建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ1998年7月号〉

interview

水産業と林業振興のために多角的な戦略を実施

北海道水産林務部長 中津俊行 氏

中津俊行 なかつ・としゆき
昭和16年7月10日生まれ、岩見沢市出身、北海道大学水産学部卒。
昭和 39年 4月入庁
53年 東京事務所主査
55年 水産部国際漁業課海外漁業係長
58年 同漁政課企画係長
60年 水産部国際漁業課長補佐
61年 同漁政課長補佐
62年 檜山支庁経済部長
平成 元年 水産部漁政課参事
2年 商工労働観光部産業雇用政策室参事
3年 総務部知事室秘書課長
5年 住宅都市部次長
7年 根室支庁長
9年 現職
水産業や林業は、農業と並んで北海道においては重要な基幹産業のひとつだ。特に水産物は、少資源国であるわが国の貴重なタンパク源だが、資源管理型漁業へと移行する国際社会の潮流の中で、より高度の技術開発と生産性、そしてそれを支える基盤整備が求められる。その水産業に多大な影響をもたらすものは林業で、その振興策と森林、治山、林道整備のあり方が漁業環境を左右する。この両者は、切っても切れない両輪の関係にあり、そのバランスを取りながら総合的な政策を行う北海道水産林務部の中津俊行部長に、今年度の施策などを語ってもらった。
――今年は第3次北海道長期総合計画の初年度となりますが、水産業と林業をどう方向付けていますか
中津
今年度は「活力ある21世紀の北海道水産・林業の基盤づくりの年」と位置付け、自然との共生、産業との共存、地域との共栄の3つの基本理念に基づき、農山漁村の活性化、産業活力の創出などを図っていくという考え方が基本です。
――漁港は様々な機能が求められるようになりましたが、どんな整備を行う方針ですか
中津
第9次漁港整備長期計画に基づき、栽培漁業の進展や水産物の消費・流通の変化に対応するのはもちろんですが、新マリノベーション構想に基づく親水性にも配慮した「ふれあい漁港」の整備を計画的に進める方針です。
また、高潮や浸食などを防止し安心して暮らせる生活環境を確保するため、第6次海岸事業七箇年計画に基づき、生物・自然環境の維持・保全に配慮した海岸の整備を進めるとともに、浜中町において津波防災ステーションの整備を引き続き進めます。
さらに、漁村の特色を生かした魅力ある地域づくりに向けて、体験漁業や朝市などを中心とする「海とのふれあいマニュアル」の策定に着手し、マリン・ツーリズムを導入するほか、海洋レクリエーション拠点となる漁港海岸の整備も進めていく方針です。
――新しい海洋秩序維持のための国際的な取り決めに対応するには、栽培漁業の振興に向けて、“海の畑”の整備も必要ですね
中津
栽培漁業については、本道周辺海域の高度利用と資源増大を図るため、第4次沿岸漁場整備開発事業に基づき、大規模な静穏域漁場や湧昇流漁場の造成など沿岸漁場の造成を推進します。
また、それを支える試験研究については、道北地域の研究拠点として稚内水産試験場を整備するとともに、全道の研究データを一元的に収集、活用する「マリンネット北海道」を整備し、より高度な資源評価や海域特性に応じた栽培漁業の推進など多様化する研究ニーズに対応できる体制を構築していきます。
――漁業の後継者対策としては、どんな政策を行いますか
中津
担い手確保育成推進協議会を設置し、総合的な担い手確保対策の検討を行うとともに、漁業外からの新規参入の地域実態調査を実施しようと思います。
漁業者の育成については、北海道漁業研修所においてパソコンなどを活用した経営研修や、栽培・潜水など新しい時代に対応した技術研修を実施しています。
――水産物の国際競争に勝つための戦略はありますか
中津
輸入水産物の増加などの影響による産地価格の低迷や、多様化する消費者ニーズに対応して、産地側からの販売戦略や体制づくりの構築が必要です。そのため、流通加工拠点地域の施設整備、複数漁協の連携による販路開拓や製品開発などを支援し、「産地流通加工圏」の形成を促進しようと考えています。
特に、本年度は「北のさかな消費流通ステップアップ事業」を創設し、物流戦略として広域共同物流システムの開発や、未来の消費者となる小中学生をターゲットとした魚食普及対策に取り組むほか、東海地方の販路開拓にむけた産直販路拡大交流会の開催、外食チェーンとの提携やメニュー開発による大規模消費者へのprなどを促進します。
――諸外国との間では、相変わらず越境操業によるトラブルも見られますが、その対策は
中津
「北海道水産資源管理委員会」による的確な資源評価と漁業者のコンセンサスに基づく資源管理システムづくりを進めるとともに、沿岸漁業と沖合漁業の資源管理協定の遵守の徹底指導や漁業者自らが策定する資源管理計画を支援し、漁業者の自主的な資源管理の取組みを促進します。
また、平成9年から導入されたTAC制度の定着に向け、関係者に対する普及啓発や漁業者、漁協、道による漁獲管理体制の構築を推進します。
