建設グラフインターネットダイジェスト

<建設グラフ97年3〜4月号>

interview

人流、物流の要となる道路整備に重点

豊浜トンネルは山側ルートに決定

北海道開発建設部小樽開発建設部長 熊谷勝弘 氏

熊谷勝弘 くまがい・かつひろ

昭和20年生、45年北海道大院修。
昭和48年札建道路建設課橋梁係長、51年土試舗装研究室副室長、52年建設省計画局国際課長補佐、53年ケニア日本国大使館二等書記官、54年ケニア日本国大使館一等書記官、56年局道路計画課付、58年局道路建設課長補佐、61年室建室蘭道路所長、63年釧建次長、2年札建次長、3年局道路建設課長、5年局開発調整課長、6年稚建部長、8年7月現職。

豊浜トンネルの崩落事故で厳しい対応を迫られたのが現地の小樽開発建設部。本格的な復旧ルートを、山側ルートに決定し、いよいよ9年度から着工に入るべく準備を進めている。稚内開発建設部長から就任した熊谷勝弘部長は、惨状を振り返りながら「遺族の方々との補償問題にも誠意をもって対処したい」と語る。事故の影響で、夏場は観光客の足が遠のいたが、同部長は「管内には、まだまだ明るい材料もある。基盤整備を担う立場としてそれを有効にバックアップすべく、流通の要となる道路整備に力を注ぎたい」と語っている。

遺族への対応に誠意をもって
――稚内から転勤されてきていかがですか
熊谷
何といっても豊浜トンネル事故を通じての教訓を忘れることはできません。あのような悲しい事故が二度と起こらないように万全の対策で取り組んでいるところです。
昨年末には、豊浜トンネル復旧工法検討委員会の報告に基づき、トンネルの復旧ルートが山側ルートに決定されました。山側ルートが選択されたことにより、トンネル延長は2,200mとなります。
すでに既存路線の応急復旧は終わり、通行が可能となっていますが、これをそのまま本格的に復旧して使用するとすれば、工事中は長期にわたって通行規制しなければなりません。また、コンクリート部分が大きくなるので景観上、好ましいとはいえません。何よりも、遺族の方々にとっては、通る度に事故を思い出させる現場を通るのはやりきれないでしょう。
そのご遺族の皆さんとの間での補償問題もあります。こうしたことに誠意をもって対応することが第一の課題になると思っています。
――管内の現状と将来展望については、どう捉えていますか
熊谷
後志管内は古い歴史があり、産業や文化の塾度が高い地域ですから、将来に向けて明るい材料もあると思います。
食糧危機が叫ばれていますが、農業を見ても水稲から畑作、酪農、果樹まで多彩な顔を持っています。管内としてはこれは大変な強みです。漁業にしても育てる漁業などに漁家の皆さんの意気込みを感じます。
もう一つの産業として観光があります。ニセコ、積丹など観光資源に恵まれていますから、国際的な交流の中でいろいろな人を呼び込める要素があります。
したがって、基盤整備を通じて地域活性化のためにどんなお手伝いが出来るかが当面の課題だと思っています。
――年間の事業費規模と重点事業は
熊谷
平成8年度は443億4,600万円で、道路事業が全体の6割を占めています。次に港湾事業が107億円、農業農村整備が43億円、漁港漁村整備が22億円、治水が16億円となっています。
いろいろな産業の基盤整備の要(かなめ)は人流、物流で、これは道路整備につながります。他の地区に比べて山間部が多いので、今後は高規格道路の整備が求められてくると思います。したがって、小樽開発建設部としては、特に道路整備と防災事業に力を入れていきたい。
波及効果大きい229号・337号の開通
――29号が開通しましたが、さらには銭函バイパスの完成など小樽周辺の交通網がかなり整備されてきましたね
熊谷
お陰様で229号は11月1日に開通の運びとなり、開通式では地元の歓迎ムードを感じました。
豊浜トンネル事故のあと、229号は危険でないかと心配する声があり、昨年の夏場は観光客が激減しましたが、われわれとしては危険防止の対策に万全を期して取り組んでいますので、大いに活用されることを願っています。
――337号についてお聞かせ下さい
熊谷
千歳市を起点に長沼町、江別市、当別町、石狩市、札幌市を経由して小樽まで約80kmのルートです。道央圏を環状的にルートが設定されていますので、将来に向けて石狩、後志にかかわる重要な幹線道路に位置付けられると思います。
石狩湾新港と小樽市が銭函を経由して結ばれたことは経済的にも文化的にも意義は大きい。直接的には337号と5号、札樽自動車道銭函ICを結ぶ銭函高架橋(銭函バイパス)の完成によって渋滞解消に向けたステップになりました。開通式には小樽市長も参列され、大変喜んでおられました。
――そのほか管内の事業概要をお聞かせ下さい
熊谷
年間450億円の事業費の中で道路は、229号の災害防止対策、国道5号桂岡から張碓までの4車線化、393号の不通区間の解消が当面の重要課題になります。5号の塩谷の拡幅にも取り組んでいます。
河川事業の直轄では、尻別川を担当しています。環境保全に考慮した事業を展開しています。
港湾は石狩湾新港、小樽港、浜益港を重点的に静穏水域の確保、大型コンテナ船が入港できるよう岸壁の整備を推進しています。港とのアクセスを考えた道路整備と一体で取り組むことが必要です。
――将来的には小樽港の臨港道路の整備も視野に入れていますか
熊谷
築港地区で小樽ベイシティー構想が具体化していますが、将来、札幌周辺や道外からの観光客の入り込みが相当増えることが予想されていますので、高速道路やjrだけでは対応しきれません。いずれは湾岸道路を整備する構想が出てくるでしょう。
――農業関係では
熊谷
最も力を入れているのが、赤井川村で推進している農業専用の落合ダムの整備です。平成12年に完成の予定です。この地区は野菜畑作地帯ですが、かんがい期降雨量が460mmと少ないうえに傾斜地で保水力に乏しいため、生産性が低いのです。このため、600haの畑地かんがいを目的に平成元年に着手しました。
――地元自治体や建設業界への要望や提言は
熊谷
厳しい財政状況を反映し、公共投資に対して世論の批判があります。また、外国企業の参入、入札制度の見直しなど時代の変化に対応した経営体制を取らなければ生き残れない。技術力の向上などはもはや当然のことといえます。

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