interview (96/8)

日本を代表する海運のターミナル・東京港

臨海副都心も着実に整備

(前)東京都港湾局長  石川雅巳 氏

石川 雅巳 いしかわ・まさみ
昭和16年生まれ、東京都立大学法経学部卒
昭和38年東京都入都(住宅局)
昭和50年千代田区企画課長
昭和60年総務局職員課長
昭和62年総務局主幹
昭和63年生活文化局主幹
平成 2年東京都職員研修所次長
平成 3年総務局災害対策部長
平成 4年港湾局総務部長
平成 6年建設局次長
平成 7年港湾局長
平成 8年7月福祉局長
東京港は、大消費地・東京都が背後に控えているだけに年間取り扱い貨物が8,700トン、貿易額8兆2,000億円に上る。横浜港に次ぐ全国で2番目の大規模港湾で、うち輸入量は3兆3,000億円で全国1位となっている。注目の的となっている臨海副都心も、ほぼ主要な都市基盤整備は終了し、新しい副都心としての偉容を現し始めた。東京都港湾局の石川雅巳局長に、東京港、臨海副都心の将来展望、島しょ部の整備方針などについて語ってもらった。(8年5月17日インタビュー)
――東京港は、昭和18年に国際貿易港として出発してから、本年の5月20日に55回目の開港記念日を迎えると聞いております。国際貿易港として順調な発展を遂げてきた東京港が、21世紀においてはどのような役割を果たしていくとお考えでしょうか
石川
東京港は、都民生活に必要な物資の供給をはじめ、東京の都市活動を支える物流拠点として、東京の発展に重要な役割を果たしてきました。
アジア地域など海外への生産拠点の移転などに伴う製品や食料品の輸入の増加は、今まで以上に住民生活と密接な関係をもつことになります。また、環境問題への意識の高まりを背景として、輸送手段をトラック輸送から船舶や鉄道輸送へ転換するモ−ダルシフトが社会的に要請されています。
東京港の背後には、約3,200万人の人々が住み、旺盛な経済活動が行われている首都圏が広がっています。今後とも、東京港は、世界各地とコンテナ定期航路で結ばれたメインポ−トの地位を堅持するとともに、大都市東京の生活を支える「大都市生活港湾」であり続けたいと考えております。
――現在、東京港では東京港第5次改訂港湾計画に基づき整備が進められていると伺っております。現在における本計画の達成状況についてお聞かせください。また、次期計画はどのような考えで作成されるのでしょうか
石川
第5次改訂港湾計画は、昭和63年に策定され、その後、取扱貨物量の増大、新たな海面処分場の整備、船舶の大型化へ対応するため、4回の一部変更が行われました。
本計画に基づき、外貿機能の充実を図るため、青海コンテナ埠頭3バ−スや大井食品埠頭2バ−スなどを整備してきました。内貿では、芝浦埠頭を再整備するとともに、竹芝埠頭の再開発を進めてきました。また、都民の海洋レクリエ−ション需要に対応するため、夢の島マリ−ナの整備や海上公園の整備を進めてきました。そのほか、レインボ−ブリッジ、臨海新交通「ゆりかもめ」など、交通基盤の整備にも努めてきました。
次期港湾計画の策定にあたっては、港湾の国際競争力を確保しメインポートとしての地位を堅持できるよう、船舶の大型化に対応した大水深の外貿コンテナタ−ミナルを拡充・強化すること、モ−ダルシフトの推進に対応できるよう国内海上輸送の拠点港湾としての機能を充実すること、都民生活と都市活動の安心と安全を高める地震に強い港づくりを目指すことなどを基本的な方向として計画策定にあたりたいと考えています。
――平成7年の東京港の港勢はどうなっているでしょうか。また、東京港の取扱貨物の特徴、港勢の今後の見通しについては
石川
平成7年の東京港の取扱貨物量は、平成3年の8,415万トンを超え過去最高の8,729万トンを記録しました。平成6年と比較して12パーセントの著しい伸びとなっております。とりわけ外貿コンテナ貨物が著しい伸びを示し、前年と比較して18.5%のびています。
これは、景気が回復基調にあること、阪神淡路大震災の影響により神戸港向けの貨物の一部を受け入れたこと、中国などとの新規航路が相次いで開設されたことなどが理由として考えられます。
平成7年の東京港の貿易額は、東京税関の資料によると、8兆2,035億円であり、この額は横浜港に次いで全国第2位となっております。なお、東京港のコンテナ貨物輸入額は3兆3,064億円で4年連続全国第1位を保っております。
東京港の取扱貨物の特徴ですが、外貿貨物については、輸出では機械類、科学工業品が、輸入では食料工業品、製造工業品、紙・パルプなどが増加しています。内貿貨物につきましては、移出では廃棄物、鉄鋼、重油等が、移入では砂利・砂・石材等・石油製品・紙・パルプなどが増えています。
先の税関資料によれば、輸出では機械機器が貿易額の77%をしめており、そのうち34%は半導体などの電子部品、電気回路用機器などの電気機器となっています。輸入では食料工業品が35%を占め、次いで事務用機器、電気機器などの機械機器が21%となっています。
