〈建設グラフ1997年12月号〉

interview

予算の一括計上は堅持

国道危険箇所の早急再点検

国務大臣 北海道開発庁長官・沖縄開発庁長官 鈴木宗男 氏

鈴木宗男(すずき・むねお)

衆議院議員(自由民主党・比例代表北海道ブロック・当選5回)
昭和23年1月北海道足寄郡足寄町生まれ
昭和 41年 4月 拓殖大学政経学部入学(在学中より衆議院議員・中川一郎秘書)
52年 11月 農林水産大臣秘書官
55年 7月 科学技術庁長官秘書官
58年 12月 衆議院議員初当選
平成 元年 6月 防衛政務次官
8月 防衛政務次官再任
2年 12月 外務政務次官
5年 6月 防衛政務次官(三度目)
6年 9月 衆議院 沖縄及び北方問題に関する特別委員長
8年 10月 自由民主党 副幹事長(三度目)
9年 9月 国務大臣 北海道開発庁長官・沖縄開発庁長官(現在)
第2次橋本改造内閣で北海道開発庁長官・沖縄開発庁長官に北海道選出(比例区)の鈴木宗男衆議院議員が就任した。折しも国の中央省庁再編問題で北海道開発庁の存続が危ぶまれている時期だけに、北海道経済の景気浮揚に欠かせない公共事業費の確保、開発庁(局)機能の維持を求めている経済界にとっても道産子大臣の誕生は極めて心強い。そこで本誌は大臣就任直後の鈴木長官に行政改革の行方、見直しが急浮上している千歳川放水路問題などの緊急課題についてインタビューした。
(インタビューは北海道開発庁長官室)
――今回の第2次橋本改造内閣で、閣僚としては最年少、しかも地盤の北海道釧根地区からは初めての大臣誕生ということで地元の期待も大きいと思います。そこでまず、就任の抱負からお聞かせください
鈴木
そうですね、平時ならこの役職への指名は受けなかったと思います。しかし、北海道開発庁も沖縄開発庁も、今まさに中央省庁再編の渦中にあるし、特に北海道の位置付けについては、政府としても重要な決断を求められている時期でもあるので、長官として与えられた任務を全うしたいと考えて引き受けることにしました。
特に、財政改革に伴って公共事業費が来年度は前年比7%減となることを考えると、予算のより一層の重点配分や効率化を行い、地域の発展を支える道路、港湾などの社会資本整備に全力を尽くしてまいりたいと考えています。
――言及されました中央省庁の再編は、この11月末にも政府・自民党の骨格が固まります。北海道開発庁の存続問題については、大臣ご自身の見解もあるものと思いますが
鈴木
政府としては、行革会議がまとめた1府12省庁の枠組を基本的に守る方針ですから、新しい中央省庁体制の中で北海道と沖縄の位置付けをどうするかが議論の焦点になるものと認識しています。
そこで私としては、いくつかの問題点を提起してきました。例えば、北海道の場合は、積雪寒冷地で社会資本整備がまだ十分でないこと。自治体の財政力指数が極めて低く、財政基盤は脆弱で、過疎指定を受けている市町村が7割を超えており、全国平均の38%に比較して2倍に上っていること。また、1市町村あたりの平均面積が全国平均の3.2倍と、広域分散型地域社会を形成しているといった地域的な特殊性です。
また、世界の食糧事情を考えると、北海道が日本の食糧基地としてますます重要な役割を担っていくという、地域としての価値、その果たす役割を強力にアピールして関係方面のご理解を得たいものです。
そのためにも、こうした省庁再編問題は、全道民が官民上げて取り組むべき緊急の課題ですから、私としても、その先頭に立って行動する覚悟です。
――情勢を見る限りでは、なかなか厳しいようですが、長官としては具体的にどのような戦略を考えていますか
鈴木
客観情勢は確かに厳しいと思いますが、一つは内閣府の中に北海道開発庁の機能を位置付け、専任大臣を置くことです。
開発局の組織をみても、建設省、農水省、運輸省を束ねた一元的な組織として業務に当たっており、非常に効率的です。これに通産局と運輸局が加われば、これまでとかく批判の的だった縦割り行政の弊害を解消できますね。
このように、時代の要請でもある地方分権を先取りした機能を内閣府の中に位置付けることで、21世紀に向けて北海道発展の担保を確保できるようにしたいと考えているのです。
また、こうして独立組織としての存続を実現することにより、従来の年間予算に関する一括計上権を維持することも可能になると考えています。
北海道も沖縄も、本州とは異なる歴史的背景と状況があることは周知の通りです。両地域ともまだまだ開発は遅れており、経済的自立に向けても政策的なテコ入れを必要としているのです。
これが、今からもう47(都道府県)分の1という扱いを受けたのでは、特殊な地域事情と歴史を無視することになります。だからこそ、独立組織と予算の一括計上権は、まだまだ維持していかなければならないのです。
――ところで、長官は北海道開発庁にとって歴史的なプロジェクトとも言える「千歳川放水路」計画の見直しに言及されているようですが、どんな考え方なのでしょうか
鈴木
このプロジェクトは、計画決定から15年もの歳月が経過しています。この間、社会状況や道民の価値観は変化しています。だから、"何が何でも放水路で"、といった固定観念は持つべきでないと考えているのです。
これはあくまでも私見ですが、治水対策にはいろいろな組み合わせがあっていいと思うのです。例えば、遊水地と石狩川の治水対策を組み合わせれば、放水路は必要ないのかもしれません。また、遊水地とセットにすることで、放水路自体の規模を当初の計画より縮小するという方向性も、今後は検討課題となるでしょう。
現在、北海道庁が設けた話し合いの場において、検討が進んでいるところなので、賛成者と反対者双方の意見をよく聴きながら、慎重に対処したいと思います。
――豊浜トンネル、第2白糸トンネルと、岩盤崩落事故が相次ぎました。こうした事情から安全対策についてはどのように対応しますか
鈴木
まだ、ほかにも危険箇所があるので、早急に安全対策に取り組むよう、担当者に指示したところです。社会基盤の整備は、経済性だけを追求して安全性が後手に回ってはなりません。
そのためにも予算の重点配分や前倒しなど、メリハリの効いた予算執行に努めていく方針です。

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