<建設グラフ1997年4月号>

interview

下水道普及率の向上に全力投球

12年度までの5か年計画で86%を目指す

千葉市下水道局 冨澤健二 氏

冨澤 健二 とみさわ・けんじ
昭和22年4月23日生まれ、群馬県出身、45年東北大学工学部土木工学科卒
昭和46年 4月建設省都市局下水道課
昭和51年 4月日本下水道事業団沖縄工事事務所係長
昭和54年 4月日本住宅公団本社土木施設課
昭和56年 1月群馬県土木部下水道課参事
昭和58年 4月環境庁水質保全局企画課補佐
昭和60年 4年日本下水道事業団技術開発部総括主任研究員心得
昭和62年 4月日本下水道事業団技術開発部技術開発課長
平成 2年 1月滋賀県土木部下水道計画課長
平成 5年 4月日本下水道事業団東京支社次長
平成 6年11月千葉市下水道局長
首都圏の一翼を担う千葉市は近年、目覚ましい発展を遂げている。平成4年4月には待望の政令都市の仲間入りを果たし、現在の人口は86万人。多極分散型国土形成促進法の業務核都市に国内第1号の指定を受け、100万都市の実現に向かって都市基盤の整備に力を入れている。都市基盤の要である下水道整備事業に千葉市が着手したのは昭和11年のこと。すでに60年の歴史を刻んでいるが、わが国の高度成長期とともに始まった急速な人口増加に伴って下水道整備が宅地開発などに追い付かず、普及率は全国の政令都市のなかで最下位に甘んじている。このため市は8年度からスタートした5か年計画で下水道整備を最重点として取り組んでいる。そこで建設省出身の冨澤健二・下水道局長に現状と課題を伺った。
――千葉市の下水道の普及状況はいかがですか
冨澤
千葉市の下水道整備はかなり遅れており、7年度末で73.2%です。つかず離れずだった広島市(75%)にも水を開けられ、残念ながら政令都市では最下位の普及率です。
――財政状況が影響しているのですか
冨澤
それもありますが、最大の要因は人口急増に追いつけなかったということです。千葉市は東京に近く、地形的に平地が多いため宅地開発が進み、地価も比較的安かったこともあって人口が急増しました。昭和40年から10年間に34万人から66万人と、約2倍の勢いで人口が伸びました。45年から55年まででも48万人から75万人と、1.6倍です。戦前と比較すると実に6.2倍にもなるのです。
こうした人口急増に対応するため学校建設などに追われてしまい、この間、下水道整備が中だるみした時期が続いたわけです。
昭和46年の下水道整備の投資額を100として全国平均と比較すると、昭和50年代後半は50億円前後で、指数の伸びは全国平均の半分程度です。財政的にも苦しかったということでしょう。62、3年頃からようやく投資額を全国平均の指数並に確保できるようになりました。ちなみに平成元年は140億円、5年度は225億円の規模となっています。
千葉市は昭和45年に都市計画の線引きを行いましたが、市街化調整区域内の人口割合が政令都市では最も大きいのです。下水道はどうしても市街化区域を中心に整備していきますので、市街化調整区域内の人口をカウントすると、それだけで普及率は10ポイントほど下がるわけです。
――将来的には普及率100%を目標に整備していくわけですね
冨澤
そうです。ただし、下水道だけで100%というわけではありません。市街化調整区域には農村部が多く、そこは農村集落排水事業、それから点在している地域には個別の合併浄化糟、これらの三つで100%をめざしているのです。
これまで下水道は行政区域の60%を受け持ち、それ以外は対象外でしたが、下水道の整備区域をもっと拡大しようと見直し作業を進めているところです。
また、本年度からの第6次5か年計画では、12年度までに普及率を13%伸ばし86%に拡充する目標を設定しています。市街化区域の人口比が約90%ですから、平成14年頃には市街化区域をカバーできるものと思っています。それでもなお他都市よりは7、8年分、遅れていますが…。
――下水処理施設の整備についてはどう取り組んでいますか
冨澤
最終処理としては2次処理を行っています。東京湾周辺の7都県市で窒素、リンを除去する高度処理を申し合わせており、千葉市も9年度に着手する南部浄化センターの増設に合わせて高度処理を始める予定です。
最も古い中央浄化センターは、半分が合流式で下水道管の容量も小さく、少しの雨水でもあふれる心配があります。政令市の中でも整備が遅れているとはいえ、やはり、他の政令市並みにいろいろな課題を抱えているのです。普及の促進も大きな課題の一つです。
――あらゆる課題に同時進行で取り組まなければなりませんが、局内の組織機構も拡充しなければ消化できないのでは
冨澤
職員の配置も幾分は傾斜配分してもらっています。とはいっても、他のセクションも苦しいのは同じ状況ですから、わずかづつですが、維持管理も直営だったものを4年度から民間委託に代えるなど変えてきています。
――他都市の取り組みで参考になるものは
冨澤
計画を作ったり事業に着手してから年数が経っていますから、途中から全く新しい方式で実施するのは難しい面がありますが、良いものは取り入れてきていて雨水浸透式の採用などは、その一例といえます。
――最近は汚泥の再生や下水道管を光ファイバー網として利用するなど多目的な活用が注目されていますが、千葉市では
冨澤
政令都市で光ファイバーが入っていないのは本市を含め4市ぐらいです。千葉市では処理場で一部取り入れている段階です。
処理水は一部で地域冷暖房や日本庭園などに利用しています。汚泥のリサイクルも課題の一つです。
また、千葉は小河川しかないので、都市化に伴って河川の水量が少なくなっています。そこで、“せせらぎ”に利用できないかとも思っています。

――今後のまちづくりで下水道整備はどう位置づけられますか
冨澤
第6次5か年計画では『市民生活の質的な向上』と『大都市にふさわしいまちづくり』を目標にしています。それを推進するうえで『大都市としての都市水準の向上』、『安全で災害に強い都市づくり』など8項目に沿って計画を策定しました。
下水道はまちづくりの基盤ですし、下水道事業費は全体の事業費の約3割の約2,000億円を占めていますから、当面は最重点事業として取り組んでいくことになります。

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