建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ1997年8月号〉

interview

21世紀の豊かな彩の国をめざす

県内1時間道路網構想を推進

埼玉県土木部長 小池 久 氏

小池 久 こいけ・ひさし
昭和14年生まれ、37年日本大学理工学部卒。
昭和 37年 浦和土木事務所
40年 熊谷土木事務所
43年 土木部道路維持課
47年 大宮土木事務所
51年 川越土木事務所
54年 土木部道路建設課
60年 住宅都市部都市計画課
62年 土木部道路建設課課長補佐
平成 元年 土木部道路建設課副参事
4年 土木部道路建設課長
6年 土木部参事兼道路企画課長
8年 土木部次長
9年 土木部部長
平成9年度は第九次港湾整備5か年計画の2年度目。北海道開発局は、国際貿易、国内流通拠点を形成するとともに、親水性などに配慮した多目的な港湾機能の充実、また、地震や津波に強い港湾施設の整備を推進する方針だ。北海道はその地理的優位性を生かし、北米とアジアをつなぐ物流拠点として港湾施設のグレードアップが期待されている。4月1日付で開発局港湾部長に就任した後藤七郎港湾部長に港湾整備事業の現状と課題を伺った。
―生え抜きの職員として初めて土木部長に起用されましたが、県側としては、幹部職員の省庁からの受け入れを全廃する方針なのですか
小池
そういうわけではありません。中央省庁からの出向が長く続いているポストについて、変えようということだと思います。
もっとも、地方の職員が部長になったからとはいえ、急に体制が変わるというものでもありませんが、私としては地方分権に力を入れている知事の意を受けつつ柔軟に対応しようと考えています。
―今年で5年目を迎えた土屋県政で、初めての長期ビジョンも策定されました。そのキャッチフレーズの『彩の国』にはどんな意味合いが込められているのですか
小池
特徴がないのが埼玉のイメージとよくいわれますが、よく見るといいものもたくさんあります。『彩の国』は色とりどりに良いものがあるという意味で、これらを活かしながら首都東京のベッドタウンから脱却し、県民一人ひとりが真に豊かさを実感できる、日本一のふるさとづくりへの願いが込められているのです。
東京志向からの脱却

