建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ1997年5・6月号〉

interview

ひとを中心とした新たな社会システムの創造

千葉港の商業港的機能を充実

千葉県土木部長 山根一男 氏

山根 一男 やまね・かずお

昭和22年 2月27日生まれ、広島県出身。
46年 3月、東大大学院工学系研究科土木工学専門課程修了。同年、建設省に入省。建設経済局建設業課建設専門官、道路局地方道市町村室長、国土庁計画・調整局調整課長、和歌山県土木部長などを経て、平成8年4月から現職。

平成8年度にスタートした『ちば新時代5か年計画』。その基本理念は、『まち』の安全性や利便性の一層の向上、『環境』と調和した社会、『福祉』や『文化』を重視する社会づくりなど、『ひと』を中心とした新たな社会システムの創造を目指している。キーワードは県政における各種施策の総合化と高度化だ。具体的には『福祉・文化』、『環境』、『まち』、『産業』の各分野において県民のニーズに応じてすべての分野にまたがり施策を横断的に展開(総合化)することと、時代の変化に応じてそれぞれの施策の深化・拡大(高度化)することである。 21世紀の新たな千葉づくりに向けて、沼田県政は県内を東葛飾北部ゾーン、印旛ゾーン、湾岸ゾーン、かずさ・臨海ゾーン、千葉東部ゾーン、南房総ゾーン、香取・東総ゾーンの7圏域に分け、『千葉新産業三角構想の推進』、『魅力あるリゾートの形成』、『交流・連携を強化する道路整備』、『国際化に対応した港湾・空港の整備』、『地域文化の創造』、『総合的な福祉施策の展開』―など32の施策課題(戦略プロジェクト)を掲げている。 そこで、これら32の政策課題の多くにリンクする県土木行政の旗振り役である山根一男土木部長にご登場いただき、当面する重要施策の展望などについてインタビューした。

■待望の東京湾横断道路平成9年度内完成へ 千葉県と神奈川県が陸続きに

県都1時間構想、高速道路アクセス30分構想
―今年は待望の東京湾横断道路がいよいよ完成します。県にとって、その波及効果は計り知れませんね
山根
そうですね。平成9年度中に完成し、川崎市と木更津市が15分で結ばれることになります。西側から見ると、これまで千葉県は「東京の向こう側」というイメージを持たれていましたが、東京湾横断道路によって神奈川県と千葉県が実質的に陸続きになるので、様々な意味でインパクトは大きい。
県では、千葉県の半島性を解消し、県土の均衡ある発展を図るうえで不可欠な幹線道路網の要と位置付けています。
―これを核に、県内でも道路網整備にも弾みがつくのでは
山根
現在、高規格幹線道路や地域高規格道路などを骨格として、県内の主要都市から県都・千葉市まで1時間で行ける「県都1時間構想」と、県内のどこからでも最寄りの高速道路インターチェンジまで30分で行ける「高速道路アクセス30分構想」を推進しています。
東京湾横断道路の完成で、今後はそうした道路網整備にも弾みがつくものと期待しているところです。
東京湾横断道路と連絡する首都圏中央連絡自動車道は首都圏に直結し、千葉県にとっては縦貫道路的な役割を果たします。このうち茂原―木更津間はすでに事業に着手しており、茂原―成田間では基本計画が決まり、ルートを固めつつあります。
