建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ1997年7月号〉

interview

都市緑化にいがたフェアの成功に向けて全力

下水道汚泥リサイクルが課題

新潟県土木部都市整備局長 仲林 進 氏

仲林 進 なかばやし・すすむ

昭和15年6月25日生まれ、昭和38年東京農大卒。
昭和 38年 茨城県総合開発事務局
45年 企画部特定開発課
52年 土木部都市計画課主幹
54年 新潟県新津土木事務所主任
58年 土木部都市計画課係長
62年 都市計画課長補佐
平成 2年 柏崎土木事務所次長
4年 土木部公園緑地室長
5年 柏崎土木事務所長
7年 土木部都市計画課長
8年 土木部都市整備局長
新潟県は、日本海沿岸のほぼ中央に位置し、広大な県土と豊かな自然に恵まれ、現在では、空港、高速道路、新幹線などの整備が進み、環日本海圏の中核として21世紀に向け大きな飛躍が期待されている。こうした地の利を生かし、県土木部都市整備局はやさしさと活力に満ちた「ニューにいがた」を行政目標とし、豊かな環境の保全と快適な都市・生活空間の創造を強力に進めている。また、平成10年には都市緑化にいがたフェアの開催も控えており、その準備が着々と進められている。仲林進局長に、県内のまちづくりと都市緑化フェアの取り組み状況などを語ってもらった。
―公営住宅の供給状況は
仲林
県内の公営住宅の建設実績は、平成7年度末までで2万7,255戸となっています。昭和40年代の後半から50年代の前半にかけては、年間700戸から1,000戸という量的に高い水準で住宅供給を行ってきましたが、60年代からは年間200戸から400戸の間で推移しています。
平成7年度末時点での管理戸数は、県営住宅6,482戸、市町村営住宅1万2,669戸で、合計1万9,151戸ですが、そのうち40年代以前に建設された老朽・狭小のストックが50%以上を占めており、建替事業の推進が重要な課題となっています。
平成5年度には国の「公共賃貸住宅建替十箇年戦略」の趣旨を踏まえ、本県の公共賃貸住宅の居住水準の向上を図ることを目的として「新潟県公共賃貸住宅建替促進計画」を策定しました。
しかしながら、先の阪神・淡路大震災において、多数の老朽住宅が被害を受けており、これらのことを踏まえて建替計画の内容見直しを図っているところで、今後、中層耐火住宅の建替にも着手したいと考えています。
また、平成8年度から第七期住宅建設五箇年計画が始まったところですが、この中では「ゆとりの住まいづくり」、「良好なまちづくり」、「人にやさしい住まい・まちづくり」、「地域にあった住まい・まちづくり」、「雪国の快適な住まい・まちづくり」の5つの柱を掲げています。
この計画では、5年間の建設戸数は11万6,500戸を見込んでおり、これはほぼ前期の実績に匹敵します。また、公的資金による住宅建設としては、公営住宅1,600戸、改良住宅100戸、特定優良賃貸住宅1,300戸、住宅金融公庫の融資により建設する住宅4万2,600戸など、合わせて5万3,300戸となっています。公営住宅は前期計画より減っていますが、これは特定優良賃貸住宅に置き替わっている部分があり総体量の減少とは言い切れません。
県内の市町村では、過疎化の問題を抱えているところも多く、定住促進のため、公営住宅と併せて特定公共賃貸住宅の供給も進みつつあります。
なお今後は、公営住宅整備事業等に係る国の予算が当分の間、逼迫した状況が続くと予想されます。このため、政策効果が高い事業について鋭意推進を図ることにし、執行に当たっては、高齢化、防災、省工ネ、コスト低減、適切な発注などの課題に的確に対応したいと考えています。
――下水道の普及率は十分ですか
仲林
県の下水道は、大正13年長岡市で着工したのが始まりですが、戦争で一時中断し、戦後は各都市とも災害復旧や産業基盤整備に追われるという状態でした。一方、信濃川や阿賀野川など水量が豊かな大河川と、広大な平野に恵まれ、し尿の農地還元が容易であったことから下水道に対する認識は低く、下水道整備の立ち遅れが生じてしまいました。
このため、現在、5流域8処理区の流域下水道と94市町村で公共下水道の整備を進めていますが、平成8年度末の普及率は34%と、全国平均に比べてかなり低い状態になっています。
このため、流域下水道は平成3年度着手の阿賀野川流域下水道(新井郷川処理区)と4年度着手の西川流域下水道(西川処理区)の早期供用開始を図るため、処理場と幹線管渠の整備を進めています。
公共下水道は、主要都市の新潟市、上越市、柏崎市、三条市などの市街地での面整備を促進し、一方、町村では供用開始と面整備が進むと思いますので、第8次下水道整備五箇年計画の最終年度である平成12年度末には、普及率は45%程度となる見込みです。
――最近は下水道機能の多角化や、資源リサイクルの取り組みも進められ始めましたね
