<建設グラフ96年12月号>

interview

豊富バイパス工事を継続促進

管内自治体の活性化を支援

北海道開発局稚内開発建設部長 下平尾 蔀氏 氏

下平尾 蔀 しもひらお・しとみ
昭和19年8月5日生、45年北海道大院修
昭和48年建設省都市局公園緑地課係長
昭和53年道開発局札幌開発建設部滝野公園副長
昭和56年道開発局札幌開発建設部滝野すずらん丘陵公園工務課長
昭和58年道開発局道路計画課開発専門官
昭和62年道開発局小樽開発建設部小樽道路副所長
昭和63年道開発局札幌開発建設部札幌道路所長
平成元年道開発局小樽開発建設部次長
平成 3年道開発局環境審査官
平成 6年7月道開発局開発調整課長
平成 8年7月現職
月1日付の人事異動で、北海道開発局開発調整課長から稚内開発建設部長に就任した下平尾蔀(しもひらお・しとみ)氏。今までは道央圏での勤務が多かった同氏が、日本最北端の地・宗谷管内に赴任し、どう基盤整備に取り組むのか。豊富バイパス整備事業をはじめ、地球環境貢献型の農業農村整備事業、対サハリン貿易に対応する稚内港天北2号埠頭整備などを中心に、平成8年度事業について聞いた。
――新任の抱負を伺いたい
下平尾
稚内、宗谷地域は、北海道のみならず、日本の“てっぺん”です。この最北の厳しい風土の中にあって、稚内開発建設部の先輩たちは、40年以上にわたり道を拓き、河を治め、港を築き、大地を潤して今日の姿を築いてきました。これまでのご努力に心から敬意を表するとともに、私自身その一員となる機会を与えられたことを光栄に思っています。
――管内の印象は
下平尾
この地域の基盤産業は、水産業とそれに関連する加工業、農業ですが、水産業については200カイリ問題、農業についてはウルグアイ・ラウンドなどの影響で、それぞれ厳しい状況にあります。そこで、管内を廻ってみましたが、確かにそういう厳しさもあるのでしょうが、逆に、それぞれの地域で計画を持って、地域の活性化に努力されている姿勢がかえって印象深かったです。
例えば、稚内市などはロシア極東地域との交流がにわかに活発化しており、また、サハリン州では日本企業が参加する石油・天然ガス開発プロジェクトがいよいよ動きだそうとしています。市では、このプロジェクトの後方支援基地の役割を担うべく準備を進めていますが、これは、稚内市のみならず宗谷地域全体にとって活性化のまたとないチャンスになると思います。もちろん我々も出来る限りの支援をしていきたいですね。
――今年度の主な実施事業についてお聞かせいただきたい
下平尾
まず、道路整備事業で代表的なものは、「豊富バイパス」でしょう。一般国道40号は旭川市と稚内市を結ぶ道北圏の主要幹線であり、特に名寄から稚内間の整備については冬期交通の確実性、安全性を考慮した豊富バイパス工事を平成5年から着手しています。このバイパスが完成することによる移動時間の短縮で、様々な分野に寄与できるものと期待し、一日も早い完成を目指しています。
また、同じ40号の稚内市街の交通混雑を図る「稚内拡幅」や、一般国道275号の浜頓別町では、旧国鉄駅跡地を利用した市街地再開発事業“夢ingアメニティタウン計画”との整合を図り、公園と一体化した親しみと潤いのある緑豊かな歩行者空間を形成する「浜頓別道路」の整備を促進します。
農業農村整備業では、かんがい排水事業では歌登中央地区(一期)1地区があります。この地区は降雨量不足によるかんばつ被害を防止するための畑地かんがいを行うとともに、肥培かんがいの導入による糞尿の有効利用と労働時間の節減を図り、地球環境の改善と農家経営の向上安定を目的としています。このため、歌登ダムを建設して水源を確保し、併せて用水路10条、調整池2カ所の事業を計画しています。
今年度はダム建設の準備として、工事用道路を継続実施します。また、直轄明渠排水事業の稚内西部地区、頓別川地区、ポン仁達内地区、兜地区で排水路工事を行い、総合農地開発事業では、サロベツ第1地区の整備を完了します。
そのほか、枝幸南部地区の畑かん施設整備、道路整備、用水工、雑用工を行い、東豊富地区は農地造成や明渠排水、暗渠事業を実施します。
――地球環境貢献型の農業農村整備事業に取り組んでいるそうですが、どんな事業ですか
下平尾
農業も地球サミット以来、生産性を向上しつつ環境への負荷の軽減にも配慮した、持続できる農業でなければならない、というのが農業の場でも深刻に考えられてきました。
今年度は、湿原保全と地域開発構想の共生や地域資源の利活用、親水型施設等の整備を念頭に置きながら、豊富町のほぼ全域と稚内市の一部で計画調査します。
――治水事業ならびに、港湾・漁港整備事業は
下平尾
治水事業を見ると、増幌川は暫定堤防の完成化を継続促進し、また、河道安定化対策として水衝部の護岸整備を実施します。声問川は暫定堤防の完成化を継続促進し、また、下流部の硫下能力不足の解消のため、河道掘削を継続促進して、河道安定化対策として水衝部の護岸整備を実施します。さらに防災施設として、側帯、地震計の設置を行います。
港湾・漁港整備事業については、重要港湾稚内港の対サハリン貿易の拡大に対処するため、天北2号埠頭の整備及び港内静穏度確保のため東防波堤の整備を促進します。さらに、継続して基盤整備として末広埠頭の充実を図ります。
――災害対策はどのようにお考えですか
下平尾
宗谷管内は地理的に北海道の最北端ですので、旭川や留萌など周辺の開発建設部と相互応援態勢をとっていきたいと思います。
また、気象条件によっては、陸の孤島となるおそれがありますので、その場合は本局のヘリコプターを使って敏速な対応をしていけると考えています。
――建設業者に対しての提言、要望などは
下平尾
管内の基幹産業で、大きなウエイトを占めているのは、水産業と農業、そして建設業です。しかし、水産業と農業に関しては後継者問題が非常に深刻なのに対し、建設業は幸いなことにその心配がほとんどどない産業なのです。つまり、後継者が魅力を感じることができる業界だといえますね。ただ、業界をとりまく情勢は、今後厳しくなってくることが予想されますから、技術を研鑽して頑張って欲しいと思います。
また、この地域は建設業のトップの方々が、地域にとけ込み、還元し、地域のために働くという伝統があります。今後も、地域のリーダー的な存在になって、地域の活性化を担っていく役割を果たしてもらうことを期待しています。

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