今後の見通しとしては、日本の貿易構造は、従来の輸入した原料を加工し輸出する加工貿易から、企業の海外進出などによって半導体、機械部品などを輸出し製品を輸入するといった水平貿易型へと移行しつつあります。こうした状況のもとで、大消費地である首都圏を背後圏とする東京港の貨物量は輸入を中心に益々増えていくものと考えております。
――東京港におけるふ頭などの港湾施設の整備状況と今後の計画についてはどうなっていますか
石川
東京港においては、現在、外貿コンテナふ頭が、公共バースとして青海ふ頭と品川ふ頭に4バース、専用コンテナバースとして大井ふ頭に8バース、青海ふ頭に2バースが整備されています。
また、現在供用中の大井コンテナふ頭については、本年3月に港湾計画の一部変更を行い、船舶の大型化や輸入貨物の増大に対応するため、岸壁水深を−13mから−15mに増深するとともに、1バース当たりの延長、面積を増加させるため、本年度から改良工事に着手していきます。
さらには、今後新たに、中央防波堤及び新海面処分場に外貿コンテナふ頭を整備していく考えです。
コンテナ以外の外貿ふ頭については、大井水産物ふ頭、大井食品ふ頭、15号地木材ふ頭などの物資別専門ふ頭、石材、プラント、果物など多種多様な貨物を取り扱っているお台場ライナーふ頭などが整備されています。
一方、東京港は内貿航路の拠点でもあります。芝浦、品川、10号その2ふ頭には内貿雑貨ふ頭が整備され、北海道、四国、九州、沖縄などに定期航路が開かれています。また、フェリーふ頭も整備されています。今後は、中央防波堤内側処分場に内貿ユニットロードターミナルを整備する予定です。
――臨海副都心整備の現況と課題については
石川
東京臨海副都心は、東京の都市構造を一点集中型から多心型へと転換させるとともに、情報化・国際化への対応、水と緑を生かした快適な生活圏の創造を目指したものです。
臨海副都心は、東京の7つの副都心の一つです。他の6つはいずれも既存のまちを再開発するものですが、臨海副都心は埋立地に新たにまちをつくりだすものであり、先端の都市インフラ・情報インフラを備えています。例えば、上水管など9種を収容した共同溝、ごみ管路収集システム、地域冷暖房システム、中水道などが、全域にわたり整備されています。
臨海副都心の立地特性としては、国内航空の中核である羽田空港と国際空港の中心地である成田空港の軸上にあること、最新鋭のコンテナふ頭と大型の倉庫から構成される青海の物流拠点が地域に隣接していることなどがいえると思います。
現在、臨海副都心地域においては、主要な都市基盤が整備され、始動期の開発はほぼ終了しました。臨海新交通や臨海高速鉄道が開業し、業務・商業施設や国際展示場がオープンするなど、都市としての活動が始まりました。また、住宅への入居や小中学校の開校など、新年度を迎えて人々の新しい生活が始まっています。さらには、tokyoシーサイドフェスタをはじめ、多くのイベントの実施により、臨海副都心を訪れる都民は非常に増えており、東京の新しい「まち」として臨海副都心は大きな注目を集めています。
臨海副都心は、臨海副都心基本構想などに基づき、昭和63年から開発が進められてきました。この間、経済動向の大幅な変化などがあり、始動期以降の開発について、総合的な見直しを行うことになりました。
このため、昨年の9月から「臨海副都心懇談会」において精力的にご審議を頂き、先日答申をご提出いただきました。今後は、答申を十分参考にし、都議会での議論も踏まえて、今後の開発に当たっての都の方針を早急に策定したいと考えています。
――島しょ部における港湾や空港の整備状況並びに今後の計画について教えてください
石川
島しょ部における港湾、漁港及び空港は、島民の生活にとって欠かせない交通、生活基盤となっています。
港湾については、海上交通の確実性と定期性を確保するため、安全で質の高い岸壁、防波堤等の整備を行っています。今後は、港湾機能の整備に一層努めていくとともに、海洋性レクリエーションにも対応した港づくりに努めていきたいと考えています。
漁港については、地元船舶などが安全に利用できるよう、泊地、防波堤等の整備を行っています。今後は、地場産業としての漁業の振興を図るためにも、引き続き港湾整備を進めていきたいと考えています。
空港は、現在、大島、新島、神津島、三宅島、八丈島の5カ所に設置しており、今後は、大島空港のジェット化、八丈島空港の滑走路延伸などを行ってまいりたいと考えております。
なお、調布離着陸場については、離島航空路線の拠点として、また地域航空の拠点として、正式飛行場(コミューター空港)として整備してまいりたいと考えております。

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