建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ1997年8月号〉

interview

順調な滑り出し 都市モノレール

公園面積拡大、下水道普及率向上が課題

千葉県都市部長 齊藤市衛 氏

齊藤 市衛 さいとう・いちえい
昭和15年10月14日生まれ、39年日本大学法学部法律学科卒、40年日本大学専攻科法学専攻科卒。
昭和 40年 4月 総務部管財課課長補佐
60年 4月 運輸省港湾技術研究所設計基準部研修資料課長
61年 4月 土木部管理課課長補佐
62年 4月 環境部環境調整課主幹
63年 4月 都市部計画課主幹
平成 元年 4月 企画部交通計画課長
3年 4月 土木部管理課長
4年 4月 水産部参事
5年 4月 企業庁 ニュータウン整備部次長
10月 千葉市助役
8年 4月 企業庁 ニュータウン整備部長
9年 4月 都市部長
千葉県のまちづくりは「ちば新時代5か年計画」に基づいて行われているが、下水道普及率も公園の一人当たり面積も全国レベルに比べて低く、まだ十分といえる段階ではない。また、住宅の質的向上も課題で、特に高齢者仕様の公営住宅供給は直面する重要な政策的テーマでもある。それだけに都市部の役割は重く、出番は多い。一方、都市モノレールの整備は着実に進んでおり、県内のビジネス、生活を支える重要な交通機関として完成が待たれている。こうした都市機能向上に向けて多くの課題に取り組む齊藤市衛都市部長に、県内の都市整備の現況と整備目標などを語ってもらった。
――全国各都市の住み良さランキングでは、市民一人当たりの公園緑地面積が指標の一つにされていますが、県全体ではどのくらいになりますか
齊藤
平成8年3月末時点で、都市公園を有する市町村は29市10町2村にわたり、県立及び市町村立を併せて2,893.2haが整備されています。そこで、都市計画区域内人□を基準としてみると、1人当たりの都市公園面積は5.3uになります。
全国的に比較してみると、全国平均で7.1uであるのに対し、千葉県は5.3uですから、決して水準が高いとはいえませんね。
したがって、今後とも適切な配置計画に基づき、都市公園整備に特に力を入れていく必要があります。
――少子高齢化で、公園の機能や整備手法が変わってきたと言われます。千葉県では、現代の都市公園に求められる機能とはどんなものと考えていますか
齊藤
都市公園は、都市におけるみどりとオープンスペースの中核として、良好な景観を備えた地域環境の形成、身近な県民の憩いの場やスポーツ・レクリエーション活動の場を提供するなど、重要な役割を果たしています。
また、地震などの災害における防災拠点としての役割や県民の健康の維持増進の場、身近な自然とのふれあいを通じて心身ともに豊かな人間形成に寄与する場など、多様な機能を持つ生活環境空間としての役割が再認識されています。
したがって、私たちはこれらの機能を念頭に置きながら具体的に表現する形で整備していくことが必要だと思います。
――現在、整備中の公園は
齊藤
県立都市公園は、蓮沼海浜公園、青葉の森公園をはじめ6箇所が整備済みです。平成8年度からスタートした「ちば新時代5か年計画」では、地域特性を活かしながら、防災や高齢者などにも配慮した広域的な利用がなされる都市公園整備を進めることにしており、長生広域公園、八千代広域公園をはじめ8箇所を継続して整備するほか、手賀沼広域緑道など3箇所を新規に着手することにしています。
また、5か年計画において地域環境の向上と地域住民のレクリエーションやスポーツ利用を図るため、街の中の身近な公園として市町村立都市公園の整備を促進することになっており、これに基づき計画期間内に566箇所の整備を計画しています。
こうした整備によって、5か年計画の最終年度には、都市計画区域内人□1人当たり都市公園面積を、6.5uにまで伸ばすことを目指しています。
――千葉の住宅事情と、今後の公営住宅供給のあり方についてどう考えていますか
齊藤
