建設グラフ(1997/2)

interview

リサイクルシステムの確立が急務

資源循環型社会をめざして

東京都清掃局長 福永正通 氏

福永 正通 ふくなが・まさみち
昭和16年生、早稲田大学法学部卒
昭和35年9月東京都財務局入庁
昭和47年12月台東区総務部税務課納税指導係長
昭和52年7月港区企画部予算課長
昭和57年4月総務局副主幹
昭和60年4月企画審議室調整課副参事
昭和61年4月情報連絡室報道部報道課長
平成元年8月養育院 老人医療センター事務長
平成 2年8月情報連絡室参事
平成 3年6月総務局地域振興担当部長
平成 5年9月総務局行政部長
平成 7年6月総務局総務部長
平成 8年7月現職
東京都23区のごみの量は年間400万トンを超す。平成元年には過去最高の490万トンを記録、2年度以降は徐々に減少しているが、7年度は424万トンと依然、高水準であることには変わらない。現在の中央防波堤埋立処分場も平成9年度中には満杯となり、新しい新海面処分場も、いまのペースでごみの発生量が続くと、あと15年程度が限界という。こうした状況の中、都は昨年12月から事業系ごみの全面有料化に踏み切った。東京都清掃局長の私的諮問機関である「ごみ減量のための『東京ルール』を考える懇談会」は報告の中で「資源循環型社会」の実現に向けて、都民・事業者・行政の3者の役割と責任分担を明確化した東京ルールを新しいリサイクルシステムとして提言した。ごみの発生抑制、リサイクルの推進、再資源化の推進が緊急課題となっている東京のごみ事情を福永正通清掃局長に聞いた。

