<建設グラフ1997年4月号>

interview

新潟県企画調整部長西藤公司氏環日本海交流圏の中核拠点へ

港湾、空港、高速道路の整備が活性化

新潟県企画調整部長 西藤公司 氏

西藤 公司 にしとう・こうじ
昭和34年 4月24日生まれ、兵庫県出身、57年3月東京大学工学部卒
昭和57年 4月 自治省入省
昭和61年 7月 自治省税務局市町村税課主査
昭和63年 7月 山梨県県民生活局環境保全課長
平成元年 4月 山梨県企画管理局企画課長
平成 3年 4月 山梨県総務部財政課長
平成 5年 4月 自治省税務局固定資産税課長補佐
平成 7年 4月 国土庁大都市圏整備局総務課長補佐
平成 8年 7月 新潟県企画調整部長
経済のグローバル化や世界的な交流が進展するなかで、日本海新時代が到来してきた。多極分散型国土の形成に向けて、新たな国土軸として提唱されている日本海国土軸の中核拠点となるのが新潟県。2002年ワールドカップサッカー開催も決まり、県内は各地で建設のツチ音が響き、活気に満ちている。国際交流拠点づくりを目指す新潟港の万代島再開発事業、着々と整備が進む高速交通体系、年間利用客が100万人を突破した新潟空港など最近の話題を県庁の西藤企画調整部長に聞いた。

地場産業を高度化
――県勢についてお聞きしたい
西藤
県の人口は、直近のデータでは249万人です。ここ2、3年は社会増の傾向を示しています。大学もかなり増えているので、若者の定住化が進んできたものと思います。
インフラ整備も進み、雪国のハンディも解消されつつあることもあり、工業の立地件数も順調です。新潟はもともと地場産業が盛んな土地柄ですが、今後も地場産業の高度化を図るとともに、加工組立型の企業誘致を積極的に推進したいと思います。
工業出荷額もまずまずの伸びです。一人当たりの県民所得は数年前までは100に対して90前後でしたが、6年度の統計では97まで上昇しています。これは産業の高度化が進んでいるということで、特に製造業の中でも電気を中心とした加工組立型の企業立地が進んだことと、米菓、かまぼこなどの食品加工も健闘しているということです。
農業関係では、主力のコメは魚沼産のコシヒカリが全国的に有名で、地酒も評判が良い。兵庫、京都は別格としても、生産量では全国3番目にランクされています。コメにしても清酒にしても、地道な取り組みがここにきて認められてきたものと思っています。
中国・大連に海外事務所を開設
――新潟県として現在、最も力を入れている政策は
西藤
国際交流拠点づくりをめざし、新潟港西港区で万代島再開発事業に取り組んでいます。2000年を目途に国際会議場や見本市展示場をそこに整備する計画です。
今年3月には、ソウルに続き中国・大連に二つ目の海外事務所を設置します。事務所には県と民間企業からの職員が常駐する予定です。
さらに、札幌等とともに2002年ワールドカップサッカーの開催が決まり、総合スタジアムを整備します。また、首都圏における情報拠点として、この6月には、原宿に『表参道・新潟館ネスパス』がオープンします。
――全国の中での新潟県の位置づけをどう考えていますか
西藤
環日本海経済圏・環日本海交流圏と私たちは呼んでいますが、日本海側の中では空港、港湾とも施設機能のレベルは高いと思っています。ロシア、韓国との定期航空路を持っており、今後も環日本海のゲートウェイとしての機能をますます充実させることが必要になります。
また、首都圏とのかかわりでは新幹線、高速道路があるので、首都圏とは非常に太いパイプが出来ています。これだけ太いパイプがあるのは日本海側では新潟県だけです。
――高速道路網も充実しつつありますね
西藤
高速道路は、隣接の富山県、群馬県に続き、福島県とは今年秋に高速道路でつながります。長野県と結ぶ上信越自動車道は、今年、長野県と新潟県中郷村間が開通します。山形県にも基本計画があり、ネットワークとしては新潟県を中心に四方八方に高速交通体系が整備されつつあります。その意味では中核拠点としてのインフラが着実に整備されつつあると思います。
福島県いわき市から郡山・会津若松を経て新潟につながる磐越自動車道は、西会津と津川間22qが今年秋に完成すれば全線開通となります。太平洋側と日本海側が高速道路の大動脈で結ばれますので、われわれとしても大きな期待を持っています。
今は、東北から関西へ行くのに東北自動車道からいったん首都圏に入り、東名か中央自動車道に乗り入れていますが、首都圏の渋滞でかなりの時間的なロスがあります。これからは、日本海側を通る方が距離的にも近くなるわけで、国土のネットワーク上も大きな意味があります。
日本海沿岸東北自動車道は、昨年暮れの国幹審で中条町から村上市までが整備計画区間に決まり、朝日村から山形県温海町間が基本計画区間になりました。
新潟空港の利用客
――空港は昨年3月に滑走路が2,500mに延長されましたね
西藤
新潟空港には国際定期便がロシア極東のイルクーツク、ハバロフスク、ウラジオストクと韓国のソウル間に就航しています。
今後はグアム、ホノルル、香港、中国、台湾などの路線開設に加え、世界の航空貨物を集散する空港を目指していきたい。わざわざ成田まで行かなくても新潟から直接、海外へ行けるように、成田との役割分担ができると考えています。
とにかく、地域拠点空港に位置付けられたので、さらに西ヨーロッパやアメリカ東海岸を視野に入れて、3,000mの滑走路延長を実現したいと考えています。
――乗客数の伸びはいかがですか
西藤
昨年、初めて年間100万人を突破しました。昨年7月に竣工した空港ターミナルビルは、将来の200万人をめざして、それに対応できる施設規模になっています。
21世紀のメインポートへ
――港湾整備の現況は
西藤
新潟港は古くからある西港区と、国際化や船舶の大型化などに対応するため昭和44年に開港した東港区の二港区からなり、日本海側屈指の物流拠点です。
国から国際ハブ港湾に準ずる中核国際港湾として位置付けられ、昨年9月には−14m水深(暫定−12m)の東港国際コンテナ埠頭が完成しました。コンテナ取扱量は前年比30%の伸びを示しています。
――万代島再開発事業の進捗状況は
西藤
新潟港西港区の万代島再開発事業は、環日本海時代における国際交流拠点の形成、国湾業務機能の集積、豊かなウォーターフロントを生かした憩いと賑いの空間形成を基本コンセプトに、平成5年度から既存施設のクリアランスに着手しました。
国際会議場(国際交流センター)と見本市展示場、業務施設、商業施設、ホテルなどの整備を官民一体で取り組もうということで、昨年、マスタープランができたところです。これらの施設は、2000年の開業を目途に整備を進めていく予定です。

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