<建設グラフ1997年1月号>

interview

東京港のイメージアップ戦略で知名度がアップ

効率的な港湾管理を推進

財団法人東京港埠頭公社理事長 高橋俊龍 氏

高橋 俊龍 たかはし・しゅんりゅう
昭和 7年3月9日生まれ、山形県出身、東大教育学部卒
昭和29年東京都入庁
昭和41年中央区課長
昭和51年監察員
昭和54年総務局勤労部長
昭和57年総務部長
昭和58年人事委員会事務局長
昭和62年港湾局長
平成 3年東京都副知事
平成 7年現職
東京港は首都・東京の海の玄関口。現在、大井コンテナふ頭、品川コンテナふ頭、青海コンテナふ頭が稼動しており、世界各地と定期航路のネットワークで結ばれ、首都圏の重要な貿易拠点になっている。平成7年における外貿コンテナ貨物取扱量は2,413万トンに達し、その貿易金額は国内のコンテナ貨物の貿易総額の22%を占める7兆3千億円にのぼっている。また、東京港は全国の生産地や消費地とも結ばれ、内航海運の一大拠点になっている。その東京港が大きく変わろうとしている。広大な埋立地には39か所もの海上公園をはじめ、スポーツ・レクリエーション施設が開設され、関東圏の観光スポットとして脚光を浴びている。夢のかけ橋『レインボーブリッジ』、臨海新交通システム『ゆりかもめ』など話題も多い。こうした東京港の施設整備、運営を担っているのが、財団法人・東京港埠頭公社。同公社は、物流の技術革新や取扱貨物の増大などの動向に対応した効率的な港湾として、外貿内貿の専用ふ頭の整備や港の総合的な管理運営を行っており、さしずめ『みなと』のタグボート役を担っている。公社の高橋俊K理事長に東京港の最近の話題を中心にインタビューした。

10年前、都民の知名度は5%
――東京港は日本の港湾の中心として整備が進んでいますが、理事長が都の港湾局長だった頃と比べてもかなり様変わりしているのではないでしょうか
高橋
私が10年前に港湾局長になった当時、東京港は実に知名度が低かったのです。アンケート調査を行ったところ、都民で東京港を知っているのはわずかに5%。それでいて都民の100%は横浜港、神戸港を知っていました。そこで、何とか3割ぐらいまでにアップできないかと考え、横浜、神戸港に肩を並べるまでになろうと、様々な努力をしました。
当時はバブル経済の最盛期で、港湾局の年間予算は8千億円にも達しました。開港50周年の大事業を行ったりもしました。物流関係でも東京港の取扱量は二位でしたが、今ではコンテナ取扱高は日本一です。
大きく変貌した港湾機能
――取引高も8兆円規模になっていますね
高橋
そうです。重さなら千葉が2億トンで、東京港は8千万トン強ですが、客船埠頭の利用は10年前に17隻から一気に94隻に増えました。
次々と大型客船が就航した時期でもありましたが、施設整備には相当の資金を投入して、東京港に関心を向かわせてきました。『銀座まで6分』というキャッチフレーズでprをしたこともありました。
その他、海上公園の整備や臨海新交通臨海線『ゆりかもめ』も開通するなど、この10年で大きく様変わりしました。
――東京港埠頭港公社の略歴は
高橋
ルーツは横浜、大阪、神戸とも同じです。前身は国の京浜外貿埠頭公団。関西では阪神外貿埠頭公団という名称でした。埠頭整備が一段落し施設の維持管理の時代に入ると言うことで、われわれは昭和57年に東京と横浜に分かれ、東京は東京港フェリー埠頭公社と合併し東京埠頭公社となりました。
その後、63年に東京港サービス公社と合併し現在に至っております。この結果、横浜と競争関係になってしまいました。
国際競争力に打ち勝つのが課題
――東京港の将来像についてはどんな姿を描いていますか
高橋
理想を言えば、国際関係の中でのコストダウンをいかに図るかです。物流コスト一つを見ても、陸上交通との併用で茨城、群馬、福島までのエリアをカバーするうえで、東京港のほうが立地条件は優位だと思っています。
しかし、施設整備は充実しましたが、国内競争ばかりに目を奪われていてはおのずと限界があります。これからはいかに国際競争に立ち向かうかが課題となるでしょう。
――施設整備を進める上で隘路になっていることはありますか
高橋
第一に土地が狭いですね。せっかく岸壁を整備しても、コンテナを野積みしておくバックヤードを十分確保できないのが悩みです。当分は忍耐するしかないと思っています。
――しかし、荷役作業は以前に比べて格段にスピードアップしていると聞いています
高橋
以前は、2万トン、3万トン級の船に2百数十人の乗組員が乗り、荷物を揚げるのに8日間かかっていました。今では20人以下で、乗組員が海員会館に泊まることはありません。機械化が進み荷役作業が迅速に完了するからです。もっとも、荷物の増えた今日では1週間も岸壁を占領できませんからね。
その意味でもここ20〜30年のタームでみると、海運コストはそれほど上昇してはいないと思います。
海上公園でイメージチェンジ
――最近は単に物流拠点としてだけでなく、いろいろな機能が港には期待されています
高橋
一般的な港湾整備や内貿関係、海上公園などの整備は都港湾局が担当し、私たちはその管理運営を引き受けるという関係になっています。これは他の埠頭公社にはない特徴だと思います。
東京港の海上公園は現在、海浜公園、ふ頭公園、緑道公園の3種類合わせて39か所あります。このおかげで東京港のイメージは一新しました。単なる物流拠点だけの港なら相変わらず、殺ばつとしていたでしょう。
私が港湾局長の頃、この東京港を、アベックも楽しめる港をイメージして、イメージソングなども作ってみたのですが、誰も歌ってくれませんでした(苦笑)。しかし、カラオケの背景には港がよく映し出されます。その場合、東京港が多いですね。
臨海新交通の『ゆりかもめ』も東京港のイメージチェンジに一役買っています。乗客は若い人を中心に関東一円に広がっており、8割はビジネス外の利用客と聞いています。
――フェリーターミナルも新しくなりますね
高橋
私が港湾局長になった頃、フェリーが振るわず1バース閉鎖したのです。以前のフェリーは運転手が車ごと乗ったものですが、最近ではトレーラートラックのヘッドをはずし、シャーシーとコンテナだけを現地へ運ぶ方法が多くなって来ております。それが客船なみになって今では一般乗客も急増しています。
――大井ふ頭の整備も活発ですね
高橋
第2バースと第8バースを整備中です。計画では全8バースを7バースに再編成し、1バースあたりの岸壁延長を長くし、今後の船舶の大型化に対応できるようにします。

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