<建設グラフ96年10月号>

interview

十勝港と共に躍進するサンタランドのまち

待望のフェリー就航、二重の喜び9月に町政施行50周年

北海道十勝管内・広尾町長  泉 耕治 氏

泉 耕治 いずみ・こうじ
昭和5年生まれ、樺太出身、庁立帯広中学校(現帯広柏葉高)卒
広尾町企画課長を経て昭和51年6月町長に初当選。現在6期目
十勝の海の玄関口である広尾町は今年、町政施行50周年を迎える。広尾といえば『サンタランドのまち』としてつとに有名。広尾海洋水族科学館とノルウェー国立ベルゲン水族館が姉妹水族館になった縁で1984年、オスロ市から国外唯一の『サンタランド』として認定を受けた。そんなロマンチックな響きとは無縁であるかのように、十勝で最も古い歴史を誇る広尾町は、先人が過酷な自然環境と戦いながら漁業と農業を基幹産業にたゆまない発展を続けてきた。重要港湾である十勝港の整備も進み、待望のフェリー就航が実現し、町政施行50周年とともに関係者は二重の喜びに包まれている。折しも泉耕治町長の6期目がスタートした。十勝港を軸に新たな段階に入った広尾町のまちづくりの展望を泉町長にインタビューした。
――いよいよ第6期泉町政がスタートしましたが、就任に当たっての抱負をお聞かせ下さい
町政執行方針の中にも触れていますが、時代に対する挑戦者の気概を持ち、何よりも「やるべきことはしっかりやる」、そんな姿勢を大切にしたいですね。そして、財政の健全化に十分意を注ぎ、過疎地域活性化計画の策定及び第3次広尾町総合発展計画のローリングを行い、広尾町の21世紀の「確かな発展の道」を目指したいと思っています。
――今年は町政施行50周年の節目の年ですね
そうです。のみならず、今年はフェリー就航元年、長崎県大島町との姉妹提携10周年でもあります。さらに平成10年には開町130年、十勝港着工70年、サンタランド認定15年、上水道敷設70年、公共下水道供用開始10年というあらゆる分野で大きな節目を迎えます。
ですから、本町の優れた条件と可能性を生かし、『港と共に躍進するサンタランドのまち』づくりを着実に進めたいと考えています。
――具体的な施策は
『活力あるまちづくり』を目指し、十勝港の整備、フェリーの利活用の促進及び港湾関連企業の誘致、水産業、農林業、商工業と観光の振興を重点に進めたいと思います。
いずれにしろ港が広尾の“生命線”ですから、重要港湾である十勝港の完成がまちづくりの最大の柱になります。内港は、この9月20日(火)にフェリー『ブルーゼファー』が就航し、今後は、発着便数を増やすとともに、東京に近い関東圏への直通航路の実現を目指したいと思います。当面は釧路発のフェリーが広尾に寄港することになりますが、直通航路はそう遠くない時期に実現すると思います。おおむね3年後を目処にしています。
また、漁港区が手狭になっているので、カレイ類などの育てる漁業振興のため拡張整備を推進するなど、平成12年までの港湾整備5か年計画に基づき、十勝港の再編整備を精力的に行うことになるでしょう。
――十勝の空の玄関口である帯広空港に対して、広尾の十勝港は海の玄関口になるわけですが、地域の活性化には空港と港の連携が重要なポイントになりますね
帯広空港は南寄りで中札内村に近いのです。帯広から広尾にかけての南十勝5町村(広尾、中札内、大樹、更別、忠類)を『夢街道』とし、それぞれの特色を生かし観光産業の振興に結び付けたいものです。
わが町のマリンスポーツ施設をはじめ中札内村には坂本直行の美術館、忠類村にはナウマン象の記念館があります。温泉めぐりも楽しめます。また、忠類村に道の駅がありますが、これも広域的に考えて他の4町にも道の駅をつくったらいい。
その他、花いっぱい運動を展開するのもいいでしょう。隣の大樹町には航空宇宙基地構想があります。夢の大きいプロジェクトになると思います。空港と港を活用しながら、広域的な観点からまちづくりに共同歩調をとっていきたいと思います。
――2年前のフェリー岸壁着工の際、町長は「後発ゆえにいいものを造れる」と発言していましたね
本道の重要港湾の中でマイナス13mの公共岸壁を最初に着工したのも十勝港です。当初の計画はマイナス10mでしたが、時代の要請でもある国際化に対応して途中で計画を変更できたのは後発の強みだったと思います。
アメリカやカナダから直接、飼料を輸入することが出来ますから、十勝圏の農業地帯に波及効果が期待できます。
――フェリーターミナルの周辺整備についてはどのように考えていますか
ターミナルの施設自体は今後、貨物の取り扱い量によって変わると思います。いずれは大型のターミナルが必要になるでしょうが、無駄にならないように既存施設は他の用途に転用するなど情勢変化に対応した施設整備を考えています。
いうなれば『小なるが故に大を導入する』というのか、次から次に機敏性のある体制整備が必要になると思います。情勢変化の激しい時代ですから、過剰投資にならないよう先を見越しながら堅実に取り組みたいと思います。
――フェリーの就航も十勝圏に経済的な波及効果が期待できますね
十勝の農産物、中でも野菜を考えていますが、十勝港に集荷し、ここから首都圏に出荷する体制を目指しています。港に野菜の貯蔵・調整施設の設置を農業団体で計画していますし、平成12年には飼料コンビナートが供用開始の予定です。
もう一つは、十勝管内の陸別町、音更町、豊頃町、芽室町、浦幌町、帯広市に自動車のテストコースがありますが、これが何を意味するか。つまり寒冷地向けの研究施設に付随して、車や部品を広尾から積み出すことも夢ではないということです。
機械化が進み雇用の場を確保するのは難しい面はありますが、現在の人口(9,600人)をこれ以上減らさないよう、さまざまな振興策を講じることで、ここで人口減に歯止めをかけたいと思っています。
――帯広−広尾間の自動車専用道の工事がいよいよ着工しましたが
開通までには時間がかかりますが、国は来年度予算編成で空港、港湾の拠点施設をつなぐ交通アクセスの整備に予算を重点配分する方針だと聞いていますので、工事のピッチが進むのを大いに期待しているところです。
国道336号の4車線化は今年、着工を関係機関に働きかけています。コスモ大橋とレインボー大橋は平成12年の同時完成を目指しています。

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