―知事が『埼玉独立論、小が大を呑む』を出版しましたが
小池

埼玉県民には、埼玉都民といわれるようにふるさと意識がやや希薄な一面があります。知事の「埼玉独立論」は、東京志向や前例踏襲ではなく、埼玉県の豊富な人材や経済力を活かした全国のモデル県を目指そうとするものです。
そのためには、職員の意識改革と常に県民や市町村のニーズをしっかりつかみ、県民から預かっている税金を効果的に使って行政を推進するというのが知事の政治姿勢です。
土木部としても少ない予算で最大の効果を上げるためにも、地域づくりが今後の大きな課題だと思っています。そして、住民と密着している市町村が良くなれば、県も良くなるということです。その基本理念である「埼玉の新しいくにづくり」は、埼玉県に92市町村あるので、その92(くに)にかけたものなのです。
県内1時間道路網構想と人と自然にやさしい道づくり
―その理念を「インフラ整備」にどう反映させますか
小池
県内は、面積が3,800kuで、国土の1%です。三分の二が居住可能地で、残りの三分の一が山間部という状況です。
この5年間に埼玉は人口が35万人も伸びていますが、住宅の張り付きが先行してきたわけです。その意味でも新都心づくりは埼玉のへそづくりにつながりますので、都市基盤整備など土木部としても課題山積です。
ご承知のように、知事は県内のどの市町村からも主要な都市までを1時間以内で結ぶ「県内1時間道路網構想」を推進しています。そこで、遅れている道路網や交通機関の整備などを急がなければなりません。
東京志向型の南北中心だった道路網を、東西の交通網も合わせて格子状に整備し、インターチェンジまで30分で行けるようにしたいものです。埼玉県の東西の連携強化によって首都圏への流入交通の分散が図れます。特に首都圏中央連絡自動車道の整備により、八王子〜鶴ヶ島間の所要時間が平均で30分以上短縮されました。
この県内1時間道路網構想の実現は、道路交通パターンを現状の南北方向から全方向の広域交流に変えることになり、活力と自立を育むとともに、、生活の質の向上という相乗効果が期待できます。この結果、埼玉県の地域構造は従来の東京依存型から自立型へと転換が図られるものと考えています。
例えば、県西部の秩父盆地は東京からわずか70q圏ですが、主要な交通手段である秩父鉄道、140号とも袋小路なのです。これを解消するための雁坂トンネルは平成9年度完成の予定です。また、これに伴って、山間部の未改良区間にはバイパスを整備しています。国道140号皆野・寄居バイパスが完成すれば、自然豊かな秩父が一層身近かなものになり、さらに山梨に通り抜けることもでき、広域交流が盛んになります。
また、生活道路に関しては、少子化と高齢化に対応し、歩道の幅を広げたり、段差の解消、電線の地中化、道路の緑化などによって既存の道路空間の整備に努めています。また、道路の整備に当たっては、自然環境の保全・創造にも配慮した人と自然にやさしい道づくりに取り組んでいるところです。
―河川の整備にはどう取り組んでいますか
小池
埼玉県は、人口の急増によって遊水機能が低下しています。そこで、河川の整備を進めるとともに、流出抑制のため調整池などの貯留浸透施設の整備など、総合的な取り組みが必要です。
また、河川の景観に配慮するとともに、水の浄化を進め、市民が川に親しめる水辺空間の整備も急ぎたいと思っています。
地下鉄トンネルに国内初の環境用水導水管
―地下鉄トンネルに導水管の設置工事が進められていますが、これは国内初の試みですね
小池
埼玉高速鉄道線(地下鉄7号線)は平成7年に着工し、12年の開業を予定していますが、その円形断面の下部に1,200ミリの導水管を設置し、綾瀬川や芝川の浄化に役立てようとしています。
綾瀬川流域は宅地開発や中小工場の進出が進んだ結果、家庭からの雑排水や工業排水による水質汚濁が深刻になっています。綾瀬川は建設省の直轄河川の中で15年連続、水質汚濁ワースト1にランクされています。
また、水源がなく、雨水や農業用水の落とし水が低地を流れるため、流況が不安定という特性を持っています。
この事業は、荒川のきれいな水を導水して、綾瀬川などの流量を確保するとともに、魚が生息できるような水質を取り戻すのが目的です。
―山間部の土砂崩れ対策やダムの現況は
小池
急傾斜地対策は秩父地域が主になりますが、地元との調整を進めながら自然環境と調和のとれた砂防事業を推進していきたいと思います。
ダムは滝沢、浦山、合角の3か所で工事中です。浦山ダムはほぼ完成、滝沢ダムはまだ付け替え道路を整備している段階です。県営初の重力式コンクリートダムである合角ダムは、堤体が完成し湛水試験の実施を予定しています。
―真夏に渇水の心配はありませんか
小池
荒川は流域が小さく、雪も降らないので、渇水が起こりやすいのですが、利根川から水を引いたり、先ほどのダムや調節池を造るなどして影響を最小限にする努力をしています。
―最近は各自治体とも防災に力を入れていますが、埼玉県の取り組み状況は
小池
防災基地を設置するなどして、危機管理には手ぬかりなく取り組んでいます。特に、緊急時に備えていち早く情報を収集するとともに、指示命令系統の一元化を図るため、県庁と土木事務所、河川事務所をネットワークするテレビ電話会議のシステムを導入しています。現場状況の写真電送もできます。
―ところで、最近はコスト縮減など公共事業をめぐる議論が活発になっていますが、埼玉県では
小池
国では、1年で3%、3年で10%のコスト縮減を図るという行動指針や行動計画を策定しましたが、県としても、委員会を設置し、目標値の設定を含め十分に検討したいと考えているところです。
―縮減した財源を他の公共投資に回したり、施工業者に還元するなど、いろいろな意見がありますね
小池
県としては地元業者育成の使命がありますから、その辺のバランスに配慮しなければなりません。単純に単価を下げるのではなく、コンクリート殻を路盤材に活用するなどリサイクルの推進でコスト縮減を図る方法もあると思います。
リサイクルは割高になるとの見方もありますが、問題はまず安定供給に向けた量的管理をどうするかですね。

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