建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ1997年7月号〉

interview

広域国際交流拠点の形成に港湾の役割大きい

北海道開発局港湾部長 後藤七郎 氏

後藤 七郎 ごとう・しちろう

昭和19年10月4日生まれ、北海道大院修。
昭和 47年 土試港湾研究室主任研究員
50年 運輸省港湾技術研究所設計基準部研修資料課長
54年 運輸省第4港湾建設局海域整備課長
56年 樽建小樽港湾所長
59年 局開発調査官
60年 局港湾計画課長補佐
62年 局港湾計画課港湾企画官
63年 局開発調整課開発企画官
62年 局港湾計画課港湾企画官
平成 元年 函建次長
4年 樽建次長
7年 庁港政課長
9年 現職
平成9年度は第九次港湾整備5か年計画の2年度目。北海道開発局は、国際貿易、国内流通拠点を形成するとともに、親水性などに配慮した多目的な港湾機能の充実、また、地震や津波に強い港湾施設の整備を推進する方針だ。北海道はその地理的優位性を生かし、北米とアジアをつなぐ物流拠点として港湾施設のグレードアップが期待されている。4月1日付で開発局港湾部長に就任した後藤七郎港湾部長に港湾整備事業の現状と課題を伺った。
――2年振りの開発局勤務となりましたね
後藤
私が開発庁にいた時、第七次空港整備計画、第九次港湾整備計画の策定時で計画と予算面を担当していましたが、こちらに戻って今度は実施する立場になりましたね。楽しみな半面、責任の重さを感じています。
北海道がこれからどう生きのびていくのか、置かれている環境は厳しいと思います。いま東京で次期の総合開発計画を策定中ですが、その中で検討されている北海道の地理的特性を生かした広域国際交流拠点の形成は私たち港湾部と非常に関係が深いものです。
苫小牧港に待望国際コンテナターミナルが始動
最近の重要港湾は国際化、コンテナ化を進める方向にあります。北海道では国際化は以前から言われてきたことです。いまアジアが経済的な成長を続けていますが、中でも発展地域が上海から次第に北上し旧満州の中国東北部も有望株で、北海道との関係も深まると個人的には考えています。アジアと北米との経済交流が活発になれば、北海道も含む北東アジアがアジアの経済センターになることも視野に入れなければなりません。
そこで道内企業が国際競争力をつけるには、物流コストの削減が一つのポイントになります。2万トンと5万トンの船舶では、物流コストにかなりの差が出ます。
したがって大型岸壁の整備が急務です。北海道には、これまで−14m以上の公共岸壁はありませんでしたが、4月21日に苫小牧西港に4万トン級大型コンテナ船に対応できる道内初の水深14m国際コンテナターミナルが完成しました。ただ前面の水深が12mなので、暫定使用なのです。航路が掘り終るのがおおむね平成13年なので、その後14m級の船が入ってくると、その波及効果は大きいと思います。
いま道内のコンテナ貨物の6割は東京港などを経由しているので、どうしても割高になります。東京から北米と東京から苫小牧に運ぶコストはあまり変わらないのです。「足腰の強い」北海道をつくるためにも小樽港、函館港、釧路港などで水深14mの大型岸壁の整備を急ぎたいと思っています。
9年度予算では釧路港の−14m岸壁、紋別港の−12m岸壁の設計などの関係予算が認められたところです。留萌港のフェリー就航についても地元が自ら需要調査を行うなど非常に熱心で、あと一歩というところまできているのではないしょうか。私としても大いに期待しています。
小樽港の大型公共岸壁が完成へ
――平成9年度の予算規模についてはどう評価しますか
後藤
本年度の全国港湾整備事業費は、事業費ベースで6,723億3,100万円ですが、このうち北海道分は756億3,000万円。全国シェアは11.2%になりました。
北海道開発局が実施する直轄事業は659億700万円、港湾管理者等が実施する補助事業が97億2,300万円となっています。新規事業としては、釧路港西港(第四埠頭地区)で穀物、飼料などを取り扱う−14m岸壁、紋別港(第三埠頭地区)では林産品、穀物、石炭を取り扱う−12m岸壁の整備に着手します。また、根室港では大規模地震発生後の避難者、緊急物資の海上輸送を確保するため耐震性を強化した岸壁(−5.5m)の整備に着手します。
