建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ1998年7月号〉

interview

首都圏の台所を支える日本第2位の農業県

千葉県農林部長 齊藤市衞 氏

齊藤市衞 さいとう・いちえい

昭和15年10月14日生まれ、39年日本大学法学部法律学科卒、40年日本大学専攻科法学専攻科卒。
昭和 40年 4月 千葉県事務吏員 衛生部薬務課
60年 4月 総務部管財課課長補佐
61年 4月 土木部管理課課長補佐
62年 4月 環境部環境調整課主幹
63年 4月 都市部計画課主幹
平成 元年 4月 企画部交通計画課長
3年 4月 土木部管理課長
4年 4月 水産部参事
5年 4月 企業庁 ニュータウン整備部次長
10月 千葉市助役
8年 4月 企業庁 ニュータウン整備部長
9年 4月 都市部長
10年 4月 現職

千葉県は、北海道に次いで第2位の生産量を誇る農業王国だ。東京を中心とする首都圏という大市場を控えた食料供給基地で、耕地面積は茨城県より狭いにも関わらず生産量は多く、生産性と生産技術の高さは他県よりも抜きん出ている。齊藤市衞農林部長に、県内農林産業の概要と振興策について語ってもらった。
――千葉県の農業の概況からお聞きしますが、県内農業における主力の農産物と位置づけられているものは何でしょうか。また、全国におけるシェアは
齊藤
千葉県は、温暖な気候と首都圏に位置するという恵まれた立地条件にあります。これを生かし、農産物の種類は抱負でバラエティに富んでいます。そして、首都圏の台所を支える重要な役割を果たしています。
平成8年の統計で見ると、全国第1位の野菜をはじめとして、花や果実を合わせた園芸作物が本県の農業粗生産額の約5割を占め、畜産と米作がそれぞれ約2割となっていてバランスのとれた農業が展開されています。
野菜のほか、なし、落花生、かんしょなどが全国第1位で、農業粗生産額全体では、平成6年以降、北海道に次いで全国第2位、シェアーは4.6%となっています。
――よく農産物の価格が国際競争にあおられて低迷し、農家所得と農家経営に影響していると聞きますが、千葉県内では
齊藤
野菜などのように品目や年によって、変動の大きいものもありますが、農産物全体として見ると、価格動向は、やはり停滞または低下の傾向にあるといえるでしょう。
最近では、生鮮品である野菜も含め、農産物輸入が増加するとともに、国内農業の生産性向上などによって、多くの農産物が過剰傾向となっています。このため、産地間の競争が激しくなり、農業経営にとっては厳しい状況となっています。
――食管法改正で米の流通が自由化されましたが、これに伴う問題は
齊藤
平成7年11月の「食糧法」施行により米の流通ルートが多様化され、それまでは「ヤミ米」として扱われていた米が「計画外米」として流通したり、県外産米の増加や価格差が拡大するなど、米についても産地間競争がますます激化しています。
本県の自主流通米価格も平成8年産と比較すると、60kg当たり約2,000円も下落し、稲作経営に大きな影響を与えています。本県では、首都圏で最も早く収穫できる早場米の産地としての有利性を生かすため、8月中旬に収穫でき、コシヒカリ並みの食味を持つ「ふさおとめ」を開発しました。県産米の有利販売を目指して、今年度から本格出荷が始まり、平成12年の作付面積の目標を8,100haとして、普及推進しています。
――さらに農業収益を上げるためには、食品加工などによって付加価値を高めるという方向性もありますが、県内での取り組み状況は
齊藤
本県でも厳しい産地間競争の中で、高付加価値化は重要な課題です。そのためには優れた新品種の農産物、品質の高いもの、特色のあるもの、有機栽培のもの、食べやすく加工したものなど、多様な消費者ニーズにいかに対応していくかがポイントになると思います。
そこで県では、生産者の様々な取り組みをバックアップするため、昨年12月から「愛情いちばん・ふるさと産品づくり運動」を展開しています。新鮮・安全など消費者ニーズに対応した日本一の産地・産品づくりを進めるとともに、統一キャッチフレーズ「愛情いちばん千葉の農産物」によって県産農産物をPRし、イメージアップと販売促進に取り組んでいます。
この4月には、第1回目のふるさと産品の選定を行い、生鮮品110、加工品17の産品を「愛情いちばん・ふるさと産品」として認定しました。全国の消費者の皆さんに千葉の農産物を大いに味わっていただきたいと思っています。
――農産物の輸入自由化で輸入されてくる安価な国外農産物に対抗する方法は
齊藤
ひとつには先に触れた、多様な消費者ニーズヘの対応があると思います。輸入農産物があふれ、安全で新鮮な農産物への関心が高まっているなかで、品質など、国内産の良さを認識していただくことです。
もうひとつは、低コスト化など生産性の向上です。穀物などは、一挙に国際価格に並ぶことは至難の業ですが、生産基盤の整備などのハード面や、農地の流動化を通じた大規模化など、経営感覚に優れた農業経営体の育成を着実に進めていくことが必要です。
――産地間競争や国際競争に勝つためには、単なる価格競争ばかりでなく魅力ある商品の開発も必要だと思いますが、農産物の品種改良の取り組み状況は
齊藤
そうですね、今後とも千葉県が全国有数の農業県として発展していくために、独自の新品種の育成が重要な課題になっています。