千葉県の住宅数は、量的にはおおむね充足されていますが、最低居住水準未満の住宅に住む世帯数が未だに7.3%にのぼっており、質的には充足されているとは言えない状況です。
このため、5か年計画では、2,000戸の県営住宅を建設して住宅に困窮する低額所得者に良質で低廉な家賃の賃貸住宅を供給するほか、中堅所得者向けの賃貸住宅としては、特定公共賃貸住宅の建設促進も併せて推進することにしています。
――まちづくりにも福祉の視点が求められるようになりましたが、特に住宅となると多方面での工夫が必要となりますね
齊藤
そうですね、わが国の高齢化社会は、平均寿命の伸長と出生率の低下等により、諸外国にも例を見ない速さで進行しています。
今後の住宅施策においては、住宅施策と福祉施策の連携強化が求められており、そのためにはバリアフリー住宅の確保に加え、住生活を支えるケア・サービスの充実を図っていく必要があるでしょう。
比較的高齢化率が低いと言われるこの千葉県においても、高齢化は着実に進行しており、やはり高齢者世帯や単身高齢者世帯の増大が予測されています。そのため、今後はますます高齢者が安心して住み続けられる住宅・住環境対策をも講じていかなければなりません。
そのためには生活相談、緊急時の対応などの福祉サービスが付加された公共賃貸住宅、つまり「シルバーハウジング・プロジェクト」を積極的に推進する必要があります。県においては現在、そのパイロット・プロジェクトとして実籾県営住宅団地50戸の建設を予定しています。
――下水道の普及も衛生的で文化的な生活には不可欠ですが、その普及率と政策的課題は
齊藤
千葉県の下水道普及率は、平成8年3月末現在で49%となっており、これも全国平均の54%に比べてかなり低い状況です。建設省の第8次下水道整備5ケ年計画では、普及率の目標を66%としていますから、県としても、それらを目標にしながら整備計画に基づいて整備を進めなければと思っています。
この点ではさすがに政府の理解度も高いもので、県流域下水道の平成9年度国庫補助金の当初内示は、平成8年度当初内示153億3,900万円に対して159億100万円ですから、対前年比1.037%アップしています。
――整備計画の内容は
齊藤
流入汚水量の増加に対応するため、終末処理場の整備、普及率アップのための幹線管渠の整備、既存施設の老朽化に伴う機能改善整備、流域間のネットワーク化の推進、印旛沼や江戸川左岸流域下水道終末処理場の高度処理施設の建設といったところが柱になります。
今後は特に、経済的な建設工法の創意工夫によって建設費のコストダウンに努めたいと思います。
一方、平成10年度からはネットワーク幹線の建設に着手するので、さらに補助金の千葉県枠拡大に向け、あらゆる機会を通じて強く国に要望していきたいと思っています。
――県内で特に眼を引く事業に都市モノレールがありますが、その構想内容と完成予定は
齊藤
千葉都市モノレール建設事業は、昭和56年10月に千城台駅〜スポーツセンター駅間の工事から着手し、その後の開業状況は、昭和63年3月千城台駅〜スポーツセンター駅間8.0q、平成3年6月スポーツセンター駅〜(仮)千葉駅間の3.8q、7年8月千葉駅〜千葉みなと駅間1.5qとなっています。
現在、千葉駅〜(仮称)県庁前駅間1.7qについては、10年度末までの完成を目指しており、また県庁前駅から星久喜までの延伸区間については、引き続き関係機関などとの協議・調整を図っていきたいと考えています。
――現在の利用状況は
齊藤
特に、通勤通学者の多いjr都賀駅、千葉駅、さらには京葉線の千葉みなと駅三駅が結ばれましたので、1日あたりの平均乗客数は約45,000人にも上っています。県民、市民の足として確実に定着してきているといえるでしょう。
私たちとしては、今後とも安全で快適に利用できる施設として、また、交通弱者対策やラッシュ時における混雑緩和施設としても、力を入れて整備推進を図っていく方針です。

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