interview (1997/1)

JR赤羽駅の立体交差化事業が9年度完成へ

最重点施策に『災害に強いまちづくり』

東京都北区長 北本正雄 氏

北本 正雄 きたもと・まさお
大正9年10月13日生まれ、中央大学法学部卒
昭和40年東京都北区立図書館長
昭和41年東京北区教育委員会社会教育課長
昭和42年東京都北区財政課長
昭和46年東京都北区総務課長
昭和48年東京都北区総務部長
昭和54年東京都北区助役
昭和58年東京都北区長に初当選
平成7年4期目当選
現在に至る
北区はわが国の製紙業発祥の地。荒川と隅田川が流れ水に恵まれた北区は、東京23区で唯一という酒蔵が今も健在だ。近代公園の走りとなった飛鳥山公園は上野公園をしのぐほどの桜の名所として有名。ここに区の博物館ゾーンが平成10年に誕生する。さまざまな文化遺産が生きる北区は来春、新生・北区が誕生してちょうど50周年を迎える。特にこの10年間の北区は都市基盤整備が飛躍的に進み、『まちづくりのルネサンス時代』を刻んだ北本正雄区長に北区の現況と課題を伺った。

来年は区政誕生50周年
――北区の現況をお聞きしたい
北本
昭和42年当時は人口が43万9千人でしたが、次第に減少して現在は33万3千人です。地理的には東京の北の玄関口として23区の最北に位置し、南北に9.3q、東西に2.9qと細長く、JRをはさみ、西側は高台、東側は隅田川が流れている低地で、JRが背骨のように走っています。山の手と川の手地区が同居しており、昭和22年3月、滝野川区と王子区が合併して今日の北区が誕生し来年で50周年を迎えます。
このように北区は鉄道によって東西に分断されていますが、東北新幹線の建設に伴い、明治16年以来の長年の懸案であったJR赤羽―東十条駅間2.7qの連続立体交差化事業が平成9年度末には完成の運びで、まさに100年の大計ともいうべき大きな仕事になっています。
街づくりルネサンス時代
――昭和58年に区長に就任以降、都市づくりが急ピッチで進んだと伺っていますが
北本
そうですね。昭和60年3月、東北新幹線が開通したのを契機に、その年の9月には埼京線、平成3年には地下鉄南北線の開業が続き、公共輸送機能の大動脈が着々と整備されてきました。
また、今年3月には30年余の歳月を要した赤羽駅西口の再開発が完了しました。さらに田端大橋の架替え、都市計画道路85号線南橋の架替え、157号赤羽台トンネルの完成など、都市計画道路の整備がかなり進み7年4月現在の完成率は46.7%となっています。ですから、この10年間は北区のまちづくりのルネサンス時代といっても過言ではありません。
――基本構想によると、北区の将来像は『21世紀に生きる子孫のふるさと・北区』となっていますが、まちづくりの視点についてはどのように考えていますか
北本
基本目標ですが、「人間のぬくもりを感じる区民生活の建設」、「住み良いいきいきとしたまちづくり」、「くらしと産業の調和のとれたまちづくり」、「身近で民主的・効率的な区政の実現を掲げています。具体的な主要施策としては、健康づくりの推進、地域福祉施策の充実、生涯学習の推進、定住化対策の推進、地域産業の振興、個性豊かな地域文化の創造と北区のイメージアップなどに取り組んでいるところです。
防災重点地区に十条地区
――災害対策についてはどのように取り組んでいますか
北本
人口対策にも関連することですが、居住環境の改善、中でも「災害に強いまちづくり」は最重点施策の一つです。
今回、東京都と23区、多摩8市で結成した『防災都市づくり木造住宅密集地域整備協議会』において、幸い北区の十条地区が重点地区に指定されました。このことは区内における卸・小売業、飲食店などのサービス業、製造業、その他の産業の活性化にもつながる重要施策でもあり、十条地区をモデルに『災害に強いまちづくり』に取り組む考えです。
――本年度の防災対策事業はどのような内容になっていますか
