建設グラフインターネットダイジェスト

<建設グラフ96年1月号>

interview

1次産業の盛んな地域、基盤整備に拍車がかかる

来年度は、釧路川の遊水地事業や羅臼漁港の全天候型整備など目白押し

北海道開発局釧路開発建設部長 駒村勝善 氏

駒村勝善 こまむら・かつよし
昭和19年9月10日生。42年岩手大農卒。
46年小樽開建双葉えん排えん堤係長、47年小樽開建後志中部農業開発事業所えん堤係長、48年小樽開建倶知安農業事務所えん堤課えん堤係長、50年旭川開建天塩川かん排第3建設班長、53年網走開建斜里地域農業開発事業所長、55年網走開建農業開発課長、'57年札幌開建農業開発課長、59年北海道開発局農業設計部長補佐、61年小樽開建倶知安農業事務所長、63年旭川開建旭川農業事務所長、平成元年旭川開建次長、3年札幌開建次長、5年6月北海道開発局農業水利課長、7年6月現職。

平成7年6月に北海道開発局農業水利課長から釧路開発建設部長に就任した駒村勝善(こまむら・かつよし)氏。20数年間の道開発局勤務で初めて釧路への赴任となった。初めて釧路の冬を迎え、非常に楽しみにしている様子。管内は、釧路・根室両市を中心によくまとまった地域と評価しており、事業の執行については、「単に地域のインフラ整備をするだけではなく、地域の要望を基盤整備に反映させたい」と語る。北海道東方沖地震から1年以上が経過し、直轄災害復旧費157億円という膨大な事業もほぼ完了し、ようやく一段落といったところ。同部長に災害復旧状況とあわせ、来年度の主要事業や次期総合開発計画の重点項目について尋ねた。
――釧路開発建設部が管轄する地域の実情はどうなっていますか
駒村
釧路開発建設部管内は、釧路支庁・根室支庁の北方領土に近接した地域で、15市町村、人口は合計約38万人、地域面積は95万haほどです。釧路市と根室市を中心に非常によくまとまった地域だと感じています。管内の経済については、釧路港は水産の水揚げ日本一を長年続け、酪農についても別海町など日本一の規模を誇っており、一次産業が盛んな地域です。
また、製造業においては製紙業があり、道内唯一の石炭、それに観光産業は管内全体で年間1,300万人の入り込みがあり、非常に重要な位置づけになっています。全体としてバランスのとれた産業構造だと思っています。
その中で私たちの役割は、流通網すなわち交通網を整備すること、これは単に国道整備に限らず港湾、空港の整備を含めていえることと思っています。一次産業の盛んな地域ですから産業基盤の整備、具体的には漁港や河川、農業農村の整備に力を入れて行きたいと考えています。残念なことに景気が足踏み状態ですが、私たちの事業が少しでも景気の下支えになれば、と思っています。私たちも単に地域のインフラ整備をするだけではなく、地域の要望を聞いて基盤整備に反映させていきたいと考えています。
――8年度予算要求の重点項目としてどんな事業を考えていますか
駒村
治水事業では1級河川の釧路川を担当していますが、これは国立公園でありラムサール条約に登録されている釧路湿原を通る河川です。そのため、自然環境に配慮した事業整備を行うため、釧路川の遊水地事業が中心になっています。単に河道を直線化したり河道を拡大して洪水を予防するだけではなく、湿原ですからその自然を保護するという意味も含めて、横堤という小さなダムをつくり湿原の水位を確保し、またこの遊水地に洪水をためることによって洪水の軽減を図ります。この他、旧釧路川との分岐点にある岩保木水門の整備、左右岸の築堤の整備の3点が遊水地事業の柱になっています。横堤と岩保木水門は、13年度ぐらいをメドに完成させたいと考えています。
道路事業については、釧路から中標津を経て標津にいたる国道272号が平成6年度に地域高規格道路に指定され、とくに8年度は春別区間を重点的に進めます。
また、漁港では8年度の目玉として羅臼漁港を全天候型の2階建てにして、悪天候でも1階部分で魚揚げなどの作業ができ、2階部分を利用して駐車場や荷揚げの整理、場合に よっては一部を観光的な施設にも利用できるようにするもので、7年度から着手していますが、本格的な工事は8年度から取りかかることになります。
釧路空港は、濃霧の発生によって欠航も多かったのですが計器着陸装置「カテゴリーB」の整備が7年度で終わりましたので、次は大型ジャンボ機が離発着できるように現在2,300mの滑走路を2,500mに延長する工事に8年度から取り組みます。
農業農村事業では新規着工事業があります。直轄明渠排水事業で別海町の智恵文内地区を予算要求しています。また、同じく直轄明渠排水事業の新規調査事業として釧路市の駒牧地区について、さらに新しい事業ですが標茶町の南標茶地区の国営農地防災事業について新規調査に取りかかることになります。
――第5期総合開発計画が終盤にさしかかっていますが、次期計画についての管内重点項目は
駒村
現在、継続中の事業のほとんどは、今年か来年度にとりかかる事業ばかりですから、かなりの部分が次期計画と重複して行くことになろうと思います。例えば国道では地域高規格道路に指定された272号の整備がありますし、国道243号の道道も含めた形での新規の地域高規格道路指定も次期計画では柱になると思います。
また、河川でも先の釧路川遊水地事業が平成13年度ぐらいの完成をメドとしているので、次期計画の柱になります。
港湾事業では釧路港の西港を整備し、すでに第1、第2、第3埠頭まで概成しているのですが、需要がぎりぎりの状態になってきているので、さらに第4、第5埠頭の拡張が課題になると思います。もちろん、漁業権交渉の締結が前提です。漁港では羅臼港が着手したばかりですから次期計画の柱になると思います。空港も滑走路の延長が柱です。
農業農村整備事業では、9割が酪農専業地帯で、人口に匹敵する31万頭ぐらいの乳牛が飼育されています。その糞尿処理においては有機質肥料として還元すればコスト低減にも役立ちます。そこで新しい事業として地球環境貢献型という新規地区の調査を進めています。この地球環境貢献型事業が次期計画の重点項目となってくると思います。
――北海道東方沖地震による災害の復興状況はいかがですか
駒村
東方沖地震の直轄災害復旧費は全体で157億円の規模となっています。道路と河川については平成6年度に完了し、農業農村関連は7年11月ですべて完了しました。
157億円のうちかなりのウェートを占めている港湾と漁港については、現在98%ぐらいで、遅くても今年度中には全面的な復旧は終えると考えています。
釧路東港の液状化についてはプラスチックドレーン工法を採用、国道44号の根室市内に温根沼大橋も免震工法を採用するなど、震災対策や災害に強い工法にも取り組んでいます。
防災対策には全局挙げて取り組んでおり、防災機器の導入や防災体制の確立、耐震性の強化、市町村との連携強化などが重要と考えています。

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