建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2002年1月号〉

寄稿

黒部の自然とともに。新世紀も4本の柱で支えます。

河川、砂防、海岸、ダム事業

国土交通省 北陸地方整備局 黒部工事事務所長 進藤 裕之

進藤 裕之 しんどう・ひろゆき
北海道札幌市、昭和31年生
北海道大学
昭和55年5月水資源開発公団入社
平成 6年4月水資源開発公団丹生ダム建設所調査設計課長
平成 7年6月国際協力事業団長期派遣専門家(マレイシア)
平成10年4月水資源開発公団企画部計画課課長補佐
平成13年7月国土交通省黒部工事事務所長
はじめに
黒部川は、流域面積682km2、流路延長85kmの世界でも有数の急流河川です。鷲羽岳に源を発した黒部川は、v字渓谷をぬって日本海に向かって流れ下り、愛本地先より下流域に扇状地を形成してきました。
この扇状地では、黒部川の伏流水がもたらす湧水群が点在し、上流の電源開発とともに、古くから流域の人々に恵みをもたらし、風土・文化にも大きな影響を与えてきました。
しかし、扇状地を流れ下る黒部川は、かつて『黒部四十八瀬』『いろは川』と呼ばれる程の暴れ川で、流域に多くの被害をもたらしてきました。その痕跡は、今も至る所に残されています。
それゆえ、多くの人々の手によって、黒部川を治めるための治水事業が進められてきました。
黒部工事事務所では、河川、砂防、海岸、ダムの4事業を実施しています。

▲入善町浦山新地先(平成12年度施工の水制補強) ▲墓の木自然公園(完成予想パース)
1.黒部川河川事業の概要
−暴れ川に立ち向い 安らぎと憩いの場を−

黒部川は、昭和12年直轄事業に指定され、以降60年余にわたり、河川の整備が行われてきました。
黒部川は全国屈指の急流河川である為、河道内の乱流偏流が著しく、河岸の侵食や局所的な洗掘等が問題となっており、その対策が必要です。
このため、平成2年より水衝部において、堤脚保護を目的に高水敷保護工(縦工及び水制補強)を実施しています。
平成13年度は、入善町浦山新地区において水制補強工事を行い、洗掘による堤防決壊の防止を図っています。
また、平成11年度より実施している生態系保全等水環境改善対策事業として、黒部市若栗地先及び宇奈月町浦山地先において堤外水路の整備を行っています。
さらには、情報基盤整備として、河川情報等配信のための整備も行っています。
河川環境整備事業は、入善町墓ノ木地区において、低水護岸及び階段工を施工し『墓ノ木自然公園』の利用促進を図っています。
▲黒薙川第4号砂防ダム ▲生地鼻透過型有脚式突堤(vhs工法)
2.黒部川水系砂防の概要
−自然に配慮し 世界に誇る渓谷美を残す−
黒部川の砂防は、昭和36年に直轄砂防事業として以来、現在までに祖母谷9基、黒薙川4基、小黒部谷1基、野坊瀬谷2基の計16基の砂防ダムを完成させています。
黒部川は、山地部の平均河床勾配が1/5〜1/80という日本有数の急流河川に加え、流域内には約7000ヶ所もの崩壊地が存在し、日本で有数の崩壊面積比率を有する荒廃河川です。
一方、総延長の80%あまりを占める深いv字谷は、中部山岳国立公園の『黒部峡谷』として全国に知られています。
平成13年度は、土砂災害の防止と自然環境の調和、コスト縮減に考慮した砂防事業を推進しています。
祖母谷下流第2号砂防堰堤(11年度着工、14年度完成予定)、黒薙川第4号砂防堰堤の平成15年度完成を目指すとともに、情報基盤整備としての土石流監視カメラや光ファイバーケーブルの整備を祖母谷、小黒部谷、不帰谷、黒薙川において行い、平成13年度完成を図ることとしています。
▲祖母谷下流第2号砂防ダム(完成予想パース)
3.下新川海岸事業の概要
−豊かな自然とふれあえる 魅力ある渚へ−
下新川海岸は、昭和35年に直轄海岸事業に指定され、以降約40年にわたって海岸保全施設の整備を図ってきました。
これまで、堤防の新設・補強、消波工、緩傾斜堤、人工リーフ、新型離岸堤等により、海岸域の越波対策及び侵食対策を行ってきました。
平成13年度は、朝日町東草野地区において、『海と緑の健康海岸事業』として副離岸堤及び緩傾斜堤の整備を進める他、越波及び侵食が激しい入善町目川地区に離岸堤を施工しています。
また、平成12年度から14年度にかけて、黒部川扇状地の要である黒部市生地地区に、透過型有脚式突堤(vhs工法)の施工を進めています。

▲最高水位の宇奈月ダム
4.宇奈月ダムの概要
−水辺のふれあいと賑わい 宇奈月の新名所−
宇奈月ダムは、洪水調節、発電、水道用水の供給に効用を発揮するため、平成13年4月よりダム管理を行っています。
宇奈月ダムでは、上流からの土砂をより自然に近いかたちで下流に流すこととして、全国の直轄ダムで初めて排砂設備を設けており、本年6月に第一回の排砂を行っています。

HOME