建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2002年1月号〉

寄稿

大阪府は全国に先駆け昭和40年寝屋川流域下水道に着手、
和歌山県は初の流域下水道「伊都浄化センター」が平成13年4月供用開始

日本下水道事業団 大阪支社 大阪湾工事事務所長 大石 寛道

大石 寛道 おおいし・ひろみち
昭和23年10月生まれ、大阪府出身
昭和44年大阪府立工業高等専門学校土木工学科卒、大阪府入庁、広域下水道建設事務所、下水道課、昭和60年日本下水道事業団大阪支社設計第一課副参事、昭和63年東部流域下水道事務所設計係長、下水道課指導調整係長、財団法人大阪府下水道技術センター調査研究課長、下水道課主幹、東部流域下水道事務所建設課長を経て、平成13年下水道課参事、下水道事業団出向現職。


▲泉佐野市北ポンプ場建設
管内の状況
当事務所は、大阪府域及び和歌山県域の2府県の受託事業を所管している。
大阪府域は、大阪市を中心に府域1890平方キロ(これは全国土の0.5%、都道府県では2番目に小さい)、人口約880万人(全国の7%を占める)、33市10町1村により構成されている。和歌山県は、大阪・奈良に隣接して紀伊半島の西部、県域4724平方キロ、人口約108万人、7市36町7村で構成されている。いずれも南北に長く、大阪府は河内平野を中心に近畿の平地部を構成し、和歌山県の方は太平洋に面する海岸線が長く且つ県域のほとんどが紀伊山地により構成される。大阪府においては、行政人口の約99%、和歌山県においては行政人口の約52%が下水道法による公共下水道の計画区域となっている。
大阪府の下水道整備
大阪府は、昭和40年全国に先駆け寝屋川流域下水道に着手以来、その後順次新たな流域下水道に着手、平成5年度までに7流域12処理区全てで供用している。府内44市町村のうち43市町村が流域関連公共下水道を実施し、その全てが供用済みとなっている。府下の単独公共下水道は、この流域下水道に先立って建設供用開始されているものがほとんどである。大阪市を除く府下人口の80%は、流域下水道の区域内という状況にあった。
当事務所は、昭和51年に開設されたもので、忠岡町、岸和田市の先の大阪湾海上での浚渫、埋め立て工事から業務を開始した。これが大阪府の実施する南大阪湾岸流域下水道の北部処理場第一期工事の建設のスタートであった。
引き続き同じく大阪府の淀川左岸流域下水道渚処理場の第一期工事の建設を受託、公共下水道では岸和田市、堺市、また関西国際空港の関連事業として泉佐野田尻沿岸都市下水路事業などを受託、その他多くの市町の事業に関わってきた。
また、堺市泉北処理場、浜寺雨水ポンプ場、泉佐野市の北雨水ポンプ場、河内長野市の特定環境保全公共下水道滝畑浄化センター等々の建設工事、他に岸和田市の天の川下水ポンプ場、泉大津市の汐見処理場の更新・改築工事を現在実施しているところである。なお、南大阪湾岸北部処理場及び淀川左岸渚処理場の汚泥処理施設は、その後当事業団のエースプランの処理場として拡大整備され、現在に至っているものである。

和歌山県の下水道整備
和歌山県内の下水道の歴史は古く、平安時代には既に高野山で野玄式便所が存在していたと言われいる。また、近代下水道もこの高野山から始まり、高野町の下水処理場、引き続き和歌山市においても下水道整備が進められてきた。昭和44年以降現在まで、太地町、貴志川町、広川町、白浜町、串本町、本宮町、那智勝浦町などで公共下水道の処理場が稼動している状況にある。
当事業団としてもこのうち昭和52年から高野町の建設工事を皮きりに、白浜町、串本町の各浄化センターの事業をお手伝いしてきたところであり、現在南部町浄化センター及び龍神村龍神温泉浄化センターの整備を行っているところである。
一方、平成9年から和歌山県が初めて実施する紀の川流域下水道伊都浄化センターの第一期事業の建設を受託、4ヵ年を経て、平成12年度末第一期の建設工事が完了、和歌山県はじめての流域下水道として平成13年4月に供用を開始したところである。
これからの受託事業
大阪府下及び和歌山県下での下水道整備と当事業団の関わりについて述べてきたところであるが、数次にわたる五ヵ年計画を経てきた現在、受託事業の中身も変化していくことは否めない。流域下水道は、多くの関係市町の都市計画としての下水道整備のきっかけであり、処理場の供用開始は関係市の下水道供用告示を始めて行うときでもある。流域下水道システムは、府県と関連市町村が共同して実施していかなければならない事業であることは自ずと理解されるところである。公共下水道整備の受け皿としての流域下水道は、遺憾なくその役目を果たしてきた。その結果として、普及率を最大の目標として進めてきた下水道整備は全国的には、もしくは大阪府下においては一応(?)転換期を迎えていると感じさせられる。今後の課題は、都市部における雨水対策がひとつの柱になっている。一方、現況の自然または生活圏の環境を保全するための下水道整備が急がれる状況にある。
雨水対策事業は、行政の責任分野が大きく、その計画、管理に瑕疵があっては成らないものだし、集落的な小規模な下水処理システムは簡潔に確実に且つ低コストで動くものでなくてはならない。そして、いずれも維持管理という責任は行政が負っていかなければならないものである。維持管理、補修・改築・更新、そして普及・経営というふうに考えていけば、下水道技術は極めて幅広いものである。委託団体の下水道担当者は、何よりも信頼性の高い施設を求めていることを感じる。スムーズに維持管理に移行できる施設の計画、設計、建設の技術的な担保が改めて事業団に求められていることを感じている。
最後に、大阪府内の下水道普及率は83%、和歌山県については10%というような状況でもある。初めての流域下水道、紀の川流域下水道の伊都浄化センターが供用したことは、和歌山県域の下水道整備の大きなステップになることは間違いない。今後も受託工事を執行する事業団、当事務所としては、効率的な支援体制が求められていると感じている次第である。

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