で、道路の種別ごとに最低限確保すべき幅員のほかに目標とする路面状況など、冬期道路サービスレベルを確立することとしています。一方、「冬期歩行環境の向上」として、地下鉄・jrの駅、福祉総合施設、総合病院など公共施設周辺を重点化箇所と位置付け、「歩道除雪の強化」に取り組むこととしています、
2つ目は「冬期路面管理基準の確立」ですが、路面の滑りやすさを状況別に分類して、道路種別ごとの路面管理基準を設定しました。また、脱スパイクタイヤ対策の緊急措置として整備されたロードヒーティングについて、毎年の維持管理費(光熱費)及び今後想定される施設の更新に膨大な費用が必要となることから、除雪作業と凍結防止剤散布を効果的に組み合わせる手法を取り入れるなど、「路面管理手法の見直し」を進めることとしています。その他、「情報通信技術の活用による効率化」として、lts技術を雪対策の分野にも導入し、凍結路面対策の効率化を図っていくこととしています。
3つ目は「パートナーシップによる除排雪の充実」として、身近な生活道路の除雪を充実することとしています、その一つとして進めようとしている「計画除雪」ですが、これは生活道路において、あらかじめ除雪する日を定め、日中に行なうものであり、多少の雪が降ってもすぐには除雪しないこととなりますが、除雪機械台数にゆとりのある時間帯に行うため、各戸の間口部の雪処理作業を軽減することが可能となるものです。また、除雪作業が困難な特定の高齢者や障害者を対象として、地域の協力員が間口の除雪を行う仕組み作りも行っていくこととしております。
4つ目の「環境にやさしい雪対策システムの追求」につきましては、今後も未利用エネルギーを積極的に活用した大型融雪槽の整備を進めるとともに、地域の雪は可能な限り地域内で処理する「地域内雪処理システムの確立」を推進し、雪堆積場の郊外化に伴う運搬排雪距離の増大を防ぎ環境負荷の低減を図ることとしています。なお本市は、13年12月にiso14001取得の認証を受けたところであり、この目標についてより一層推進を図ることとしております。
5つ目の「情報共有体制の構築」では、インターネットや携帯電話など新しいツールを複合的に活用し、戦略的な「情報共有体制の構築」を図ることとしています。
この一環として、札幌ドームをメイン会場に、平成14年1月28日〜31日の日程で開催される「piarc国際冬期道路会議札幌大会」では、技術交流の絶好の機会として捉え、開催市として論文発表やブース出展など積極的に参画するとともに、多くの市民が、直接世界の技術に触れることができるよう展示会への参加を促しております。

PIARC国際冬季道路会議ルレオ大会(1998年)

ゆたかな冬の暮らしを実現するためには、行政サービスのみでは限界があり、市民一人ひとりが自らの問題として雪対策に参画することが重要だと考えております。
このため計画の愛称を、『さっぽろSCOP(さっぽろ・スノー・コミュニティ・プラン)』と名づけました。これは雪対策における市民・企業・行政のパートナーシップを重視し、「市民一人ひとりがスコップを手に」、「地域のコミュニティによって取り組んでいきたい」という気持ちを込めたものです。
雪対策が自然を相手にしている以上、そこには自ずと限界があります。これからも、私たち札幌市民は雪と上手に付き合っていくことを考えながら生活していかなければならないと考えています。

違法駐車をなくし、除雪作業をスムーズに
除雪に際し、最も注意しなければならないことは事故の防止です。協会では、市民総ぐるみ除雪安全推進大会を開いたり、除雪の第一線で活躍する方々に対する安全講習を行うなど、安全に対する注意を呼びかけています。
市民の皆さんの除雪に対する要求は年々多様化してきておりますが、我々だけではとても対応しきれない状況です。除雪を妨げる一番の問題は違法駐車ですが、これがなくなるだけで除雪時間を大幅に短縮でき、除雪範囲も広げることができるのです。市民の皆さんには、我々も非常に厳しい状況の中で除雪事業に取り組んでいるということをご理解いただき、ご協力をお願い致したいと思います。
札幌市除雪事業協会 会長 中村 哲夫

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