建設グラフ1995年10月号>

interview

千葉都心、幕張新都心を核に業務核都市を形成

千葉市長 松井 旭 氏

松井 旭 まつい・あさひ
昭和 2年11月24日生、北海道旭川市出身
昭和26年中央大学専門部経済学科卒業
昭和27年自治省選挙部勤務
昭和33年自治省財政局財政課勤務
昭和39年山口県下関市財政部長
昭和42年千葉県衛生部主幹
昭和44年千葉市財務部長
昭和49年千葉市第二助役
昭和52年千葉市長初就任
現在五期目
平成4年に政令指定都市の仲間入りし、区制が布かれるなど著しい発展を見せる千葉市だが、首都圏でありながら地形上、房総半島の袋小路状態にあったことから、流通、交通の上で不利な展開を強いられてきた。だが、平成9年度の東京湾横断道路の完成後には、千葉−神奈川間が直通で結ばれ、東京を経由せずして両地域間を往復できることから、交通混雑の解消、流通のスピードアップなど計り知れない経済効果が期待されている。こうした情勢を背景に、現在5期目を務める松井旭市長は、県都・千葉市を首都圏機能の受け皿として、多核多圏域型地域構造への再編成の一翼を担う業務核都市へと成長させるべく、まちづくりに取り組んでいる。