東京湾口道路や、交通量が多く、かなり混雑している東京湾岸道路を補完する第2東京湾岸道路も早急に整備する必要があります。これらは道路整備の長期戦略として、圏央道とともに大きなポイントになります。昨年、都市計画決定をみた東京外かく環状道路の整備推進も大きな課題です。
このほか、地域高規格道路として銚子連絡道路、茂原・一宮連絡道路は、自動車専用道路として事業化に取り組みます。
―県では産業振興に向けての多様なプロジェクトが進められていますが、その実現の上でも道路などの基盤整備は欠かせませんね
山根
そうです。千葉新産業三角構想や地方拠点都市、房総リゾート地域整備構想など、県が推進している各種プロジェクトを支援し、その効果を県内全域に波及するために関連する道路整備が急務です。
したがって、千葉県は道路整備に力を入れていかなければなりません。
幕張新都心、かずさアカデミアパークに新産業を創造
―新産業三角構想の具体的な内容をお聞かせください。
山根
産業活動のグローバル化、高度情報化の進展など時代の変化に対応し、新たな産業分野の開拓や既存産業の新たな展開が必要です。千葉新産業三角構想は、千葉県が東日本と西日本を結び、首都圏と東日本経済圏の発展を担う地域であることを踏まえ、内陸部に先端技術産業の導入を図り、工業構造の高度化と均衡のとれた地域構造の実現を目指すものです。
三角とは幕張新都心、かずさアカデミアパーク、成田空港(新東京国際空港)の3地点を指しています。幕張新都心、かずさアカデミアパークを中心に業務機能、研究開発機能の集積を図るとともに、成田空港や千葉港の国際物流機能、幕張メッセの国際的な情報発信機能を整備することで、新製品の開発、試作の中枢機能を担う母工場や研究所の立地を促進し、国際産業母都市として新産業の創造を進めるものです。すでに県にはいくつかそのような工場が立地しており、様々な研究開発や新製品の試作を行っています。
―各地域の現況は
山根
幕張新都心では、中核施設である『幕張メッセ』が人・モノ・情報の国際交流拠点としての地位を確立するとともに、業務研究地区の全企業が操業を開始し、ホテル、ショッピングセンターがオープンするなど国際業務都市としての活動が本格化してきています。
かずさ・アカデミアパークは最近、一番の中核施設となる国際会議場にホテルを併設したアカデミアセンターがオープンしました。すでに研究活動がスタートしているdna研究所に続き、各種研究施設を張り付けることになっているので、都市的サービスの提供や研究活動の場として大いに利用されることを期待しています。
東京湾横断道路の完成によって交通の便が飛躍的に向上するうえ、自然環境にも恵まれているので、研究型企業の進出先として注目を集めています。
一方、成田でも国際物流複合基地や臨空工業団地の整備が進んでいます。
土木部としても、こうしたプロジェクトを支援し、その効果を県内全域に波及させるためにも首都圏中央連絡道路など交通ネットワークの連携が重要と考えており、インターチェンジへのアクセス道路となる県道の整備をさらに推進します。

