建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ1997年8月号〉

スペシャルと〜く

港湾・空港・漁港整備は離島住民の悲願

港湾の利便性の向上、空港のジェット化対応、漁港の係留能力アップが課題

東京都港湾局離島港湾部長 増田忠亮 氏

増田 忠亮 ますだ・ただあき
昭和17年生まれ、栃木県出身、京都大学工学部土木工学科卒。
昭和 41年 東京都港湾局入都
48年 港湾設計課主査
54年 荒川区都市開発課長
平成 3年 港湾局開発部開発技術課長(統括)
5年 東京フロンティヤ協会会場部長
7年 建設局第三建設事務所長
8年 現職
離島の住民にとって、空港は本土との足であり、港湾は物流の要であり、そして漁港は地場産業の拠点である。海によって本土と隔絶されている彼らにとって、空港、港湾、漁港は水道、電気、ガスのように、日常生活においてライフラインと同じ重要性を持つ。空路、海路で本土と結ばれていることは、彼らにとっては生活の支えであると同時に、心の支えにもなっているのである。そうした離島のアキレス腱を守る東京都港湾局離島港湾部の増田忠亮部長に、離島振興策と離島の港湾整備などについて語ってもらった。
―21世紀の離島港湾はどうあるべきと考えていますか
増田
これまでの離島港湾は、地域格差の早期解消というシビルミニマムの見地から、まず、島民の生活を支える必要最小限の生活基盤を確保するための整備を図ってきたといえます。
しかし、今後は地域産業を活性化させ、地域経済の発展、住民の生活水準の向上及び個性ある地域社会の創造などを図る「島おこし」の推進に貢献する離島港湾としての整備を図っていくことがポイントになります。
特に、現時点において漁港がなく、地場産業の振興が遅れている小離島では、水産業の振興のためにも小型船係留施設を重点的に整備する必要があります。
具体的には、今後の船舶の大型化や貨物のコンテナ化に伴う輸送方法の転換に対応するための埠頭機能・泊地機能の強化、貨物の荷上げ荷下しや荷捌き場所を確保するための既設岸壁の拡幅や延長、船舶の島内母港化を図るための防波堤の建設及び港湾関連施設用地の造成を積極的に図っていかなければなりません。
さらに、離島の経済効果や観光客に対する利便性の向上の観点から、フェリー船舶を導入するための港湾施設整備構想についても、長期的課題として検討を進める必要があります。
―財政構造改革論議の中では、とかく施設整備の必要性が問われますが、離島の港湾・空港,漁港整備の重要性についてどう考えますか
増田
行政規模や財政力が弱く、本土から遠く隔絶され、厳しい社会経済及び自然状況に置かれている離島は、現在、なお本土と比較すると様々な格差を負っています。
そうした本土との格差を是正し、島民の生活向上や産業の振興のためには、東京都の事業として離島振興法や小笠原諸島振興開発特別措置法の精神に基づき、島民の生活の安定と経済を支える港湾・空港・漁港の整備は極めて重要なものです。
例えば海路の安定的な交通輸送を確保するための港湾整備は、海上交通の確実性、定期性及び安全性を高め、離島住民の生活を支える生活基盤の整備として重要な役割をはたしているのです。
海路とともに空路の安定的な交通輸送を確保するための空港整備のうち、特にys-11型機の平成14年度リタイア後に対応する大島空港の拡張整備や、小笠原諸島の返還時以来、住民の悲願となっている小笠原空港の早期開港、及び航空機の大型化に対応する八丈島空港の拡張整備は、現時点での最優先課題とも言えます。
漁港は、離島の主要産業である水産業の根幹的な生産基盤ですから、もちろんその充実も地域の活性化を図るために不可欠なのです。
一方、これら港湾・空港・漁港などの公共施設は、島民の日常生活は言うに及ばず、災害発生時の救援活動に大きな役割を果たすことを勘案すれば、離島でのこれらの整備は極めて重要な意味を有しているるものと言えるわけです。
―島しょでは一島二港方式による港湾整備が進められていますが、この方式の内容は。また、現在の進捗状況は
増田
伊豆諸島の港湾は、水深が深く、激しい波浪条件を受けやすい地域に位置しており、防波堤の整備には、多大な費用と期間が必要となります。このため、利島や御蔵島などの小離島を除く他の島では、島を防波堤に見立てて、反対側の位置に補完港を整備するという一島二港方式による突堤式の岸壁整備を行っています。
現在、定期船を接岸させることを優先にしつつ、暫定的な施設も含めて離島における一島二港方式の港は完成しており、台風や季節風などにより季節によっては就航率が低下するものの平均して90%以上の就航率が確保されるまでになりました。
―空港・漁港整備の現況と今後の構想については
増田
伊豆諸島の空港は、大島及び三宅島では滑走路1200mで羽田からys-11型機、八丈島は、滑走路1800mで羽田からb737型機が、また新島及び神津島は滑走路800mで調布離着陸場からアイランダー型機が就航しています。
今後の空港整備構想としては、大島空港を1800mの滑走路を持つジエット化空港として平成10年度から工事に着手する予定であり、また、八丈島空港は大型機を導入するため、滑走路を2000mに延長する計画です。小笠原及び三宅島空港については、空港整備について調査・検討を進めているところです。
一方、東京都が管理する伊豆諸島及び小笠原諸島の21漁港は、地場産業の基幹的施設ですが、島しょ地域の厳しい自然条件などにより、係船施設及び外郭施設整備の進捗度は低く、十分な整備状況とはいえません。しかも、荒天時には安全に係船できる港内静穏度が確保できない状態であり、漁業活動に支障をきたしています。
こうした状況にあることから、第9次漁港整備長期計画(平成6〜11年度)では、外郭施設の重点的整備と漁船の大型化に対応させた泊地の増深、係留施設の新設及び改良を実施し、今後も継続して漁港整備を進めていく方針です。
なお、最近は漁港整備に漁港区域の水質保全及び漁港漁村の生活環境の改善を図る事集として、漁業集落環境整備事業も実施しています。

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