interview (96/8)

保健福祉サービス事務所で総合的な地域福祉を推進

22の全住区にセンターを設置

東京都目黒区長  河原 勇 氏

河原  勇 かわはら・いさむ
大正15年3月15日生まれ、早稲田大学政治経済学部卒業
昭和25年東京都財務局中央税務事務所
昭和27年東京都事務吏員
昭和38年東京都出納長室審査課主査
昭和40年目黒区区民部戸籍課長
昭和42年目黒区厚生部国民健康保険課長
昭和44年目黒区区民部区民課長
昭和47年目黒区総務部総務課長
昭和49年目黒区主幹(福祉問題担当)
昭和50年目黒区区民センター管理事務所長
昭和目黒区区民部長
昭和52年目黒区企画部長
昭和58年目黒区助役
平成2年目黒区長に初当選
現在2期目
目黒区の河原勇区長にご登場いただいた。政策は高齢化対策からコミュニティーづくり、再開発事業の取り組み、防災対策など多岐にわたっているが、 目黒区も人口の流出と高齢化が進み、人口減に歯止めをかけるとともに、定住対策の一環としても在宅福祉サービスの推進が大きな課題の一つになっているようだ。今年、目黒区は初めての試みとして保健福祉サービス事務所を開設した。行政サービスの窓口も併設し、在宅福祉の推進とともに区民のコミュニティーづくり推進の拠点としての役割を担う。また、22の住区に設置を進めてきた住区センターの整備が近く完了する。ボランティア、防災意識の高揚にもつながるコミュニティーづくりの推進が河原区政の原点となっているようだ。
――目黒区勢の現況は
河原
女性が子どもを生まなくなったための少子化や東京の一極集中排除の機運もあって、目黒区も人口の減少傾向が続いています。一自治体としては限界のあることですが、せめて東京都内の平均値程度で歯止めをかけたいと思っているところです。
高齢人口の割合を抑制することも課題の一つです。現在、65歳以上の高齢者は全人口の15%を超えており、特別養護老人ホームなど収容型の施設整備と合わせて在宅福祉にも力を入れていかなければと思っています。
高齢化対策はただ単に高齢者のための対策ではなく、中核的な区民層や若い人たちのための対策なのです。家族に囲まれて暮らすのが最も望ましいわけですから、お年寄りを家庭内で介護できる仕組みをつくることが中堅層やこれから年齢を重ねていく若い人たちのためでもあるのです。

――そのためにも在宅介護支援センターの整備、ホームヘルパーの養成が必要ですね
河原
第三番目の特別養護老人ホーム設置の計画がありますが、在宅福祉サービスをより身近なところで展開するため、今年4月、手はじめに目黒区5地区のうち、1地区に保健福祉サービス事務所を開設しました。ホームヘルパー、看護婦、保健婦とさまざまな福祉サービスをコーディネイトする職員を配置して、それぞれのケースごとに最もふさわしい福祉サービスを提供する仕組みにしています。
ただ、行政だけが先行してサービスを手厚くしても完全ではありません。地域の人たちの助け合い、励まし合いがあって初めてお年寄りがいきいきと暮らせるわけですから、保健福祉サービス事務所では、事務所長が地区サービス事務所長を兼任する形で住民登録など各種行政サービスの窓口のほか、そこに地域のコミュニティーづくりを支援する機能を持たせました。町内会、ptaなどの団体や地域で活動している民生委員や保護司などの方々と連携し、福祉にとどまらず、リサイクル、防災活動に取り組もうと考えています。

――ところで5地区とは、どのように線引きされているのですか
河原
区役所のある中央地区のほかに東西南北の地域で分けています。その基本となっているのが小学校の通学区域単位ごとに分けている住区制度で22住区で構成しています。住区を4つないし5つまとめたのが地区です。
公共施設も規模や機能に応じて住区ー地区ー全区の単位で整備しています。老人いこいの家や児童館を併設した地域のコミュニティー施設である住区センターは平成10年早々に最後のセンターが完成し、全住区の整備が終わります。