■コンテナターミナルの整備を推進

―港湾整備についてお聞きします。千葉港は特定重要港湾ですが、最近の港湾は全国的にコンテナ化に対応した整備が進んでいます。千葉港はいかがですか。
山根
千葉港は京葉臨海工業地帯の整備とともに発展し、現在の取扱貨物量は全国一位を誇っています。ただ、工業港の性格が強く、商業港的な機能が弱いのが現状です。
そこで商業港的機能を充実させるため、輸送革新に対応したコンテナターミナルなどの公共ふ頭や旅客船ふ頭などの整備を進めています。
順調な東南アジア航路
―物流港はコンテナ化が時代のすう勢です。平成6年6月に千葉中央ふ頭コンテナターミナルの供用開始しましたが、最近の状況は
山根
昨年2月に東南アジア航路(週1便)が開設され、台湾の基隆、高雄と香港、さらにタイのバンコク、レムチャバンと結ばれ、コンテナの取扱量が大幅に増えました。
平成7年(1〜12月)の実績は5,300teuでしたが、8年4月以降は毎月1,000teuを超える貨物を取り扱っており、平成8年1月から12月の取り扱い実績は約13,000teuと大幅な伸びを示しています。
このうち東南アジア航路のコンテナ取扱量は、開設以降の13か月間で8,300teuを超え、順調に推移しています。コンテナ取扱量の77%が輸出貨物で、大半が合成樹脂などの化学工業品です。
コンテナ取扱量の大幅な増加で既存のコンテナクレーン1基では荷役作業時間が長くなるので、この3月に、さらに1基増設しました。既存のコンテナクレーンと同じ定格荷重30.5tの能力があり、荷役作業の短縮化が図れます。
―ポートセールスにも取り組んでいますか。
山根
積極的に取り組んでいます。平成5年の調査では、県内の企業には年間455万tのコンテナ需要がありました。このうち千葉港での実績は20〜30万tに過ぎないのです。陸送して他県の港を利用しているわけですから、コストダウンを図るためにも、もっと千葉港の利用促進をprする必要を痛感しています。
5年当時よりコンテナ需要はさらに伸びているでしょうから、まず足元を固めていきたい。
海洋性レク拠点を形成
―当面の整備計画は
山根
商業港的機能の充実が大きなポイントですが、価値観の多様化や社会・経済の急激な変化から、物流機能の拡充や快適な環境の創出などに対する要請が高まっています。
したがってコンテナターミナルなど公共ふ頭の整備を重点的に推進するだけでなく、旅客船ふ頭やマリーナを核とした海洋性レクリエーション拠点の形成を図るとともに、港湾における快適な環境を創出するため緑地・人工海浜の整備を進めます。
―具体的には千葉中央地区の整備が課題ですか
山根
千葉中央地区では、貨物量の増大や船舶の大型化に対応するため、コンテナターミナルの拡張を図るとともに、耐震強化岸壁の整備を図ります。
千葉北部地区は幕張新都心の海からの支援を図り、海上ネットワークとして旅客船ふ頭の整備を進めます。
京葉港二期地区は港湾物流拠点として外・内貿ふ頭の整備を推進します。
―千葉港は水深12m岸壁ですが、当面はそのままですか
山根
将来的には13m岸壁にしたいとは考えていますが、12mでも30,000tまで対応できますから、まず30,000tクラスの船舶にどしどし来てもらうのが先決じゃないでしょうか。
―木更津港の現況は
山根
国の重要港湾として、千葉県南部の重要な産業拠点と位置付けています。
神奈川県川崎市と木更津市とを結ぶ東京湾横断道路の完成によって後背地に新たな産業・都市機能の集積が期待されているほか、多様な機能を持つ港湾空間の充実が求められています。
そこで、整備が進む後背都市機能や広域幹線道路網との連携を図りつつ、南房総地域だけにとどまらず、首都圏の物流拠点として商業港的な機能の拡充強化を図っていきたいと思います。
公共工事費のコスト縮減を部内で検討
―ところで、公共事業費の縮減が国の政策課題の一つになっていますが、県としてはコストダウンにどのように取り組んでいますか
山根
昨年12月、土木部内に検討委員会をつくり、国の研究を参考にしつつ、県として何が出来るか、様々な角度から調査・検討しているところです。際だったアイデアはなかなか出づらいものですが、まずは建設副産物のリサイクルの促進を一段と進めたいと考えています。
例えば、工事に伴って出るコクリート塊などのリサイクルは一定の水準まで進んでいますが、最大の課題は建設残土の有効利用です。現状を見ると、建設残土の不法投棄というよりも、産業廃棄物を残土と称して捨てていることなのです。
そこで環境部で残土条例の施行を検討中ですので、土木部としても公共工事で建設残土がきちんと処理される仕組みをつくっていきたいと思っています。
―入札制度や地元企業の育成についてはどのようにお考えですか
山根
入札制度は平成7年度までに一般競争入札、公募型指名競争入札などの制度改善を終え、当面はその定着化と細部の手直しを進めようと考えています。
県内の建設業界は約2万社を数えますが、近隣都県に比べると企業規模も小さいものが多いので、中堅企業にはもっと伸びてもらいたいですね。地元企業が体力を付けることで県全体の底上げを図っていきたいものです。

