<建設グラフ96年11月号>

interview

開発行政で地域の活性化を支援

建設業者には地域の柱を担う役割を期待

北海道開発局網走開発建設部長 山本義弘 氏

山本 義弘 やまもと・よしひろ
昭和20年10月11日生。43年岐阜大農卒
昭和49年道開発局札幌開発建設部沼田農業開発事務所第1建設係長
昭和51年道開発局土地改良課直轄工務第2係長
昭和53年道開発局小樽開発建設部倶知安農業えん堤課長
昭和55年道開発局網走開発建設部斜里地域農業開発事業所長
昭和57年道開発局網走開発建設部農業開発課長
昭和59年道開発局農業水産部農業調査課長補佐
昭和61年道開発庁農林水産課開発専門官
昭和63年道開発局農業水産部農業設計課農業企画官
平成2年道開発局帯広開発建設部次長
平成3年道開発局農業水産部農業調査課長
平成6年4月道開発局農業水産部農業設計課長
平成7年10月道開発局長官房調整官(農水担当)
平成8年7月現職
7月1日付の人事発令で網走開発建設部長に就任した山本義弘氏は、入庁以来、専ら農業畑を歩んできており、農政のエキスパートとして知られている。ガット合意後、国内の農業基盤整備が急がれている中、昭和55年から4年間にわたり網走で勤務していた経験をいかし、地域と様々な意見交換をしてその要望に応じた施策を考えているようだ。同氏の開発行政に対する考え方や、同開発建設部の平成8年度の事業概要などを聞いた。

遠方からも引き付ける観光産業の魅力
――管内の印象は
山本
昭和55年から58年まで網走に勤務していたこともありますが、管内にはオホーツクの豊かな自然や流氷など、この地域にしかない景観があり、毎年1000万人以上の観光客が訪れています。
しかも、その観光客のうち5割は道外から訪れた方々なので、今後はもっと遠くの、例えば韓国、香港、シンガポール、マレーシアなどのアジア圏からも来ていただく努力が必要と思います。
――観光は網走管内の基幹産業の一つでもありますね
山本
地元では、他にも様々な趣向を凝らしているようですね。新しいものでは、観光客に「流氷の上を歩こう」をコンセプトに、観光客に流氷の上を歩いてもらうという、今までにない流氷観光を展開する構想があるようです。私たちもできる限り応援していきたいと思っています。
また、管内市町村は、インターネットを利用してオホーツク圏全体の物産、イベント情報等のホームページを開設して、情報化社会に積極的に対応しているようです。
開発行政の意義
――最近、インフラ整備の在り方が変わってきていると思いますが
山本
そうですね。従来のハード先行の政策から、ハードとソフトを平行して計画的に進めていく方向に転換したり、縦割り行政の弊害を克服しようと、各省庁同士が連携して公共事業を実施し始めているなど、開発行政の在り方が見直されています。確かに、産業基盤の整備が進んでも人口が減少していることは問題があります。
私は開発行政とは地域産業や新しい産業の立地を促進し、地域の活性化を支援するものだと考えてます。我々の仕事において、物をつくることは目的ではなく手段だ、ということを意識して事業を実施していきたいと思っています。
――職員に求めるものは
山本
まず健康第一ですね。メンタル面も含めてです。また各部署間の情報の共有を行い、横の連携を取りながら業務を行って欲しいと思っています。
――平成8年度事業の概要をお聞かせいただきたい
山本
開発建設部の平成8年度事業費の総額は約594億円で、前年度比2.0%増となりました。その内最高の伸びを示したのは農業農村整備事業で前年度比10%増の237億円です。
農業の国際競争力を身に付ける
――ガット合意で国内農業対策が行われていますが、管内では具体的にどのような取り組みをしていますか
山本
ウルグアイ・ラウンドの合意によって、農業は国際的な競争力をつけないと生き残れなくなっていきます。管内の市町村長と意見交換した時も、みんなそのことで頭を悩ませていました。私たちはできる限り支援をしていきたいと考えています。
そこで、管内の農業は大規模土地利用型農業の生産効率化と、国際化に応じた‘多用で生産性の高い農業’の展開を図るため、農地の整備・拡大・再編を通して生産基盤の強化、農用地の保全と、これに伴う土地改良施設の整備を促進する必要があります。そのため25地区の事業を推進するとともに、全体実施設計2地区、調査計画4地区、広域農業基本調査など5件を実施します。
畑地かんがいと排水改良のため、引き続き女満別地区外4地区の事業を推進するとともに、新規で生田原一期地区の事業を行います。また、既耕地の整備と土地利用再編のため、生田原川地区外2地区の事業を継続して推進するとともに、以久科地区の事業に着手します。北見地区外4地区では畑地帯総合土地パイロット事業などを実施します。これにより、水が引かれ野菜の導入が可能になることで、農家は戦略的に事業の展開を図れるわけです。さらに、小清水地区や西網走地区、斜網西部地区、斜里地区でもパイロット事業を行っています。
――ところで、高規格幹線道路は、どのくらい進みますか
山本
450号は道央オホーツク圏との交通の高速、安全、正確性を確保するために、平成2年度から北見峠の工事を行なっており、平成7年度に引き続き実施中です。また、白滝から丸瀬布間の調査、設計を促進します。
――今年度が第8次五箇年計画の最終年度にあたる治水事業については
山本
主な箇所では、常呂川改修工事に約24億円、網走川改修工事には約10億円を。河川環境整備事業は網走川に約9億円を投入し、河川維持修繕では網走川、常呂川、湧別川、渚滑川などの工事を実施します。
特に、平成4年度の台風17号に伴う洪水の被害が大きかったので洪水災害の再発防止を図るための整備を行います。
――港湾ならびに漁港整備事業については
山本
漁業の盛んな地域ですから、地域の特性を生かしつつ、周辺の自然や社会、経済、人と結びつく‘個性的なみなとまちの創造’を実現するために整備を促進しています。
具体的には、重要港湾の網走港は、新港地区の島防波堤を継続して整備するとともに、南防波堤改良工事を今年度で完了させます。港町地区は水深7.5m岸壁の液状化対策と北防波堤改良工事を継続実施するほか、北防波堤の調査に着手します。また、こちらも重要港湾の紋別港は、第3ふ頭地区の推進7.5m岸壁をはじめとする移・輸入に対応できる物流拠点施設の整備に新規着手するほか、本港地区や第一船溜地区、港南地区でも新規ならびに継続事業を行います。
漁港整備事業は、宇登呂漁港の南防波堤を継続して整備するとともに、用地改良に着手し完成させます。さらに、サロマ湖漁港は防波堤の防氷工事を整備拡充などを。元稲府漁港は西外防波堤を完成させます。
――建設業界を取り巻く理想が着実に変化してきていますが、業界に対する提言や要望などは
山本
公共事業の大幅な伸びは期待できない状況で、それぞれの会社が技術を高め、災害に注意し、体力をつけ、大胆な工夫をするなどの努力して欲しいものです。
この業界は、特に北海道では地域産業の柱としての側面もありますから。 

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