――目黒区内の再開発事業の現況はどうなっていますか
河原
いくつかのプロジェクトが動きつつあります。中でも東横線中目黒駅前の再開発は既に都市計画決定し、間もなく準備組合から本組合に移行する段階です。
中目黒駅は地下鉄日比谷線との乗り換え駅になっており、一日の乗降客は18万人にもなりますが、実際に改札を出て街を通る人は9万人足らずです。一日の乗降客のうち二分の一がホームからホームを渡り歩いて通過しているのが現状です。駅前広場もありませんし、魅力ある街にして、買い物でもしていこうかという気持ちを持たせることが必要ですね。

――行政としては再開発事業に対してどのような支援策を考えていますか
河原
駅前にある中目黒駅前図書館が手狭になってきたことなどで、再開発ビルの中に図書館機能を持ったフロアを造ろうと思っています。また、交通の利便性を考慮して行政サービスの窓口も開設する予定です。

――駅舎の改築は
河原
駅舎はそのままですが、改札口の位置は再開発ビルに面して移設するように協議しているようです。

――その他の地区の再開発の動きについては
河原
自由が丘の周辺で機運が高まっています。確かに名前は有名なのですが、何しろ道幅が狭く、このままでは将来の発展が制約されかねないので、地元でも危機感があります。
区としてもコンサルタントを派遣して、再開発の機運を促進するお手伝いをしているところです。進取の気性に富んだ人が多いので実現に向けて熱心に取り組んでいます。
自由が丘は東横線と大井町線とが交差しており、目黒区内で屈指の商店街で若い人にも人気があります。大井町線の二子玉川園駅前には有名デパートがあって、かなりの買い物客が流れています。また、近い将来、東横線の多摩川園駅から目蒲線に乗り換えると自由が丘駅を通らずに都心へ直行できるようになるので、魅力ある品揃えをして楽しい買い物が出来る街にしなければ地盤沈下は免れないという危機意識があります。

――目黒区は私鉄が多く走っていますが、立体交差化事業が具体化しているようですね
河原
昨年、目蒲線の立体交差化事業が都市計画決定され、事業認可も下りました。目黒区と品川区との境界付近は線路が地下に潜るので、跡地利用や広場の在り方などについて検討しています。


――防災面の取り組みはいかがですか
河原
防災に強い街づくりが基本です。多少時間はかかりますが、幹線道路を早急に整備することが必要です。また、昔の農道が未整備のままになっている路線が少なくないので、最低4mの幅員を確保しなければならないと思っています。
今年、狭あい道路を整備する条例を制定し、7月から施行になりました。当面は住宅などの建築に合わせて4mの幅員を確保した道路を整備していく方針です。
このほか、小・中学校が第一次避難場所なので備蓄品の格納や井戸を掘るなどの対策を講じています。古い校舎については順次、耐震調査に取り組んでいます。
また、昨年から防災センターの建設を進めています。災害時は対策本部となり、情報収集などの最前線になります。要員が宿泊できる部屋も整備します。平時は防災意識高揚のための啓発施設としての活用を考えています。

――最近は地球環境の保全に対する関心が高まっていますが、リサイクルプラザについて伺いたいのですが
河原
リサイクルプラザについては、二つ目の施設が今年から着工します。区民の委託を受けて、家庭で不要になった家具、電気製品、日用品を展示販売しています。多少傷んでいる家具などはシルバー人材センターにお願いしてリフォームするのです。プラザの運営は区の職員ではなく、リサイクルに関心を持っている民間の方にお願いしています。
都のリサイクルセンターと紛らわしいのですが、回収した粗大ごみの中からリサイクルに回している都のシステムとは全然違います。また、区独自にアルミ缶と瓶の回収を行っており、来年には、区内12万世帯全域の回収を目指しています。

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