建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2002年1月号〉

寄稿

県民一人ひとりが「ものの豊かさ」と「心の豊かさ」をともに享受できる21世紀型の県づくりを

新潟県土木部 都市局長 島原 利昭

島原 利昭 しまばら・としあき
1968年3月新潟大学卒業
1968年4月新潟県人庁
1998年4月土木部道路建設課長
2000年4月上越土木事務所長
2001年4月より現職
▲ワールドカップ開催が待たれる新潟スタジアム(ビッグスワン)
我が国は、国際化の進展、情報技術の飛躍的な発展、少子・高齢社会の到来、地方分権の本格化などにより経済・社会情勢が変化し、かつてない大きな転換期を迎えております。
さらに、世界的に環境との共存意識が高まる中、地球温暖化防止等の地球環境の保全が重要な政策課題となっています。
このような中、新潟県においては、今年度を初年度とした21世紀最初の10年計画『新潟・新しい波』を策定し、スタートしたところです。
この新しい長期総合計画は、県政の最上位計画として、「大転換の時代」、「自立と参画の時代」に本県が進むべき方向と、それに向けた施策の展開を明らかにし、本県の飛躍的な発展を図るとともに、県民一人ひとりが「ものの豊かさ」と「心の豊かさ」をともに享受できる21世紀型の県づくりを県民、市町村、npo等とのパートナーシップのもとで、進めていくものです。
さらに地球環境を守るため、<にいがた>を世界に誇れる緑のふるさととし、未来に引継ぐ「緑の遺産づくり−22世紀への贈り物」をテーマとする「にいがた『緑』の百年物語―木を植える県民運動」が今年度よりスタートしました。県では、今後とも都市緑化フェアの開催や記念植樹等を行うなど様々な取組みによりこの運動を支援していく考えです。
このような社会情勢の変化に伴い、都市のあり方についても転換期を迎えています。県では、平成12年度より庁内に新潟県都市政策会議(議長・都市局長)を設置し、新潟県独自の都市づくり戦略やこれを展開するための仕組みについて体系的に定め、都市政策・都市づくりの考え方を明確に示す「新潟県都市政策ビジョン」の策定をはじめました。以下、この「新潟県都市政策ビジョン」策定の取組み及び内容についてご紹介します。
1.新潟県都市政策ビジョン策定の背景と主旨
新潟県では平成4年に、環日本海交流圏の拠点として新潟県が発展するための県土計画として、都市の魅力の強化による若年層の流出抑止、そのための都市開発プロジェクトの推進などをめざし、「新潟県都市マスタープラン」を策定した。
その後、厳しい経済情勢が続き低成長の時代が続く中で、世界的情報化の急激な発展、グローバル・キャピタリズムの進展により、国境のない大競争社会が始まりつつある。また、環境に対する意識・行動の高まりも、国境を越え地球規模の大きな流れとなっており、地球・世界が一体化する動きとして注目されている。
一方、身近に目を向けると、少子・高齢化と進展により、本県人口は減少傾向に転じつつあるとともに、「ものの豊かさ」よりも「心の豊かさ」の追求や、個性を尊重する自由な選択社会への要求など、県民意識も大きく変化してきている。 NPOをはじめ、住民の行政参加など、男女共同・世代を超えた共同参画社会の形成が求められている。
このような、大転換とも言える社会の動きの中で、都市活動においては、都市の拡大速度の鈍化、地域間人口移動の減少、都市間の成長格差の拡大、中心市街地の空洞化等がみられる一方で、生活面においては、都市生活の広域化、環境問題への関心の高まり、住民の社会参加への意識の高まり等、変化が確実に進んでいる。
人口、産業が都市へ集中し、都市が拡大する「都市化社会」から、産業構造の変化や文化等の都市活動が豊かに展開する成熟した「都市型社会」へ移行しつつある中で、これらの課題にも対処しながら、質の高い街づくりのための「都市の再構築」を推進すべき時期にきている。
また、固有の歴史・文化等を持った、各都市の個性を尊重し、その風格と魅力を増していくよう、長期的な視点に立った都市づくりを始めることも必要となっている。

