建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ1998年8〜9月号〉

interview

来るべき21世紀の都市形態を創造

モノレールの延伸と区画整理事業の進捗で新時代を切り拓く

千葉県都市部長 伊能楯雄 氏

伊能楯雄 いのう・たてお
昭和16年2月20日生まれ。
中央大学法学部法律学科卒
昭和40年4月千葉県事務吏員総務部総務課
58年4月商工労働部工業課課長補佐
60年4月社会部厚生課課長補佐
61年4月企画部企画課主幹
平成元年4月環境部生活環境課長
2年4月企業庁地域整備部業務課長
4年4月商工労働部経済振興課長
5年4月教育庁生涯学習部参事
6年4月商工労働部次長
7年4月総務部次長
8年4月水道局管理部長
9年4月企業庁副企業庁長
10年4月都市部部長
千葉県都市部は区画整理、住宅、下水道、公園、モノレールなど、人々の生活に密着した都市施設を整備している。区画整理では「かずさアカデミアパーク」が造成中で、モノレールは県庁前駅が完成に近づきつつある。だが、公園の一人あたり面積や下水道の普及率はまだ低く、早急な整備が求められている。この4月に着任した伊能楯雄部長に、それら都市施設の整備方針を伺った。
――県民の生活の場となる公営住宅は、高齢化社会に対応して形態もやや変わりつつあるようですね
伊能
そうです。関係機関と協力し、今後は高齢社会の進行や世帯構成の変化などに伴う住宅ニーズの多様化、地域の特性や市町村の住宅施策や福祉施策と連携した公営住宅の供給が必要となってきています。
特に県では、地域の福祉施策と連携を図った高齢者向け住宅の普及推進に努めており、シルバーハウジング・プロジェクトとして1月下旬に、習志野市実籾県営住宅で「シルバーハウジング」の建設に着手しました。鉄筋コンクリート造地上4階建て、延べ面積約2400uの規模で、高齢者用住戸を27戸、その他生活相談室、団らん室などが設けられます。
――最近は、住宅建設の財源を補うため、様々な手法がとられているようですが
伊能
例えば、特定優良賃貸住宅などは好例です。これは、民間の土地所有者などが建設する優良な賃貸住宅に対して、国と自治体が建設費や家賃減額に要する費用の助成などを行う制度です。
平成10年4月1日現在で、平成5年度の制度発足以来、住宅需要の高い千葉市、市川市などの県西部を中心に、11市において計151団地5,794戸を認定しました。
――県民が快適な都市生活を送る上で、下水道は欠かせませんが、県内ではどの程度普及していますか
伊能
平成9年3月末の下水道整備状況は全国で12番目となっており、県全体の下水道普及率は50%で、全国平均の55%に比べると低い状況にあります。現在、県下80市町村のうち39市町村で整備を実施しています。
平成8年度を初年度とする「ちば新時代5か年計画」においては、市町村の公共下水道事業を促進し、農業集落排水、コミュニティプラント、合併浄化槽などを含めた生活排水などの処理率を、平成7年度末には60%だったのを12年度末には70%以上とし、整備の実施市町村数を、平成7年度末の39市町村から12年度末には57市町村へ増やすことを目標としています。
そこで、流域関連公共下水道事業実施市町村と連携を図り、流域下水道幹線の見直しにより、人口集中地区の整備とコミュニティプラントなどの既存施設の積極的な取り組みを行っています。
また、技術者不足の市町村については、(財)千葉県下水道公社の積極的な活用を図るとともに、未着手市町村の事業を推進するため、下水道の必要性や事業着手への啓蒙を図っています。
――整備後の下水道施設は、どのように維持、管理していますか
伊能
県内には現在、印旛沼、手賀沼、江戸川左岸の流域下水道がありますが、これらについて、維持管理の基本業務は県が行い、施設の運転・保守業務については、確かな技術力を持ち、体制も整っている千葉県下水道公社に委託しています。
――一方、県民の生活にゆとりを与え、また災害時の避難場所ともなる公園は必要な施設ですが、一人当たりの公園緑地面積や今後の目標は
伊能
概況から見ると、平成10年3月末現在、県内で都市公園を有する市町村は、29市13町4村にわたり、都市公園箇所数は県立10箇所と市町村立4,358箇所で合計4,368箇所になります。都市公園面積は県立365haと市町村立2,694 haで合計3,059haが整備されており、都市計画区域内人口1人当たりの都市公園面積は5.5u/人となります。