そこで、県では平成9年度から「新品種育成強化促進事業」を創設し、農業試験場と暖地園芸試験場内に、水稲・畑作物・園芸作物の11の育種プロジェクトチームを組織し、最新のバイオテクノロジーも取り入れた研究に着手しています。
――最近の研究成果として、商品化できそうな品目はありますか
齊藤
近年、県で開発した新品種をあげてみると、水稲の「ふさおとめ」、かんしょの「総の秋」、落花生の「郷の香」、ねぎの「青葉豊」と「早風」、いちごの「春訪」、アールスメロンの「アクアクィーン」、びわの「房姫」、カーネーションの「アクアレッド」と「アクアイエロー」などがあります。
今後とも、農家の方々をはじめ、消費者の皆さんに喜ばれる千葉県独自の品種が登場してきますので、ぜひ期待してほしいと思います。
――ウルグァイ・ラウンド農業合意により、農業農村整備事業が大規模に実施されていますね
齊藤
農業は現在、農業従事者の高齢化や後継者不足など、多くの課題を抱えているだけでなく、UR農業合意により国際化が急激に進展し、変革の時をむかえています。そのため、農業・農村の体質強化を早急に図る必要があり、高生産性農業の確立と中山間地域の活性化のための事業を重点的かつ加速的に推進しています。
――事業にともなう農家の受益者負担軽減が課題とされているようですが
齊藤
農業農村整備の各種事業は基本的に補助事業で、国、県からの補助を得て実施されています。また、事業の公共性が重視され、多くの地区では国、県の補助残についても市町村が補助・助成しています。
最も多く実施しているほ場整備事業(担い手育成型)でみると、事業費の負担割合は国50%、県35%となっており、残り15%のうち平成10年度予定の市町村負担は6%なので、受益者が負担する事業費割合は9%となります。
事業には多くの地区が新規採択を希望しており、実施に当たっては、受益者の100%近い同意を得るようにしています。
負担金対策としては、農家の負担の軽減と計画的償還を目的とした土地改良負担金総合償還対策事業がありますが、県としては、平成3年度から中山間や再整備地域のほ場整備事業を中心に県の補助を5%上乗せして、受益者の負担軽減を図ってきているところです。
また、「千葉県農林事業コスト縮減連絡会議」を設置し、公共工事の建設コストの縮減を進めています。
――一方、林業の生産状況は
齊藤
素材生産量は、昭和56年の21万1千立方メートルをピークに減少し、平成7年は11万3千立方メートルと、ピーク時の54%で、生産額は21億2千8百万円となっています。生産量の樹種別内訳はスギ8万8千立方メートル、ヒノキ8千立方メートル、その他1万7千立方メートルで、スギが78%を占めています。
特用林産物の生産は、しいたけなどのきのこ類を中心に、たけのこ、わらびなどの山菜類竹材など多種にわたっており、生産額は平成7年で29億5千6百万円となっています。したがって、素材と特用林産物を合わせた林業粗生産額は、50億8千4百万円で全国34位となっています。
――林業の基盤強化のために治山・林道整備事業などが各地で行われていますが、比較的平坦な地形の県内ではどんな事業が行われていますか
齊藤
森林・林業の現状を見ると、長期的な木材価格の低迷などから、十分に手入れされない森林が増加しています。このため、生産基盤の整備を図り、森林の適正な整備と林業の活性化を促進していくことは必要です。
そこで、高性能林業機械の導入を促進して、生産性の向上、労働力不足の解消及び安全性の確保などを図るため、平成6年度に富津市の鬼泪山に、研修や各種機械の貸出を行う「千葉県林業サービスセンター」を設置しました。
県内の林道延長は、現在638qで、県土の約6割を平地が占めていますが、南部には標高が100から300メートルと、比較的低い割には谷が深く急峻な地形の丘陵が分布しています。このため、南部地域の林道の整備率はまだ目標の半分に過ぎず、今後も計画的に林道網を整備していくことにしています。
また、林産物流通、加工施設の整備を図るために、林業構造改善事業を実施しています。平成9年度から国産材の流通拠点である千葉県木材市場の移転整備を東金市で進めており、この秋にオープンします。
一方、大多喜町では加工の拠点となる乾燥、防腐などの処置を施す施設を整備しています。
――林産業も外材圧力により、産業としては成り立ちづらい状況にありますが、他産業の協力も得ながら木材需要の拡大に取り組む考えは
齊藤
戦後に造林された大面積のスギ、ヒノキ林が、順次伐採の時期を迎えます。また、間伐の推進のためにも、間伐材を含めた県産材の需要拡大を図ることが急務です。
一方、木材需要の主力である住宅建築における最近の傾向は、ユーザーの多様なニーズにより、耐久性志向、本物志向及び健康志向が高まっており、これに対応して地域で生産される木材、特に山武スギなどを利用した良質で安価で健康的な住宅を提供しようとする動きも出てきています。
このような状況の中で、県としては、単独の新規事業として、平成10年〜平成11年の2か年で、「ちばの木で住まいづくりの普及促進事業」を実施します。この事業では、県内でも特に林業が盛んな山武と安房地域で林家、森林組合、木材業者、大工、工務店及び設計事務所などが連携していくための体制づくりを進め、地域材を利用した良質な木造住宅の供給を促進します。
また、間伐材の需要拡大を図るため、治山・林道事業における県産間伐材の使用を進めるとともに、土木、土地改良などの公共事業についても、その使用を関係機関に働きかけています。

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