2.新潟県都市政策ビジョン策定の方向性
(1)都市には生産活動、消費活動等のための様々な施設が集積し、相互に影響を及ぼし密接に関連していることから、都市づくりに当たっては、従来の都市行政の枠内に止まらず、教育・文化、福祉、産業等の分野についても個々の施設ごとに考えるのではなく、都市経営の視点から総合的な都市整備が可能となるよう、広範な分野を包含した指針としての都市政策ビジョンを策定する。
(2)都市周辺の自然の保全や、環境負荷の小さい都市づくりへの対応、および都市のちからを効果的に維持・向上させる観点から、既存のインフラが活用できる既成市街地の再構築を推進する。
(3)都市を形成する基盤施設は、短期的な必要性のみにとらわれることなく、長期的視点に立って、その配置やグレードを考慮した整備を行い、21世紀の歴史に刻まれる質の良い都市づくりを目指す。
(4)これまでの画一的な行政ではなく、それぞれの地域の特性と住民の意向を活かした個性的な地域経営を行っていこうとする大きな流れの中で、都市づくりにあたっても、地方分権の動きを踏まえた都市行政の仕組みを考える。

3.新潟県都市政策ビジョンの内容
(1)新潟県全域の都市政策の基本的方針
現状における都市の問題点の把握と解決策の検討を行うとともに、将来あるべき都市構造を予測し、全県レベルで必要な総合的な施策を提言し、基本方針とする。

1.広域連携圏別の基本方針
国土の均衡ある発展のために県が果たす役割を踏まえ、県土全域を視野に入れたうえで、県の長期計画で示された広域連携圏(6圏域)別に捉えた地域振興方針と、それを実現するために必要な都市政策のあり方を下記の視点から検討する。
a 都市政策からみて必要な総合的・具体的な施策の方向性。
b 圏域内における各都市、都市圏の果たすべき役割と整備方針。
c 上記から必要と判断される全県的な都市施設。
d 都市、都市圏別の土地利用の方向性。

2.分野別の基本方針
都市政策・都市計画の各分野における具体的な考え方、必要な施策を検討し、以下を基本とする分野別方針を策定する。
a 土地利用に関する基本方針
b 都市施設の配置に関する基本方針と県内での基幹的な施設配置。
c 公益施設(都市計画決定を行わない施設)の配置に関する基本方針
d 都市に関する重要プロジェクトの位置づけ
e 大規模開発、民間の大規模施設立地に関する誘導・規制の方針
f 都市計画以外の都市に関する課題に対する都市計画の視点から見た対応方針

(2)圏域別の都市政策ビジョン
一市町村を越えた広域的土地利用や都市施設整備に対応するため、上記「(1)」に基づき、圏域(14広域市町村圏域)別の広域的・具体的な都市政策ビジョンを策定する。
1.圏域内の重要プロジェクト
2.圏域内の土地利用に関する方針
3.圏域内の主要な都市施設の配置計画

(3)実現のための方策・都市計画法運用のあり方
以上により定めた方針、圏域別ビジョン等を実効性のあるものとし、実際の都市計画に反映させるための方策を検討する。
1.新潟県の特色を生かした都市計画法運用の具体的なあり方(土地利用、都市施設配置に関するルールの策定)
2.ビジョンを実現するための県の責務、国、県、市町村、住民、事業者の役割についての明確化及び住民参加の方法の明確化についての検討を行う。
このビジョンは、学識経験者等諸先生からのご指導ご支援、まちづくりNPOの皆さんのご意見を頂きながら市町村との連携により策定しているところであります。
今後とも個性的で魅力ある都市づくりに貢献できるよう努力して参りたいと考えております。

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