韓国漁船問題については、政府は、本年1月23日に韓国に対し現協定の終了を通告しましたが、これに対し韓国はトロール漁船の自主規制措置の停止を通告し、無秩序な操業を行っています。このため、関係機関との連携を図って韓国漁船の監視や漁具被害の把握を行うとともに、韓国漁船の自主規制の遵守や両国政府による200海里体制を踏えた新たな枠組みづくりについて国に要請していく考えです。
一方、道内においても、操業秩序の確立については、根室海峡周辺海域の指導・監視、ケガニ資源や浅海資源の密漁防止など重点的な指導・取締を行うほか、取締船の「北王丸」を代船建造する予定です。
――林業は、外材圧力に国産材が押されている状況ですが、どんな対策を考えていますか
中津
まず、林業の経営基盤の強化が必要であり、生産性の向上や間伐促進のため、林道網の整備や高性能林業機械の導入による生産基盤の整備を進める必要があります。そして、森林組合の広域合併などによる地域の中核的な林業事業体を育成するとともに、林業を担うすぐれた人材の育成・確保を図らねばなりません。
森林組合など林業事業体の育成や流域を単位とした林業の活性化を図るには、地域の林業事業体が自らの創意工夫を生かして行う機械・施設の整備を進めるとともに、平成9年度に策定した「広域合併推進方針」に基づく合併に向けた指導や、合併協議参加組合を対象とした間伐材の運搬経費に対する助成など、合併協議から合併に至るまでの各段階に応じた支援を総合的に行うことが必要です。
――道産材の需要開拓にはどう取り組みますか
中津
道立施設への木材使用などにより、木材・木製品の利用を推進したり、木材製品の物流効率化や技術シーズの企業への移転などによる技術力の向上を進め、木材需要の拡大に努めます。
木のすぐれた性質や効用などをprするため、「ウッドプラザ北海道」を道央圈における道産材の需要拡大の拠点施設として位置付け、「木の良さ」を周知するための展示活動や消費者への情報提供などを行う予定です。また、テレビcmなどによる道産製材のprを強化し、木材の一層の利用を図ります。
一方、木材チップの暗渠用疎水材への一層の利用促進を図るため、設計・施工事例集などによる普及啓発や、農家林家の裏山からの間伐材等を疎水材として活用するための調査・研究を行います。
さらに、公共建築物の木造化・木質化のモデルとなる「木の香りあふれる道立施設」の選定・整備を行い、木質化の可能な道立施設の整備において、内装などへの使用を促進します。
そして、道産木製品の首都圏などへの移出を促進するため、輸送方法の改善や物流拠点の設置などの調査検討を行います。
――山村生活の魅力を向上させることで、人々の関心もさらに高まるのでは
中津
現在、整備が進められている「道民の森」や「トムテ文化の森」など道立の森の整備・活用を進めるとともに、道民の財産としての道有林の利活用を推進するため、道有林内でのイベントの実施などを予定しています。
一方、生活の安全を確保することも重要で、治山事業の導入のほか、林道や防災施設、排水施設の整備などにより、山村の生活環境基盤を整備するとともに、特に今年度は「ふるさと林道」により、第二白糸トンネル崩壊に伴う迂回路の整備を行う予定です。
――森林整備や林道、治山整備も必要ですね
中津
そうです。先ほども生活の安全についてふれましたが、第九次治山事業七箇年計画に基づき、重要な機能を有する保安林の整備や山地災害の防止対策などを積極的に推進するとともに、豊かな海と森づくりを推進するため、魚場環境の保全などに重要な「魚つき保安林」の整備を行う考えです。
また、第二次森林整備事業計画に基づく林道網の整備や、森林の整備を推進します。特に、人工林の質的充実と公益的機能を高度に発揮させるため、効率的な機械作業体系確立の基盤となる林道の開設・改良などを実施します。
――水産部と林務部が合体してこの部ができましたが、それを活かした施策はありますか
中津
海の環境を保全していくことは、水産資源の持続的利用はもちろん、安全な食料の提供や快適でうるおいのある地域づくりを進めていくうえで基本となります。そこで、平成9年に「森、川、海は一つ」という観点に立って、林業や農業など各分野との幅広い連携の下、環境保全運動を進める「豊かな海と森づくりネットワーク構想」を策定しました。
本年度は、この構想を着実に推進するため「豊かな海と森づくり総合対策」として、「お魚殖やす植樹運動記念の森」の整備や活動リーダーの育成など構想推進の「人づくり」、河川周辺の森林整備や海岸付近の「魚つき保安林」の整備など「魚を育む森づくり」、砂浜域などにおいて多様な機能を持つ藻場の造成技術開発を進める「海の森(藻場)づくり」などに取り組みます。
そして、道開発局・営林局・民間団体を構成員とする「豊かな海と森づくりネットワーク推進委員会」を中心に、各関係施策の協力・連携により、森、川、海における総合的な施策の推進を図る考えです。
山と海は一体で、環境上の関連性は密接です。漁場を豊かにする森づくりとはどういうものか、水産試験場や林業試験場などで研究する必要性を、私自身も辛抱強く主張して、ようやく調査計画の検討作業にこぎつけました。今後の成果を期待して欲しいと思います。

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