しかし、それを全国的に比較してみると、都市公園箇所数は全国第6位で、都市公園面積は全国第9位となりますが、都市計画区域内人口1人当たり都市公園面積で比較すると、全国平均7.3u/人に対して千葉県は5.5u/人で、全国第40位にまで後退します。
今後とも人口の急増に対応するため、適切な配置計画に基づく都市公園整備が必要です。
――どのような目標で整備を進めていきますか
伊能
「ちば新時代5か年計画」では、地域特性を生かしながら、防災や高齢者などにも配慮した広域的な利用がなされる県立都市公園の整備を進めることになっています。
これに基づき、長生広域公園、八千代広域公園をはじめ8箇所を継続して整備するとともに、手賀沼自然ふれあい緑道など3箇所を新規に整備することで、計画期間内の開設面積を100haとしています。
また、街中の身近な公園として、市町村立都市公園の整備を促進することにしており、計画期間内において566箇所、開設面積750haの整備を計画しています。
これによって、5か年計画の最終年度である平成12年には、県立都市公園で518.0ha、市町村立都市公園で3,337ha、合計3,855haを確保し、都市計画区域内における人口1人当たりの都市公園面積を6.5uに上昇させる方針です。
――県民の足となるモノレールの整備も行っていますね
伊能
この事業は、都市圏で人口、産業が急激に集積したことによる慢性的な交通渋滞を解消するとともに、内陸部と臨海部を有機的に結び、通勤や通学、就業のための安定した輸送力の確保と、良好な都市生活環境の整備を目標として県と千葉市が共同事業として推進しているものです。
昭和63年3月に、千城台駅〜スポーツセンター駅間が第一期開業してから今年で10年が経過し、利用者も年々増加し、昨年の6月には乗車人員が累計1億人に達しました。
現在の営業区間は、JR京葉線の千葉みなと駅からJR総武線の千葉駅・都賀駅を経由して千城台駅までの約13.5q、15駅で、一日平均乗車人数は約45,000人にも上っています。今や県民、市民の足として定着したといえるでしょう。
また、千葉駅〜県庁前駅(仮称)の約1.7qについては、今年度末の完成を目指し、急ピッチで工事を進めています。
今後は、福祉のまちづくりを念頭に置き、高齢者や障害者の安全性、利便性を確保するため、主要駅には歩行者支援施設のエレベーターやエスカレーターを設置するとともに、阪神・淡路大震災の教訓から、より一層の耐震性の向上を目的に、落橋防止工事などを実施し、災害に強く安全で信頼性の高い施設を目指します。
一方、(仮称)県庁前駅以遠の延伸については、引き続き関係機関と、協議・調整を図っていきたいと考えています。
――県内の都市開発についてお聞きしますが、現在、常磐新線沿線の新市街地整備や「かずさアカデミアパーク」の土地区画整理事業が行われていますね
伊能
常磐新線は、東京都の秋葉原から茨城県つくば市までの延長約58.3qで、県内では流山市、柏市間の13.5qを通過しています。この沿線は、鉄道建設によって利便性が高まることで、無秩序な開発が行われる心配もあります。
そこで、乱開発を未然に防止し、良好な市街地形成を図るため、流山市、柏市にまたがる6地区約1,084ヘクタールを、鉄道と宅地を一体的に整備する「大都市圏域における宅地開発及び鉄道整備の一体的推進に関する特別措置法(宅鉄法)」に基づく一体型土地区画整理事業として、事業化を進めています。
流山市域については、1月に市街化区域の編入や、4地域の土地区画整理事業などの都市計画決定がされ、柏市域については、4月に都市計画公聴会を開催し、現在は、常磐新線沿線整備にかかる一連の都市計画について国と協議しているところです。
――学術研究都市を目指す「かずさアカデミアパーク」の進捗状況は
伊能
第1期地区については、平成9年度末の事業費ベースで約92パーセントであり、幹線道路、宅地造成、下水道などの主要工事はおおむね完成しています。
第2期については、「第2期の推進に関する基本計画」の中で、かずさアカデミアパークの発展期として位置付け、第1期地区の熟成と第2期地区の事業の推進を図る時期としています。
第2期地区の事業推進に当たっては、民間活力の積極的な導入を図るなど第1期地区の成果を継承するとともに、幅広い機能を導入することにしています。
現在、木更津市、君津市では、事業化予定地区について、事業施行者は原則として土地区画整理組合としていますが、それぞれの市が中心となり、「地権者協議会」や「世話人会」を通じて事業化への理解を深めるなど、地権者の合意形成に努めているところです。

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