建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2002年1月号〉

寄稿

池田市における下水道整備の現状と課題

(社)日本下水道協会副会長・大阪府池田市長 倉田 薫

倉田 薫 くらた・かおる
昭和23年生まれ
池田市財務課勤務を経て、昭和50年4月より池田市議会議員(5期連続当選)
平成7年5月 池田市長初当選(現在2期目)
大阪府市長会環境保全部会長、などを兼務
平成10年7月 日本下水道協会副会長
▲池田市下水処理場
(1)下水道事業の沿革
本市の下水道事業は、昭和28年に厚生省の築造認可を得、市内浸水対策の一環として旧市街地を対象に発足したのが始まりであります。
10年を経た昭和38年に都市環境の整備改善を目的として、計画区域面積371.2ha、処理能力40,000人(14,000立方メートル/日)の下水道計画を樹立し、本格的に市街地の管渠布設及び終末処理場の建設に着手しました。
その後、本市の箕面川以南地区について、昭和40年に豊中市、池田市、箕面市等が集い、現在の流域下水道の前身である広域下水道をスタートし、昭和43年に事業主体が大阪府、兵庫県となり猪名川流域下水道事業として計画されたのであります。この様に、本市の下水処理は細河地区等を除く箕面川以北779haの区域は、池田市下水処理場で処理を行い、箕面川以南、細河地区等337haの区域については6市2町で構成する猪名川流域下水道原田処理場において共同処理を行っています。この様に単独公共下水道事業と猪名川流域下水道事業の2本だてで整備の推進を図っているところであります。現在の整備区域と致しましては、順次認可変更等を行い区域拡大を図り、行政区域2,211haのうち、汚水発生源の有ります約半分に相当する約1,116haが事業認可区域面積であります。 
(2)汚水整備事業
汚水整備状況については、事業認可区域面積約1,116haに対して平成12年度末で整備率92.7%に相当する1,035haが完了しています。また人口普及率も平成12年度末行政人口101,205人に対して99.8%に相当する101,042人となり府下でも大変高い普及率となっています。
本市の汚水整備計画の沿革と致しましては、単独公共下水道区域と致しまして779ha、流域関連公共下水道区域と致しまして157haであります。また昭和51年には猪名川流域下水道余野川幹線の整備と合せまして、公共用水域の水質汚濁防止を図るため市街化調整区域であります細河地区を府下初の特定環境保全公共下水道として104haの事業認可を得て当地区の環境整備はもとより、本市の上水道源である猪名川、余野川の水質保全を図るため事業を実施しています。その後昭和59年度に伏尾台地区53haの区域拡大、平成8年度に点在箇所23haの区域拡大を図り計画面積180haとなっています。今後未整備地域の整備促進に取り組んでいく計画であります。
下水処理場につきましては、第1期事業として昭和38年度より事業着手し昭和41年度末に処理能力14,000立方メートル/日が完成、つづいて第2期事業として昭和47年度末には、処理能力35,000立方メートル/日が完成しています。その後市民生活における排水量の増大による原単位水量の上昇に伴い昭和51年度に処理能力78,000立方メートル/日の認可変更を行い昭和60年度末には処理能力56,000立方メートル/日が完成、平成8年度より流入水量の増加に伴い一系列分の施設の増強を行い平成9年度末で63,600立方メートル/日の処理能力施設が完成し現在に至っています。今後老朽化する施設の機能更新と併せ、処理水の有効利用、高度処理、処理施設の高度化を図って行きます。
一方、水資源の有効利用を図るため、“水の流れる潤いのある街づくり”を目指し、都市空間に高度処理した下水処理水を流して市民に澗いと憩いの場(ビオトープ)を提供する「池田せせらぎモール」事業を昭和58年度よりスタートし、送水管布設工事に着手、昭和61年度末には阪急池田駅前に一部が完成したのであります。今後なお一層の水質改善を図るべく、平成9年4月23日水循環・再生下水道モデル事業の採択を受け処理水質の改善に取り組んでいく計画であります。
(3)雨水整備事業
雨水整備については、昭和28年に浸水対策事業としてスタートし、逐次計画を拡大してきました。昭和38年に都市環境の整備改善を目的とした下水道計画を樹立し、本格的な市街地の合流管渠の布設による5年確率降雨の施設整備に着手したのであります。
現在、本市の雨水整備率は5年確率降雨(44mm/hr)以上に対して、約85%と高い整備率であります。しかし平成6年9月6日の時間最大降雨130mm、総雨量は、21時から翌日の2時までの4時間で293mmという猛烈な集中豪雨を契機に雨水計画の抜本的な見直しの必要性が生じ、浸水区域調査、雨水排水整備計画調査、雨水計画の立案を行い平成10年度に事業化に向けての法手続きを完了し、事業に着手しているところであります。
雨水整備計画は、単独公共下水道区域の全域の分流化を図り新たに雨水排水施設の整備を進め、また、雨水計画のレベルアップとして、5年確率降雨から10年確率降雨へ、土地利用状況の変化を考慮して雨水流出率を0.5、0.6から0.7に引き上げる計画です。その結果雨水の流出量といたしましては、現計画より約2割から4割程度増量となり現有施設に流下能力不足が生じるため増補施設として増補管、貯留管施設等の計画をしています。
平成10年度より新雨水計画に基づき、建石神田雨水幹線、また平成11年度には絵羽満寿美雨水幹線の事業に着手し、城南、満寿美町地区の浸水解消を図っているところであります。また本市の雨水計画の基幹的施設であります八王寺川雨水増補幹線の築造工事に平成12年度よりスタートしたところであります。現在10年確率降雨(約50mm/hr相当)に対する施設の整備状況を見てみますと、平成12年度末で主要な幹線約17.3kmのうち約14.1kmの整備が完了し、整備率約81.5%であります。また面積整備状況を見てみますと計画面積862.71haで整備済面積が約273.98ha、整備率約31.8%であります。今後、雨水整備として取り組むべき課題といたしましては、雨水排水路の整備を図り流下能力確保に努めると共に、降った雨全てを下流側に流さないで現地で如何に流出抑制を図るかが重要であり治水施設の整備促進と共に、流出抑制を図り保水、遊水機能を確保し、河川への洪水負担の軽減を図るなど多様な施策を展開する総合的な治水対策を推進して行く方針であります。

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