interview  (97/1)

わが国メインポートのプライドかけ港湾機能の向上と多角化を推進

都政の重要ポイント、新海面処分場整備に着手

東京都港湾局長 今沢時雄 氏

今沢 時雄 いまざわ・ときお
昭和16年2月28日生まれ、中央大学法学部法律学科卒
昭和34年東京都総務局入都
昭和49年衛生局中野保健所衛生課長
昭和60年港湾局庶務課長
平成元年総務局商科・立川短期大学事務局長
平成 2年清掃局ごみ緊急対策室長
平成 4年東京フロンティア推進本部臨海開発調整部長
平成 6年東京フロンティア推進本部長
平成 7年東京フロンティア対策本部長
平成 8年港湾局長
東京都港湾局長今沢時雄氏わが国最大の取引量を誇る外国貿易のメインポート・東京港は、今後ますます輸入量の増大が予想されている。このため、港湾整備も輸出型から輸入型へと方向転換が迫られており、埠頭の大型化、広大なバックヤードの確保、そして流通加工、情報提供機能など、ハード・ソフト両面の施設整備が求められている。東京都港湾局は、東京港の向こう10年間の方向性を決定する第6次改訂港湾計画の策定中だ。一時は世界都市博の中止で、臨海副都心開発の将来に幾分の不安要素も見られたが、東京都港湾局の今沢時雄局長は「大都市生活港湾という理念の実現とメインポートの地位を堅持すべく、最善を尽くしたい」と、意欲を示している。
――現在、東京港をめぐる課題としては、どのようなものが考えられますか
今沢
物流基地東京港の使命は、輸送効率の優れた大都市港湾として、都民をはじめとする首都圏4,000万人の人々に、世界と国内各地の物資を低廉、迅速、安定的に供給し、生活の向上を図ることにあります。
そのためには、海上輸送貨物については可能な限り大消費地に最も近い東京港で受け入れることが、輸送の経済性から考えて望ましいと考えられます。
このため、東京港は、国内外の定期航路の本船が直接寄港するメインポートの地位を堅持し、都民生活の安定化に寄与しなければなりません。そして、メインポートの地位を維持するため、コンテナ埠頭などのハード面の整備だけでなく、ソフト面の改善にも努め、使いやすい港を目指したいと思います。
国内幹線輸送においては、輸送手段を陸上トラック輸送から船舶・鉄道に移すモーダルシフトが、輸送の経済性の面でも環境負荷の面でも望ましいといえます。
このため、大消費地に隣接した港湾として、東京港の利用を積極的に働きかけ、モーダルシフトの推進の一翼を担っていきたいと思っています。
また、物流の合理化、効率化を進めるため、海運、陸運、港運などの輸送に係る規制の緩和を求めていかなければなりません。
そして増大する製品や食料品などの輸入貨物の円滑な流通、物流の合理化を推進するため、輸入貨物などの総合的な物流センターの整備を図っていきます。
さらに災害時や復旧時における救援・輸送基地として、また食料などの備蓄基地として、大都市東京の住民生活と都市活動の安心と安全を支えるため、震災時にも機能が発揮できるようにバースのみならず、貨物の保管施設などの港湾施設の耐震性の強化を図っていく方針です。
輸出対応型から輸入対応型へ
――港湾施設の整備は、今後どのような考えで進めていきますか
今沢
海運の主力である外航コンテナ船は、昨今船型の大型化が進行しており、6000teu(teu=20フィート・コンテナ換算の積載量)を超える船が就航しています。東京港ではこの船舶の大型化に対応したふ頭整備が課題となっています。
また、国際的な産業・貿易構造の変化に伴う貨物輸入量の増大により、貨物の蔵置期間の長期化やコンテナの低段積みに対応できる広いヤードを確保するなど、これまでの輸出対応型から輸入対応型へとターミナルの基本性格を転換していくことが求められています。
輸入対応型のふ頭の規模は、従前のバース延長300m、面積10ha〜12ha程度でなく、延長350m、面積20ha前後のものが必要となります。
このため、本年度完成した東京港初の高規格コンテナターミナル「青梅コンテナふ頭」に加えて、現在、主力ふ頭である大井コンテナふ頭の再整備に着手していきます。さらに長期的な計画としては、中央防波堤外側地区と新海面処分場において、新たなコンテナふ頭を8バース程度整備する予定です。
これらの新しいコンテナふ頭においては、大水深で連続的なバースにするなど、船型の変化などに柔軟に対応できるよう配慮します。また、ふ頭の背後には、荷さばき、保管、流通加工、展示、情報提供などの諸機能を配備し、港頭地区での集中的な処理により、輸入貨物の内陸部への効率的な流通を図りたいと考えています。
