建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ1997年6月号〉

interview

新しい田園都市の創造

4年制大学の設置、市立病院の移転改築に道筋

北海道帯広市長 高橋幹夫 氏

高橋 幹夫 たかはし・みきお

昭和16年生まれ、帯広市出身、早稲田大学文学部卒。
帯広市役所に勤務。平成2年4月に市長に就任。現在2期目。任期満了日は平成10年4月20日。
全国地方拠点都市地域整備推進協議会副会長、全国都市公園整備促進協議会理事、全国市長会評議員。

2期目最後の政策予算の編成を終え、懸案の解決に全力を上げている帯広市の橋市長にご登場いただいた。大詰めを迎えている4年制大学の設置や市立病院の移転改築に一定の道筋を付ける方針という。昨年完成したjrの連続立体交差化事業に合わせて駅周辺整備も着々と進んでおり、南口のjrホテルが6月17日にオープンするなど『帯広の顔づくり』や都心部の活性化に市民の期待が高まっている。
――帯広市の平成9年度予算は一般会計(758億6,400万円)が前年度当初対比で伸び率3.3%となりましたが、2期目最後の政策予算の編成にあたって特に留意された点は
一段と厳しい財政状況を踏まえ、中・長期的な展望をもって、まちづくりの方向と当面する施策の優先順位を判断しながら、公約の着実な推進が図られるよう作業を進めました。
特に、これからのまちづくりのキーワードとなる少子・高齢化社会の進行に伴う保健・医療・福祉の総合的な整備や地域経済の活性化、教育や環境問題などの施策にも配慮したつもりです。
ご承知のとおり帯広は農業が基幹産業のまちです。そこで、この2〜3年、力を入れているのが農村地区の生活環境整備です。生産現場であると同時に生活の場でもあるわけですから、下水道整備に力を入れており、9年度は新たに幸福地区で事業に着手します。
一方、市街化区域内では公共下水道整備を24ha実施し、9年度末の整備率は94.2%になる見通しです。
教育関係では第一中学校の校舎改築や(仮称)新西帯広小学校新設に向けての実施設計を進めます。福祉関係では「帯広けいせい苑」のデイサービスセンターと在宅介護支援センター、ショートステイ専用ベッドの運用などを始めます。
来年2月に十勝大平原国際クロカン大会開催
――十勝は、アウトドアスポーツや各種のイベントが盛んです。十勝圏としての取り組み状況は
3年がかりで準備してきました(仮称)十勝大平原国際クロスカントリースキー大会を来年2月に開催する予定です。ソフト面では十勝圏全体で観光客誘致事業に本格的に取り組むため、今年4月に官民あげた組織を作りました。
また、「とかち財団」と呼んでいますが、平成5年度に発足した十勝圏振興機構は十勝のブランドづくりに成果を上げてきています。
こうした取り組みを通して、十勝一体の地域おこしを進めています。
――平成7年に、十勝圏が8番目の道立広域公園の指定を受け、平成8年度に道の基本構想が策定されましたが、これに連携して市としてはどんな施策に取り組みますか
帯広市というよりも、関係市町ではこの3月までに事業化調査を行ってきましたが、今後も、国や道と連携しながら、十勝エコロジーパークの整備を進めていきます。
――帯広駅周辺整備事業も進んでいますね
昨年、鉄道の連続立体交差化事業の完成、新駅の誕生と、大きな課題が解決し、帯広の顔づくりもこれからは後半戦に入ります。
駅北側広場の地下駐車場は今年から手がけます。帯広の市街地は鉄道で南北に分かれており、もともと空き地の多い南側はjr北海道のホテルが6月17日にオープンするなど事業は順調ですが、既存の建物が密集している北側は区画整理事業の手法で実施し、移転補償などに取り組まなければなりません。
大型スーパーの郊外展開などの影響で帯広でも地盤沈下の進む都心部の活性化が駅周辺の整備と合わせた新しい顔づくりにつながるので、今年、市役所に『都心部活性化推進室』を設置、専任の部長を発令し新しい組織として立ち上げました。
帯広駅北口駐車場の建設、高架下を利用した自転車駐車場の整備にも予算措置をしたところです。
市立病院整備と4年制大学が課題
――市立病院の改築は具体化してきましたか
現在の診療科目は内科だけでベッド数も50床。実態は診療所を少し大きくした程度ですが、これを質量ともに充実させ、総合病院とまではいえないまでもそれに近い病院にしていきたいと考えています。当初予算には盛り込めませんでしたが、現在、詰めの段階に入っているところです。
――4年制大学の設置も大きな課題ですね
平成6年に発足した大学設置促進期成会が昨年、基本構想を策定しました。地元の大谷短大が4年制移行を計画しており、『一緒にやりたい』と申し出を受けています。
選択には難しい面がありますが、期成会サイドで一緒にやれるかどうか、検証作業を進めています。いずれにしろ秋口までに道筋を付けたいと思っています。
土地利用に権限移譲を
――地方分権の議論が高まっています。広域行政の視点もますます重要になると考えられますが、市長のお考えは
十勝圏の市町村では、ごみやし尿処理、教師のための教育研修センターの設置・運営、看護婦の養成機関の運営、消防など、以前から各地域で広域行政に取り組んできました。十勝圏振興機構や、十勝圏エコロジーパーク計画は広域行政の好例です。十勝全体としては今後も広がっていくでしょう。
また、今後は厳しい財政状況の中で、難しい問題ではありますが、施設づくりにおける広域的な連携、調整なども必要になってくると思います。
地方分権、規制緩和については基本を市町村に置き、権限と財源をストレートに移譲してほしいですね。特に、私が痛感しているのは土地利用の問題です。(土地利用は)まちづくりの基本ですが、何をするにしてもいろいろな制限が多くて市町村が思うように事業が進まないのが現実です。
市町村に土地利用の権限を移譲していただければ、まちづくりの手法もかなり楽になるし、フレキシブルな事業展開が可能になります。 規制緩和が時代の潮流になっている一方で、地域のためには規制を継続すべき課題もあると思いますが、規制緩和を基本において、地方が自らの意思で個性ある地域づくりをより一層進められるさまざまな取り組みを今後とも行っていく必要があると考えます。

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