今年度で第5次5カ年計画が終了
――市長就任当初に目指したまちづくりの理念は
松井
私が千葉市長に就任したのは昭和52年7月ですが、当時の千葉市の人口は70万人で、県都として、また首都圏の中核都市として飛躍的な発展を続けていました。
しかしながら、一方で、社会経済情勢の変化と、それに伴う市民意識の変化などにより、行政も新たな視点に立った都市づくりの発展が求められていました。
このような中で、私は市民と行政とが協力して進める都市づくり、いわゆる「市民参加の都市づくり」をめざして、「市民生活優先」を基本理念とし、「ゆとりある暮らしと心のかよう地域社会の創造」を市政運営の基本方針として掲げ、それを総合的、計画的に推進していくことを目指したのです。
こうした目標に向けて、行政と、市民が手を携えて努力していくこと、そこに都市づくりの価値があると考えたのです。
――政令指定都市移行、区制施行により、まちづくりの方向性はどう変わりましたか
松井
千葉市は、平成4年4月1日、全国12番目の政令指定都市として、大都市の仲間入りを果たしました。同時に、6つの区が誕生し、区行政もスタートいたしました。
私は、政令指定都市への移行は、千葉市のさらなる発展と社会経済基盤の充実につながるだけでなく、市政をより市民に身近なものとし、市民福祉の一層の向上に寄与するものでなければならないと思っています。
そのためにも、区役所を中心としたキメの細かな行政サービスを展開するとともに、区民の声を反映した地域づくりを進めるため、最善を尽くしているところです。
今後も、政令指定都市制度のメリットを最大限に活用しながら、「人間尊重・市民生活優先」を市政運営の基本理念として、85万市民一人ひとりが誇りと愛着の持てる都市づくりをめざし、全力を傾注していきたいと考えています。
――東京臨海副都心開発について、地方では一極集中排除の時流に逆行するのでは、との声があるが市長としてはどう考えますか
松井
本年度春に東京都で開催された七都県市首脳会議において、東京圏に暮らす3,200万人の方々が、豊かな生活を送れる社会を実現するためには、「展都」と「分権」を推進し、東京圏を多核多圏域型の地域構造へ再編し、東京一極集中問題の解決を図ることが有効であると確認しました。
その中で千葉市は、首都機能分散の受け皿としての業務核都市として、東京圏を多核多圏域型の地域構造に再編するために一層の役割が期待されています。
しかし、現在のバブル経済崩壊後の経済状況の中で、東京都心部からの中枢業務機能などの移転が滞り、また千葉市へ移転してきた企業の中には、都心部におけるオフィスビルの需給バランスの逆転による賃貸料の値下げなどにより、Uターンをしてしまう事例が見受けられます。
従って、東京臨海副都心開発については、首都圏や我が国全体のバランスを見ながら進めていただくことが大切だと思っています。
――東京都の世界都市博中止決定はさまざまな波紋をなげかけていますが、その余波は
松井
このたびの世界都市博覧会中止については、大変残念に思っています。
千葉市は、平成4年に政令指定都市に移行し、大都市の仲間入りをし、幕張新都心と千葉都心を核に、業務核都市として成長発展しています。
世界都市博覧会は、千葉市の都市づくりの現状や都市の将来像などを世界へPRする絶好の機会と考えていました。
中止という事になり残念ですが、具体的な事業を実施していませんでしたので損害も無く、また、これに関しては不都合なことなども起きていません。
――全国の中で、今後の千葉市をどう位置づけ、どんな形で発展させようと考えますか
松井
千葉市は、首都東京と成田空港の中間に位置し、我が国有数の国際貿易港である千葉港を擁するなど、恵まれた立地条件にあり、しかも首都圏にありながら比較的豊かな緑に恵まれています。
このため、緑と水辺を活かした首都圏東側の政令指定都市として、また首都機能の一翼を担う業務核都市として、さらには千葉県の県都として着実に発展するよう各種施策の発展を図っているところです。
平成2年に策定した千葉市基本構想では、千葉市が来るべき21世紀に、「世界に誇れる千葉」として開花することをめざし、都市づくりの基本理念を「人間尊重・市民生活優先」とし、基本目標を「自立し創造する都市づくり」として、就業や文化・芸術などの面で東京などの他都市へ大きく依存することなく、都市として自立することを目指しています。
――政府は630兆円の公共投資について、一面では低迷する景気への浮揚策と位置づけているようだが、どう考えますか
松井
平成7年度を初年度とする新しい公共投資基本計画は、21世紀初頭には社会資本が全体として概ね整備されることを目標としており、公的主体と民間主体の双方が適切な役割分担と連携のもとに、整備を行うこととされています。
なかでも、今後重点化を図るべき生活に密接に関連した社会資本の整備にあたっては地方公共団体の果たす役割が大きく、地方単独事業などにより地域の特性に応じた個性豊かな社会資本の整備を実施することが求められています。
千葉市では、政令指定都市として快適な生活環境の整備や魅力ある都市づくりを進めており、平成7年度の当初予算でも公共事業などの事業量の確保に努めたところでして、国と地方公共団体及び民間による基本計画の推進は、日本経済にも好影響を与えるものと考えています。
地方を取りまく財政環境は、景気低迷の影響を受け、税収が伸び悩むなど極めて厳しい状況ですが、適切な財政運営を行っていくためにも、景気が一日も早く回復し、地方税財源の充実確保が望まれるところです。
――本年度の市の主要事業は
松井
今年度は、実施計画である第5次5か年計画の最終年次ですので、目標達成と市民福祉の向上を最優先に予算編成にあたりました。
具体的には、市民の健康面の施策として、在宅福祉サービスの充実、乳幼児医療の無料化の拡大、骨粗しょう症対策としての婦人健康診査などを行い、生活環境の整備として、道路や下排水などの生活関連施設、都市モノレール、市街地再開発などの都市基盤の整備や都市機能の充実に努めています。
また、公共事業などの事業量の確保と中小企業者への資金融資枠の大幅な拡大など、地域経済の活性化と中小企業金融対策の強化を図ったほか、今年1月の阪神・淡路大震災を教訓として、輸送網や避難所の確保のため、落橋防止対策や緊急輸送道路の調査点検、小中学校の耐震診断、さらには、ミニ消防ポンプ自動車の導入など、総合的な防災対策を推進しています。
景気回復の足取りが重く、厳しい財政状況ですが、先ほど申し上げましたように、第5次5か年計画の総仕上げの年度でもありますので、政令市として飛躍・発展を遂げるため、財源確保を図り事業執行に支障をきたさないよう努めていきたいと考えています。

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