北本
本年度は17億7千万円を当初予算に計上しました。情報の収集・伝達体制の整備では地域防災無線・無線ファックスの導入に取り組みます。自主防災組織の育成強化のため、小型消防ポンプを増強配備するほか、5トン貯水槽を5基整備、8地区で防災訓練を実施します。このほか、避難場所などにおける備蓄物資の整備、公共施設の耐震強化、災害用医療資機材の配置、防災ボランティアの養成、防災カルテの作成など多彩なメニューを予定しています。
――北区においても高齢化対策には頭を痛めていると思いますが
北本
そうですね。現在、区立では3番目の特別養護老人ホームを清水坂に建設中でして、区内では最大規模の120床。10年度にオープンの予定です。桐ケ丘にも13年度オープンを目指して基本設計に入ります。
しかし、施設を整備しても待機者が一向に減らないのです。出現率が高くなるからでしょうか。常時、500人近くの待機者がいます。
このため、区としても本年度は高齢者在宅福祉サービスセンターを開設し、24時間型のホームヘルプサービスを導入します。このほか給食サービス、アパート提供、ホームヘルパー派遣事業などに取り組んでいるところです。
高齢化対策は緊急の事業であり、今後も区政の中で大きなウエートを占めていくでしょう。
国内唯一の紙の博物館と郷土博物館が10年にオープン
――飛鳥山公園の博物館ゾーン構想についてお聞きしたい
北本
首都高速道路中央環状線の一つである通称・王子線が飛鳥山の下を通ることになり、敷地の一部が道路にかかる『紙の博物館』の移転問題が持ち上がったのが発端です。北区は西洋紙発祥の地で、折しも区の郷土博物館構想が具体化しつつあったので、飛鳥山にある渋沢栄一資料館(王子製紙の前進である東京抄紙会社の創業者)の一帯を区が取得して、ここを博物館ゾーンとして三者の施設を整備することにしたのです。
平成10年春にはオープンの予定で、共通の入場券なども発行することにしています。付近にはゲーテ記念館、旧古河庭園もあるので、駐車場も整備して回遊してもらおうと思っています。
飛鳥山公園は明治6年、日本の五つの公園の一つに指定された近代公園の走りで、徳川吉宗将軍がここに享保5年に270本、享保6年に1,000本、計1,270本の桜を植栽、その12年後に一般公開するようになり、花見の名所になったものです。
赤羽からエイトライナー発車へ
――ところで北区は23区の中でJRの駅が一番多いそうですね
北本
正確には9駅でしょうが実情としては11駅あります。というのは区境にあるJR埼京線板橋駅の東口が北区、それからJR山手線駒込駅の本郷通寄りは豊島区ですが、東口は北区なのです。東京は交通の便が世界一ですから、北区は文字どおりの世界一ということになりますね。
――注目されるエイトライナーは北区赤羽から羽田までのルートが有力と聞いています。赤羽から江戸川までのメトロセブン構想も持ち上がっているそうですね
北本
メトロセブン構想は、エイトライナーほど具体化していません。
エイトライナーは赤羽が北の結節点です。JR赤羽駅と結ぶように区として要望しています。まだまだ運動の段階ですが、実現すれば羽田空港へも乗り替えなしで、区民が行けるようになります。沿線住民の期待感は高まっています。
――ところで、陸上自衛隊駐屯地跡地を雑木林にする計画があるそうですね
北本
赤羽自然観察公園のことです。そこは5haの広さがあり、都市計画道路が一本走りますから、残りを四つのゾーンに分けてわき水も生かし自然のままの形態にして、野鳥を観察したり、オープンスペースにして、北区に自然の森を残そうと考えています。
議会の意向もあって一部は平和の森にします。50年という長い先を見越した事業ですが、区民にとっても貴重な財産になるものと思っています。

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