【「ちば新時代5カ年計画」に掲げる32の政策課題と土木部関連主要事業】

【福祉文化】
  1. 地域文化の創造
    (環境)
    ・ふるさとの川づくり
    ・ふれあいの海辺づくり
    (まち)
    ・道の駅の整備
  2. 自己の能力や個性を仲ばす生涯学習の推進
  3. 夢を育み生き方を考える教育の推進
  4. 総合的な福祉施策の展開
    (環境)
    ・ふるさとの川づくり
    ・ふれあいの海辺づくり
    (まち)
    ・歩行者広場、ゆとりある歩道の整備
    ・歩道の段差の改良
  1. 実りある長寿社会に向けての環境づくり
    (環境)
    ・ふるさとの川づくり
    ・ふれあいの海辺づくり
    (まち)
    ・歩行者広場、ゆとりある歩道の整備
    ・歩道の段差の改良
  2. 幅広いボランティア活動への支援
    (環境)
    ・河川愛護運動の推進
  3. 子どもが健やかに生まれ育つための環境づくり
    (環境)
    ・清流の復活
    ・ふるさとの川づくり
    ・ふれあいの海辺づくり
    (まち)
    ・自転車道の整備
  4. 女性の社会参加の促進
  5. 健康づくりの促進
    (環境)
    ・ふるさとづくりの川づくり
    ・ふれあいの海辺づくり
    (まち)
    ・自転車道の整備
  1. 科学の振興
  2. 地球時代における国際交流
  3. ・協力の推進
  4. (まち)
  5. ・千葉港
  6. ・木更津港の整備
  7. (産業)
  8. ・ポートセールスの推進
【環境】
  1. 地球的視野に立った環境施策の推進
    (環境)
    ・水循環の保全と再生
    (まち)
    ・渋滞対策の推進
  2. 資源循環型社会の構築
    (環境)
    ・建設副産物対策の推進
    ・水循環の保全と再生
    (まち)
    ・舗装道路の改善
    ・渋滞対策の推進
  1. 環境学習の推進
  2. 健全な生態系の維持
    ・形成
    (環境)
    ・清流の復活
    ・多自然型川づくり
    (まち)
    ・エコロードの整備
  1. ひとと自然のふれあいの場の創出
    (環境)
    ・水循環の保全と再生
    ・ふるさとの川づくり
    ・ダム周辺の環境整備
    ・ふれあいの海辺づくり
    (まち)
    ・道路景観の整備
    ・港湾環境の整備
  2. 豊かな自然と調和した河川
    ・海岸の整備
    ・利根川
    ・印旛沼総合開発事業の推進
    ・水循環の保全と再生
    ・ふるさとの川づくり
    ・床上浸水対策の推進
    ・ふれあいの海辺づくり
【まち】
  1. 総合的な防災対策の推進
    (環境)
    ・河川の改修
    ・低地などの浸水対策の推進
    ・床上浸水対策の推進
    ・高規格堤防の整備
    ・海岸高潮対策の推進
    ・急傾斜地崩壊対策の推進
    ・砂防対策の推進
    ・地すべり対策の推進
    ・海岸浸食対策の推進
    ・ダムの建設
    ・水循環の保全と再生
    (まち)
    ・耐震性の強化をめざした橋梁の整備
    ・港湾の耐震性強化岸壁の整備
    ・地震に強い河川構造物等の整備
    ・河川海岸の津波防災対策の推進
    ・防災アセスメントの推進
    ・水防体制の強化
  2. 高次都市機能の充実
    (環境)
    ・高規格堤防の整備
    ・利根川
    ・印旛沼総合開発事業の推進
    (まち)
    ・高規格幹線道路等の整備
    ・港湾の整備
  1. 魅力あるリゾートの形成
    (環境)
    ・ふるさとの川づくり
    ・ふれあいの海辺づくり
    ・ダム周辺の環境整備
    (まち)
    ・地域高規格道路等の整備
    ・プロジェクト関連道路の整備
    ・道の駅の整備
    ・名洗港の整備
    ・木更津港の整備
  2. 文化的魅力のある都市の形成
    (環境)
    ・ふるさとの川づくり
    ・ふれあいの海辺づくり
    ・湾岸環境の整備
    ・清流の復活
    (まち)
    ・港湾環境の整備
    ・ゆとりある歩道の整備
    ・電線共同溝の整備
  3. 交流
    ・連携を強化する道路の整備
    ・全国的なネットワークを構成する道路の整備
    ・地域高規格道路等の整備
    ・幹線道路の整備
    ・直轄、県管理国道の整備
    ・プロジェクト関連道路の整備
    ・インターチェンジアクセス道路の整備
  1. 国際化に対応した港湾
  2. ・空港の整備
    ・京葉港二期地区の整備
    ・千葉港千葉北部地区の整備
    ・ポートセールスの推進
  3. 地域を結ぶ鉄道の整備
  4. 地域の安全を守る警察
  5. 地域間の交流促進
    (環境)
    ・ふるさとの川づくり
    ・ダム周辺の環境整備
    ・ふれあいの海辺づくり
    (まち)
    ・地域高規格道路の整備
    ・プロジェクト関連道路の整備
【産業】
  1. 千葉新産業三角構想の推進
  2. 国際産業母都市の形成
    (まち)
    ・道路の整備
    ・港湾の整備
  1. 生産性の高い快適な農村空間の創造
  2. つくり育てる漁業の推進
  1. 地域を支える中小企業の育成
  2. マルチメディア社会への対応
    (まち)
    ・電線共同溝の整備
    ・水防テレメータシステムの整備

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