〈建設グラフ2000年5月号〉

スペシャルと〜く

高速道路整備で観光客は1.5倍、アクセスの良い市町村の製品出荷額は上昇

山陰自動車道整備が今後の課題

建設省河川局長 坂牧勉 氏

坂牧 勉 さかまき・つとむ
昭和24年 1月20日生まれ、48年3月武蔵工業大学土木工学科卒
昭和48年 4月 日本道路公団入社
平成 6年 2月 東京第一建設局水戸工事事務所長
平成 9年 7月 本社企画部技術管理課長
平成11年 7月 現職
日本道路公団が計画している高速道路の総延長は11,120qで、うち6,560qが開通しており、整備率は57%だ。このうち中国地方は計画総延長約1,570qのうち約900qが開通しており、整備率は57%で全国ベースと同じ進捗率で整備が進んでいる。ただ、整備は福岡方面と山陽側に偏重しているため、今後は日本海側の背骨となる日本海沿線の整備が課題だ。同公団中国支社の坂牧勉建設部長に、管内の高速道路整備について伺った。
――高速道路の整備状況から伺いたい
坂牧
中国管内の高速道路の整備率は57%であり、全国平均と同じ進捗状況と言えます。管内の面積は全国比の8.4%で、人口は、6.1%、自動車保有率は6.5%となっています。いわば6%圏といえますね。
高速道路の整備の状況を見ると、中国支社管内では、縦貫道2本(中国道、山陽道)、横断道2本(岡山米子線、広島浜田線)の約900qの高速道路ネットワークが概成しており、山陽側と横断道の整備はある程度進んでいますが、山陰側での高速道路整備が遅れています。特に山陰地方の県庁所在地である松江と鳥取は現在のところ高速道路が開通しておりません。
一方、建設については、山陽道(宇部下関線)、中国横断道(姫路鳥取線、尾道松江線)、山陰自動車道の新設約230qと岡山道、米子道の4車線化事業約53qを中心に事業を展開しております。
平成12年度の開通は高速遠路と一般有料道路合わせて3区間を予定しており、このうち山陽道(宇部下関線)28.1qは、関連する山口宇部有料道路や一般国道2号バイパス小郡道路と連携し山陽道の山口南から下関JCTまで自動車専用道路ネットワークを形成します。また、山陽遠(宇部下関線)は、平成13年度に山口県で開催されるジャパンエキスポ「山口きらら博」への九州・下関方面からのアクセス道路として大いに期待されております。
また、中国横断道尾道松江線の最初の開通区間となる松江から宍道14.1qと建設省との合併施行方式で事業を進めている一般国道9号バイパス安来道路(安来〜東出雲)12.5qが開通しますと関連する一般国道9号バイパス(松江道路、米子道路)と連携して、山陰地方に約56qに及び自動車専用道路ネットワークが誕生することとなります。
今後の中国地方の高速道路ネットワークの整備における課題は、やはり山陰道の整備が第一に挙げられます。いまだに基本計画区間が多く、また島根県から山口県へ抜ける路線は予定路線の段階であります。当面、道路公団としては、施行命令を受けている宍道から出雲の整備を着実に進めてまいりますが、残る区間の整備についても早期に整備の方向性がでることが重要と考えております。
第二には、高速道路アクセスのない県庁所在地への高速道路整備があります。松江については、平成12年度の開通で自動車専用道路ネットワークで高速道路へのアクセスが容易となりますが、広島方面へのアクセスである中国横断道尾道松江線の整備が課題です。また、鳥取については、当面高速道路アクセスがありませんので、中国横断道姫路鳥取線の早期整備が重要になると考えております。
――道路整備はどんな基本方針に基づいて行われていますか
坂牧
基本理念は4つで、広域交流を進めること、暮らしを豊かにすること、力強い都市を支えること、人や自然に優しくあること、時代の流れに対応していることです。
特に地域的な問題として、新しい連携軸の形成による中国・四国地方の連携強化、山陰・山陽地方の一体的な発展、中山間地域と沿岸都市部との連携強化を高速道整備によって促すことが重要です。
そのために、山陰側では日本海国土軸の形成によって、沿線市町村間の交流を促すため、高規格幹線道路と地域高規格道路の整備によるネットワーク形成が重要です。
一方、中国・四国間における新しい瀬戸内交流圏の形成も重要で、本州四国連絡橋に連結する道路の整備を進める必要があります。
また、中山間地域では、過疎化、高齢化が進んでいるので地域間の交流を可能にする道路網の整備を急がなければなりません。
――最近は高機能舗装など、道路構造もレベルアップしてきましたが、そうした新工法の導入は
坂牧
高機能舗装は、雨水の浸透性が高いため、降雨時でも雨水が路面をはねて前方視界を遮ることがなく、安全走行の上で優れた性能を発揮します。しかも騒音の低下にも役立つため、沿線地域への騒音対策としても有効です。
したがって、管内においても新規路線ではこれを導入しており、また、開通済区間でも順次導入してきています。
――高速道路網の整備によって、管内ではどんなメリットが見られますか
坂牧
横断道が整備された鳥取県の浜田市では、開通後に海水浴客を中心として観光客が大幅に伸びました。例えば、県立海浜公園の入場者数を見ると、開通前の1990年は42万7,000人だったのが、開通後の92年に47万4,000人、94年には67万人へと増加しています。
地域交流の状況は、鳥取県境港市で開催された「山陰・夢みなと博覧会」に訪れた車両のナンバープレートを調べたところ、地元だけでなく山陽、近畿、四国からの車両がかなり多く見られ、集計した結果、その比率は地元である鳥取、島根の山陰地方は43.9%で、他は山陽30.9%、近畿16.9%、四国5.5%と地元を上回っていたのです。結局、期間中の来場者数は190万人を越え、県人口の3.1倍に達しました。
産業面で見ると、IC(インターチェンジ)の1時間圏内にある市町村は、産業が非常に活性化していることが分かりました。つまり高速道路へのアクセス時間と出荷額は反比例しており、高速道路アクセス時間が短いほど出荷額は大きくなるという状況です。
このように高速道路がもたらす地域への波及効果は絶大なのです。

HOME