仲林
県では、以前から下水道の施設や資源を利用した積雪対策下水道事業を進め、現在までに十日町市、小千谷市、湯沢町なとで雨水渠を利用した流雪水路や消雪パイプヘの処理水の活用などを実施しています。
今後は、処理場を利用した市街地でのアメニティの創出、下水道の普及啓発などを目的とした情報発信基地や、緊急時の防災基地としての整備、また管渠を利用し光ファイバーを敷設し、高度情報社会に対応した下水道施設など、管理の効率化、高度化を図る必要があると考えています。
一方、下水処理水は貴重な水資源と考えていますので、放流河川の環境や水利用に応じた処理を行っていますが、将来は清流の復活など直接的に循環再利用するシステムの確立が必要だと考えています。
汚泥リサイクルの取り組みは、汚泥を肥料として有効利用するための調査や、道路法面の緑化基盤材として活用する試験施工を行っていますが、7年度は発生量の10%を肥料として有効利用している状態です。
今後は、汚泥を広域的に処理する計画で焼却・減量し、焼却灰を建設資材などへの有効利用を図る予定です。
――公園整備の現況は
仲林
新潟県は広大な県土と多様な地勢に加えて素晴らしい自然環境にめぐまれているのですが、都市部の緑化や都市公園の整備が全国の整備水準に比較して遅れているのが現状です。
こうしたことから、県では都市緑化の推進を県政の重要課題として位置づけ、その整備促進に努めることとし、「新潟県都市公園等整備五箇年計画」を策定し、都市公園などの整備を計画的・積極的に推進しているところです。
量的に見ると、都市公園は平成7年度末で一人当たり6.7uで「第2次新潟県都市公園等整備五箇年計画」の最終年の平成12年度末には、国の「第6次都市公園等整備五箇年計画」の目標9.5uを上回る10.0uを目標にしています。
現在、県が整備を進めている都市公園は、新潟県立鳥屋野潟公園、新潟県立紫雲寺記念公園、大潟県営都市公園、奥只見レクリェーション都市公園、そして新潟県都市緑花植物園の5つですが、特に新潟県立鳥屋野潟公園と新潟県都市緑化植物園は、平成10年に開催される「第15回全国都市緑化にいがたフェア」の会場に予定しています。これら県営公園と連携しながら、市町村においても現在19市町村27か所において、街区、地区、近隣、総合公園などの整備を進めています。
また、新潟県では都市緑化を積極的に推進するため、平成7年度に「新潟県緑化推進計画」を策定し、市町村が主体となって、個人や企業なども含めた都市緑化の普及を進めるとともに、21世紀初頭までに市街地の緑比率30%をめざして、都市緑化を推進することにしています。
――第15回全国都市緑化にいがたフェアは全国持ち回りで行われていますが、県としてはどんな効果を期待していますか
仲林
確かに緑の国体といわれるこのフェアは、毎年全国持ち回りでで開催されているものですが、にいがたフェアは「創ろうふれあう緑、広げよう明日の地球へ」を開催テーマに、県民の緑化に対する意識を高めるとともに、21世紀に向けた新たなライフスタイルの創造を図るため、県民一人一人が身近な緑に触れ、その大切さを理解していただくために開催するものです。そのため、このフェアが一過性のイベントでなく、その成果が将来にわたって承継されて行くことを狙いとしています。
にいがたフェアは、平成10年8月1日から10月18日までの79日間、新潟市の県立鳥屋野潟公園と新津市の県都市緑花植物園(仮称)を主会場に開催し、期間中の入場者は100万人以上を見込んでいます。
フェアの内容については、多様な花と緑にあふれた花壇やパビリオン群などに包まれた会場の中で、「国際性」、「やさしさ」、「資源と環境への配慮」などをキーワードにしながら「新潟らしさ」が感じられるものにしたいと考えています。
――具体的な構想は
仲林
具体的には、国際性のあるシンポジウムの実施や、身体などに障害のある人が安心して来場できるような会場づくりと運営、リサイクル資源の多用と設置施設の再利用、「米どころ新潟」をイメージさせるハサ木並木の設置など、随所に新潟らしい特色を出して行く予定です。
また、会場が2カ所になるので、新潟会場については県立鳥屋野潟公園の広がりと水辺空間を活かした巨大な緑の回廊を持つゆとりある会場づくりを行ない、新津会場では整備を進めている全国有数の温室を有する県都市緑花植物園(仮称)を活かした会場づくりを行なって行く予定です。
平成8年度に実施計画を策定し、平成9年度から広報宣伝や出展勧奨、会場整備など本格的な準備作業に着手したところですが、このフェアを成功させるためには新潟県内だけでなく、全国各地からできるだけ多くの方々に来場・参加していただくことが必要です。
幸いにして新潟県は、新幹線、高速道路、空路などの高速交通体系も整備されており御来場いただくには非常に便利な所です。皆様にはぜひ「にいがたフェア」へお越しいただきたいと思います。

HOME