――第6次改訂港湾計画の策定状況と概要は
今沢
平成6年7月に東京都港湾審議会より、概ね30年後の東京港のビジョンを明らかにする「東京港の長期構想」と、これを踏まえ概ね10年後までに行うべき施策の基本的な内容を明らかにした「第6次改訂港湾計画の基本方針」の答申を頂きました。
現在、答申を踏まえ、東京の消費生活や活力を支える「大都市生活港湾」として、外国貿易におけるメインポートとしての地位を堅持できるよう、船舶の大型化に対応した高規格のコンテナターミナルを整備・充実すること。トラック輸送から海上輸送への転換を促進するため、国内海上輸送の拠点港湾として機能の充実を図ること。震災時における緊急物資輸送の海上輸送拠点としてはもちろん、東京港の機能が停止することがないよう地震に強い港づくりを目指すことなどを基本的な柱に策定作業を進めており、本年度内に策定に向け、関係機関との調整を進めています。6次港湾計画の目標年次は概ね17年までです。
港湾のレクリエーション機能も充実
――港湾では、物流だけでなく都民の憩いの場の創造も重要視されるようになりましたね
今沢
そうですね。港の役割は、物流の拠点のみにとどまりません。一般都民が水に親しみ、港を理解してもらう場の創造も、港湾施設の整備に劣らず重要な点であると考えます。港湾局では、このため、海上公園を始めとするいくつかの施設の整備を進めています。
まず、海上公園は、平成8年12月現在、43公園(約753.1ha)を開園しています。海上公園は、都民に多様なスポーツ・レクリエーションの場を提供するとともに、自然と調和した美しい都市づくりに寄与し、海の自然の回復と保全を図ることを目的としています。
東京港では、人工海浜のあるお台場海浜公園・葛西臨海公園、スポーツ施設の充実した大井ふ頭中央海浜公園・辰巳の森海浜公園、キャンプ場・ゴルフ場・ヨット訓練所・海釣り施設などのある若州海浜公園など、特徴ある公園づくりに努めています。
夢の島マリーナについては、都民の海洋性スポーツの振興と海洋思想の普及を目的として整備されました。現在640隻の係留能力をもつ日本最大規模のマリーナです。
――客船ターミナルも様々な工夫が可能ですね
今沢
晴海客船ターミナルは平成3年、竹芝客船ターミナルは平成7年に整備されました。
晴海は外航客船用、竹芝は離島航路用の客船ターミナルですが、乗降施設だけでなく、展望室やレストランなども併設し、そのスマートな外観と相まって多くの都民に親しまれています。
そのほか、東京港では親水性のある緩傾斜型堤防や護岸の整備、運河ぞいの遊歩道の整備などを進め、都民と港や水とのふれあいの場の創造に努めています。
――新年度の事業予定は
今沢
平成9年度は、都政の重要課題でもある新海面処分場整備事業、臨海副都心の整備、東京臨海道路の整備、さらには、大島空港の拡張など島しょ空港の整備を実施したいと考えています。
――各事業について具体的にお聞きしたい
今沢
新海面処分場整備事業は、護岸建設費が総額4,500億円、最終の護岸完成までに11年間を要する一大プロジェクトです。
埋立免許については、本年7月に、運輸省から認可を取得し、同日、港湾管理者である都知事から免許を取得しました。そして8月には、工事に着手することができました。
平成9年度におきましては、引き続き護岸建設などを行っていきたいと考えています。
臨海副都心については、本年7月に策定された基本方針を受けて、年度内に事業化計画をとりまとめることになっています。
平成9年度においては、事業化計画に基づき推進したいと考えています。
一方、東京港の物流機能の沖合展開、臨海副都心の開発整備などによって発生する物流交通を円滑に処理するため、城南島から中央防波堤地区の区間を第一工区として、平成13年度の供用開始を目指し、珍埋工法による海底トンネル(第一工区、総事業費約2140億円)の整備が進んでいます。
平成9年度は、引き続き、立坑の躯体や沈埋函の製作、及び城南島、中防側の取り付け道路などの整備を推進する予定です。
大島空港拡張事業はys-11のリタイアに対応して、現滑走路延長1200mを1800m級のジェット化空港として拡張整備の調査、手続きを進めています。
平成9年度は、引き続き、用地買収及び実施設計を行う予定です。

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