一方、完成事業としては、小樽港に原木や農水産品を取り扱う多目的大型公共岸壁、鬼脇港には離島と本道を結ぶフェリー航路開設のためのフェリー岸壁(−6m)が完成の運びです。
耐震強化岸壁の整備が急務
――耐震強化岸壁の整備も大きな課題ですが、今後の整備方針はどうなっていますか
後藤
耐震強化岸壁は十勝港に1バースしかありませんが現在、奥尻港で耐震強化岸壁を整備中で早期完成を図るとともに、引き続き物流活動の活発な重要港湾や離島港湾で耐震強化岸壁の整備を実施し、地域の防災機能の向上をめざします。
特にフェリーの就航している離島は、フェリーがその地域の生命線ですから耐震強化岸壁がどうしても必要です。留萌港でも耐震強化岸壁の整備、奥尻港については津波対策にも考慮した防波堤の整備を推進します。
運輸省は昨年12月、『港湾における大規模地震対策施設整備の基本方針』をとりまとめ、また、4月にはこの方針に基づき『緊急物資輸送に対応した耐震強化岸壁の整備港湾及び必要施設量』を発表しました。
北海道においても、これらの方針に基づき耐震強化岸壁の整備を進めていくことにしています。方針は、北海道の港湾においては、重要港湾以上のすべての港湾および離島とその対岸において耐震バースを2010年までに整備することとしており、奥尻港など緊急性、重要性の高い港湾から順次整備を促進していきます。
――新千歳空港は7次空整で滑走路を現在の3,000mから3,500mに延長することになりましたが、ほかの道内の空港には、どのような計画がありますか
後藤
地域拠点空港である新千歳空港は「安定運航の確保等空港の高質化を図るため滑走路延長を行う」とされており、関係機関等とも調整しその早期具体化を図ります。このほか開発局が整備を担当する空港には第2種空港の稚内、釧路、函館及び共用飛行場の丘珠空港があります。
丘珠空港はYSリタイヤ後もプロペラ機による路線維持を図るために必要な整備について検討の上、整備をすることにしています。
稚内空港は就航率を上げるため横風用の滑走路整備の要求をしましたが、費用対効果の面などから難しく、今後2年ぐらいで調査し、次善の策を検討することにしています。
釧路空港は滑走路を2,300mから2,500mに、函館空港は滑走路を2,500mから3,000mに延長整備を引き続き行います。
港湾整備は地方分権を先取り
――港湾のPRの重要性が再認識され始めましたね
後藤
数年前の財政審議会で港湾がCランクになったことがあります。Cランクは予算の抑制対象となります。これは、われわれにも反省点があると、ある雑誌に書いたことがあります。私たちはこれまで、ただ「施設を造ればいい」という気持ちが強かったと思います。国民の税金を使って造るわけですから、港湾の利用について広く国民に知ってもらう努力を怠ってはならないと思います。
PRは単なる宣伝ではなく、「港づくり」は国民の生活に直結していることを理解していただき、港湾整備に対して国民の側から注文が出てくるようでなければ本格的な港湾整備とはいえないので、ぜひそうありたいと考えています。
港湾整備は地元から盛り上がってできる仕事のはずです。港湾管理者は地元の市町村長ですし、その意味では地元主導ですから、地方分権にふさわしい仕事だと思います。
――港湾行政展開の基本姿勢として投資の効率化がうたわれています。昨年12月、運輸省は『効率的・効果的港湾・海岸整備のための行動指針』をとりまとめましたが、この点についてどのように考えていますか
後藤
現在、公共事業に対する厳しさが増してきています。財政状況が厳しい中で、公共事業全体について効率化・重点化、さらには事業の透明性や投資効果が問われています。港湾についても効果の現れない港湾について無駄な整備との批判を受けている例があります。
こうした中で示された行動指針は、計画策定から施設の利用にまで踏み込んでおり、今後の港湾の開発・発展のためには重要で、私としてもこの指針に沿った行動を進めていく必要があると考えています。
しかし、この指針のなかにある投資効果の高い計画や重点化施策の推進などは、地方の港湾にとっては必ずしも追い風となるものではないことも事実です。
今後、港湾の進む方向がこのような流れにあるとすれば、北海道の港湾がより国民に理解してもらうためには、港湾の開発効果を具体的に訴えるとともに、港湾の利用の促進をこれまで以上に図っていく必要があると考えます。 

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