有料シールで家庭系ごみと区別
――昨年12月から事業系ごみの全面有料化に踏み切りましたが、方法として新しい有料のごみ袋を採用したのですか
福永
いいえ、既存のごみ容器やごみ袋を使用しています。事業系のごみについては、量に応じて4種類の有料シールを貼っていただきます。
――都内には自宅と同一建物にある飲食店も多く、もしも家庭系と事業系を一緒に出された場合は見分けがつかないというケースも想定されるのでは
福永
もちろん、そうした不適正排出をしないようPRもしています。ごみ集積所については、以前に横浜市内で起こった集積所の移動をめぐる訴訟に見られるとおり、付近の住民には多大な迷惑がかかるものですから、基本的には都民のモラルのあり方にかかわる問題といえるでしょう。
一方、有料化に当たってはおおむね15世帯ごとに設置された25万か所のごみ集積所ごとに台帳、つまり“ごみの戸籍謄本”を作りました。これに基づき、清掃事務所の職員が一軒ずつ事業所を訪ねてフェイス・トゥ・フェイスで事前説明を行いました。
可燃ごみについては職員が週3回はごみ収集に回っていますから、どんな事業所がどのようなごみを出すかは経験則で分かっています。不適正な排出があれば警告のステッカーを貼り、回収しないことにしています。
――罰則規定がないので、取り締まる上では難しい問題もあるのでは
福永
その点では、性善説に立つしかありません。これまで各集積所周辺の住民とは長い間、有形無形のコミュニケーションを重ねてきたわけですから、お互いに信頼関係を大前提に取り組みます。
家庭系ごみの有料化は時期尚早
――ごみの有料化は将来、家庭系にも及ぶのでしょうか
福永
事業系ごみの回収を全面有料化した背景にあるのは、事業者が処理責任を負うという法的原則です。これまでは1日平均10キログラムまでは無料で、その処理責任を明確にし、負担公平の原則を徹底するという狙いがあります。
ごみの処理には、莫大な経費を要するのです。ところが、ごみを出さない人までも処理料の負担をさせられるというのでは、不公平感があるでしょう。
ただ、そうした事業者への措置を、直ちに家庭系にまで拡大していくというのは時期尚早と考えています。公園を整備したから、そこに来る人々に対して入園料を課すというわけにはいきません。清掃行政も同じです。
3つの東京ルールを施行
――ごみの回収は、どんなシステムで行っていますか
福永
ごみの回収については現在、東京ルールを検討しています。東京ルールというのは、昨年、消費者や事業者、学識経験者によって構成された「ごみ減量のための『東京ルール』を考える懇談会」において提言されたものです。
――具体的な内容は
福永
東京ルールTは、家庭系ごみの資源回収を徹底するために、例えば週3回の可燃ごみの回収日のうち1日を行政による資源回収日にするとの提言に基づくもので、対象はビンや缶を中心に、ペットボトルや古紙も検討しています。
東京ルールUは、望ましい自己回収の仕組みとして、販売店やメーカーなどの事業者に回収や資源化の責任を求めるものです。
事業者による自己回収が徹底していけば、行政による回収にともなう公費支出が抑制され、リサイクルにかかる経費を製品価格内に組み込むという価格システムも成立し、理想的な資源循環型社会を実現していくことが可能になります。
東京ルールVは、ペットボトルの新しい回収システムで、都民はペットボトルのフタをはずすなどして、店頭に設置された回収ボックスに出してもらいます。その運搬は、暫定的ですが当面は行政が行い、そして中間処理、再商品化をメーカー企業が担当するという3者による責任と協力体制を明確にしたシステムです。
――なぜペットボトルに限定されているのですか
福永
ペットボトルは、ビンや缶に比べて回収率が2%と低く、その処理費用の負担も大きな課題です。
現在、整備中の新海面処分場は、中間処理を施さないごみの搬入を認めないことにしています。今のままのごみ量でいくと15年程度で満杯になるといわれています。ペットボトルのようにリサイクルの可能なものは極力、再利用する必要があります。
10%の減量効果を期待
――有料化による減量効果は
福永
都が収集している事業系ごみ総量の約10%、約14万トンの減量を想定しています。
有料化に伴う歳入はごみ減量、リサイクル施策を充実させ、資源循環型社会の実現に向けて役立てたいと思っています。
――ごみの資源化、リサイクルはいまや全国的な傾向ですが、都内に専門工場はあるのですか
福永
いまのところは清掃工場で燃やした灰をレンガに加工して、清掃工場のエントランスの敷石や道路の路盤材などに活用しています。
しかし、そうした再生品の生産は際限なく可能なのですが、需給バランスがとれていないのが現状です。下水道の汚泥資源も同様で、ごみを原料にしているためイメージが良くないのがひとつの原因と考えられますね。
ガイドラインでリサイクル推進
――リサイクルは採算性の問題があって民間企業もビジネスとして参入しにくいようですが、クリアする方法はないのでしょうか
福永
リサイクルは資源回収だけでは中途半端です。それを再生し活用する仕組みを作らなければ、リサイクルの輪は広がりません。わが国は欧米諸国に比べてリサイクルシステムの構築が未成熟ですが、その萌芽は見られます。
都庁では再生品利用ガイドラインを作り、紙については白色度を80%から70%に下げて全庁的に使用しています。欧米諸国でも、灰色の紙が一般的です。紙の白色度を高めることは、それだけ薬品を使うので環境に対する負荷が大きくなります。
また、清掃局では清掃車のタイヤに再生品を利用しています。これだけ大きな組織ですから、『隗より始めよ』で、まず都庁の中でリサイクルを普及しそれを23区、市町村から民間企業にまで輪を広げようと思っています。
――清掃行政を企業会計に移行する可能性は考えられませんか
福永
清掃事業はマンパワーに負うところが大きいので、人口が10万〜20万人規模なら可能だと思います。人口10万人レベルで考えるなら、東京の800万人に比べてリサイクルもしやすいでしょう。
しかし、都の場合はこの清掃局だけで1万人も職員がおり、インフラ整備にも莫大な経費がかかっています。今後、業務の大幅な機械化が進むのであれば別ですが、やはり大部分は人力に頼らなければなりません。したがって採算性を考えるなら、企業会計への移行は困難な状況にあります。
ごみを出さないライフスタイルを
――以前に「週刊ダイヤモンド」誌で、清掃工場の整備について批判的な報道がされましたが、どう捉えていますか
福永
様々な意見の中には、単にごみの量、焼却量、そして清掃工場の数と、数値だけを関連づけて否定的に捉えるという見方もあるのでしょう。清掃工場といえば迷惑施設といわれてきました。そのため、総論賛成、各論反対の側面は否定できません。
しかし、平成12年には都区制度改革に基づき、23区に清掃業務を移管することになります。その際、「自区内処理」が原則となっていますから、各区が独自に清掃工場で全量焼却しなければなりません。
ところが、清掃工場は未来永劫、24時間体制で稼働できるというものではありません。中には、ルールを守らない一部の人々のために、工場がストップするという事態も考えられます。施設点検のために休炉することもあります。そうなると、全量焼却を維持していくためには工場の稼働限度を考慮し、余力を確保しなければなりません。
一方、清掃行政は、まさに転換期を迎えているといえます。かつては、排出されたごみを収集して処理するのが主業務でしたが、今日ではごみを出さない、出させない方向づけをすることも清掃行政だといえます。のみならず、出されたごみも活用していくという新しい局面を迎えているわけです。したがって、最近の使い捨てのライフスタイルを変えていくことが必要だと思っています。
――北区の清掃工場建設に合わせた還元施設や、新宿区大久保の中継所屋上にテニスコートを整備するなど関連事業も始まっていますね
福永
区民と直接、接触を持つ区の協力を得ながら、区民の要望を集約して、相互扶助の施策展開を行っています。
清掃工場で発生する余熱を利用して老人福祉施設の浴場や温水プールに提供するというのが、最も多いパターンです。その施設整備のためには都としても区に対して、一定の財政支援をしていきたいと考えています。

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