建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ1997年6月号〉

interview

職員の意識改革で市民に分かりやすい行政を展開

健康増進センター、保健福祉支援センターがオープンへ

北海道稚内市長 敦賀一夫 氏

敦賀 一夫 つるが・かずお

大正11年1月21日生まれ、礼文町出身、札幌逓信講習所卒。
昭和24〜45年日本電信電話公社勤務、34〜38年稚内市議会議員、46年〜平成3年共同ボデー工業株式会社取締役社長、平成3年5月稚内市長に初当選、現在2期目。

稚内市の敦賀一夫市長は2期目の折り返しに入り、平成9年度も『市民との対話でつくる、市民のための行政』を基本スタンスに、“てっぺんのまちづくり”を推進する。今年は高齢者等健康増進センターと保健福祉支援センターが相次いでオープンするなど、社会資本整備は着々と進んでいる。新年度予算のポイントなどを伺った。
―9年度市政執行方針の重点施策には何を掲げていますか
敦賀
住民の理解を得ながら不退転の決意で行財政改革を進め、国と地方の役割分担をはっきりと定めた地方分権を推進したい。
具体的には、「行財政改革の断行と市職員の意識改革」「快適な生活環境の充実と都市基盤の近代化」「健康で心のふれあう温かいまちづくりと生涯学習の推進」「やりがいのある産業の振興と躍動する地域づくり」「北方圏を見据えた特色のある国際都市の創造」「市民とつくる夢と共感の持てる行政」の6つを柱にしています。
―行財政改革と職員の意識改革はどのように取り組んでいますか
敦賀
職員には『市民の財産を守り、幸せをつくる義務』があります。これが職員としての使命の原点です。職員が町内会や各種団体の活動に積極的に参加し、普段から市民の目線で行政に携わる姿勢、政策立案能力を養ってほしいと考えています。
新年度からはボランティア休暇制度を新たに導入し、災害時や福祉支援などのボランティアを積極的に奨励したい。また、市民に分かりやすい行政を目指し、今年はインターネットのホームページを作成し、情報公開制度の条例化を具体的に検討する方針です。
歳出の抑制も重要な課題です。経常経費は3%削減、職員定数も計画的に減らします。また高利率地方債の繰上償還も実施します。
下水道普及率70%に
―この6年間で社会資本整備はどのくらい進みましたか
敦賀
下水道の普及率は70%になりました。勾配が7%以上の坂道のロードヒーティング化は、対象となった9か所で整備が完了しました。ロードヒーティングは電気代などの維持費が大きいので市の財政負担も軽視できませんが…。
20年ぐらい前になるでしょうか、高台などで宅地造成の開発が行われたことも影響して坂道が多く、ロードヒーティングは依然として要望が多いのです。勾配の基準を無視して1か所でも特殊事情を認めると収拾がつきません。どうしても必要なら受益者負担をお願いしなければなりません。
―港湾を中心としたマリンタウンプロジェクトの進展状況はいかがですか
敦賀
サハリン地下資源開発プロジェクト後方支援基地の入札にwabcd(稚内国際埠頭株式会社)が落札できずに頓挫していますが、本格的な採掘が始まると、稚内港が中心になりますから状況が変わってくることを我々としても期待しています。
通年型観光の実現が課題
―観光客の入り込みは順調のようですね
敦賀
年間の入り込みは100万人を超えました。お陰様で稚内―東京の直行便は今年7月から通年運行となります。とりあえず1日1便、盛夏季は1日2便。
一昨年から就航した稚内―大阪便の季節運行(6月〜10月)に続き、名古屋とも直行便を就航させたいところですが、宿泊施設に限界があるのが難点です。市内の宿泊施設は収容規模が4千人で、うちホテルがその半分。残りは民宿関係です。1千円や2千円高くてもホテルの需要が多い。6月は予約で一杯だそうです。
全日空ホテルを第3セクターで運営していますが、新規のホテル建設は既存業者の経営を圧迫する上に、現状では採算が合いません。確かに夏は忙しいが、冬は閑散としていますから、大がかりな増築もできません。冬も観光客を呼び込むことが課題です。
毎年冬にはハワイから20〜30人の観光客が来ていますが、今後は冬の修学旅行誘致にも取り組みたいと思っています。
―いよいよ2期目折り返しの平成9年度がスタートしましたが、政策予算のポイントをお聞かせ下さい
敦賀
今年は高齢者等健康増進センターが6月に、保健福祉支援センターが10月にオープンします。
平成10年には消防庁舎と中央小学校の全面改築工事が完成の運びです。11年度でハード面の整備はほぼ1段落します。これからはソフト面の整備が課題になります。いずれにしろ基幹産業を中心に地域振興に努めたい。福祉サービスの充実も重要な課題です。
このほか、一般廃棄物の分別収集を6月から実施に踏み切ることにしています。省エネ関係では新エネルギー産業技術開発機構との共同事業で平成10年に発電用風車を稚内公園に設置します。
公営住宅は緑ケ丘団地に1棟12戸を建設中です。
―新しい消防庁舎が平成10年10月に完成する予定ですが、消防体制や防災体制の整備についてはどのようにお考えですか
敦賀
最近の消防活動は救急体制が主になりつつありますので、高規格救急自動車の運用や潜水班の組織によって救急救命体制の充実を図っていきたい。救急救命士は現在、4名配置しています。
災害の情報収集と市民への情報システム確立に向けて、津波警報等緊急システム、震度情報表示板の導入を予定しています。避難場所については見直しと追加で市内10数か所に指定します。

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