建設グラフインターネットダイジェスト

<建設グラフ97年1月号>

interview

管内自治体とのコミュニケーションを密に

名寄市内の流雪溝にいよいよ着手

北海道開発建設部旭川開発建設部長 吉田紘一 氏

吉田紘一 よしだ・こういち

昭和20年生まれ、44年室蘭工大院終了。 45年土木試験所構造研究室主任研究員、48年網走開建北見道路工事課計画係長、50年旭川開建道路第1課長補佐、52年札幌開建札幌道路第1工事課長、55年土木試験所基礎工研究室副室長、58年同構造研究室長、62年稚内開建次長、平成元年留萌開建次長、3年局情報管理室長、4年局機械課長、5年建機所長、7年留萌開建部長、8年7月現職。

本道第2位の旭川市を中心に、道北一円の開発行政を担っている旭川開発建設部の新しい部長に就任した吉田紘一氏にご登場いただいた。管内24の市町村は、さまざまな地域の課題を抱えており、吉田部長は『地域の特性を念頭に置いて、それぞれのニーズに応じた都市基盤の整備を推進したい』と語る。旭川開発建設部が推進する各種事業の進展ぶりを聞いた。
――就任の抱負をお聞かせ下さい
吉田
前任地の留萌開発建設部と比べて、旭川開発建設部は所管地域の人口も、私たちの事業量も多い。管内24市町村はそれぞれ地域の特性があるので、そのことを念頭に置いて事業を進めていきたいと思っています。
――平成8年度の予算規模は
吉田
本年度の事業費は800億6千8百万円、前年度当初に比べて8.2%増となりました。
事業別では、治水事業が259億1千1百万円(9.1%増)、道路整備事業349億5千万円(3.2%増)、農業農村整備事業192億7百万円(17.4%増)となっています。
交通網の整備に全力
――高規格幹線道路の整備が進められていますが、道路整備の現況は
吉田
管内は地理的にも旭川を中心に本道の交通の要衝になっていますから、札幌に通じる道路をはじめ、稚内や網走、富良野から帯広へ向かうルートなど各路線へ通じる重要な位置を占めています。特に高規格幹線道路の旭川・紋別自動車道は北海道縦貫自動車道にも接続し、網走へ抜ける道路でもあり、極めて比重の高い事業となっています。
旭川開建としては、当路線のうち『旭川愛別道路』(10q)、『愛別上川道路』(17q)、『上川上越道路』(18q)、『上越白滝道路』(18.9q)の全線で事業化しています。『上越白滝道路』は平成2年度より、『旭川愛別道路』は5年度より工事を促進しており、『愛別上川道路』と『上川上越道路』は平成8年度より用地取得を進めていきます。
一般国道40号線の名寄バイパス延伸(7,000m)は今年、調査設計に着手します。国道40号は、旭川市と稚内市とを結ぶ地域の産業経済活動に重要な役割を果たしており、特に名寄市は道北圏の交通の要所になっています。
峠の線形改良や雪害などによる危険個所を解消することにより、交通の高速性・安全性・走行性を確保できる規格の高い道路を整備し、縦貫自動車道と名寄バイパスとも連絡し効率的な利用が図られます。
――昨年は銀河トンネルが待望の開通しましたが、管内で最も長いトンネルのため、防災システムが充実していると聞いていますが
吉田
銀河トンネルはそもそも、昭和62年6月に発生した大規模な滑落事故が契機となって建設計画が具体化しました。
トンネルには非常電話、火災検知器、水噴霧装置、消火栓などを設置しており、万が一事故や火災が発生しても拡大防止、二次災害防止に万全の防災システムについて整備を進めます。
忠別ダムは15年度に完成
――ダム事業では、忠別ダムの工法が注目されていますね
吉田
このダムはコンクリート部とフィル部からなる複合ダムで、完成すれば複合ダムとしては日本一の規模になります。工事はこれから堤体にかかります。平成15年度完成をめざしており、その後、2年間ほど試験湛水などを経て供用開始となります。
一方、サンルダムは天塩川の支流サンル川に平成5年度から建設を進めている多目的ダムで、洪水調節のほか名寄市及び下川町への水道用水の補給、発電などを目的としており、型式は重力式コンクリートダムです。今は用地取得などの段階で工事の本格化にはまだ数年かかる見通しです。
――牛朱別川の分水路建設事業も地元の期待が高まっていますが
吉田
牛朱別川の下流区間は旭川市街地のなかで最も住宅が密集している地域ですが、川幅が狭く、現在の河道では旭川市街地として必要な治水安全度の確保が難しいのが現状です。
分水路事業は、上流の永山地区で牛朱別川の洪水を石狩川本川に流す牛朱別川分水路を建設しています。つまり上流で石狩川に合流させる、河川の切り替えによって地域の安全度が飛躍的に向上されます。工事は順調に進んでいます。
――管内は農業が基幹産業と思いますが、国際化に対応した農業農村整備事業についてはどのようにお考えですか
吉田
管内は道内有数の米どころですが、南部は米作のほかに野菜づくりや玉ねぎ、ニンジンなどの畑作が盛んです。新しい農業に対応できる基盤整備の推進が当面の大きな課題と思っています。
メインの事業は国営かんがい排水事業、次いで国営の農用地再編開発事業という形になっています。
――管内は地盤的に水分を多く含んでいるのでしょうか
吉田
むしろ水の使用量が増えてきているので、供給しようということです。現在、建設中のペーパンダムはほぼ完成に近づいているので、用水路を整備して水の供給量を増やす計画です。
名寄市街に流雪溝を整備
――平成8年度の主な新規事業は
吉田
名寄市街の流雪溝です。旭川、士別でもすでに導入していますが、管内は気温が低いので、雪を流す水の供給に難点があって、技術的には難しい面があるのです。
名寄の場合は、市街中心部の国道40号に延長1,500mの融雪溝を設置し、沿道住民の協力のもとに安全かつ快適な道路空間、歩行者空間を確保するのが目的です。この事業によつて“雪のない街並み”が実現し、冬期の交通安全確保に大きく貢献できます。工事は平成11年度に完成の予定です。
――地元の自治体に何か要望や提言があればお聞かせください
吉田
管内は24市町村があり、連絡会を通じて開発行政に対する地元の要望を聴く機会を設けています。
私たちも市町村とのコミュニケーションに努めながら、地元のニーズをつかむようにしていますので、忌憚なく意見、要望などを聞かせて欲しいと思います。

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