建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ1998年5月号〉

interview

幕張は職・住・学・遊の未来都市

メッセの入場者数が5千万人突破

千葉県企業庁地域整備部長 麻生 肇 氏

麻生 肇 あそう・はじめ

昭和15年8月1日生まれ、千葉県四街道市出身、千葉大学文理学部卒。
昭和39年4月入庁
昭和58年衛生部衛生指導課長補佐
59年都市部都市整備課長補佐
60年都市部計画課長補佐
61年企画部交通計画課主幹
63年商工労働部工業課主幹
平成元年環境部水質保全課長
3年総務部管財課長
4年土木部管理課長
5年商工労働部参事
6年土木部次長
8年教育庁生涯学習部長
9年現職

国内では初の本格的なコンベンションセンターとしてデビューした幕張メッセが来年で10周年を迎える。昨年10月には、メッセの入場者数が5千万人を突破するなど、日本を代表するコンベンション施設として日々名声を高めている。また、幕張新都心も、未来型の国際業務都市としての地歩を着々と固めてきており、国内外有数の先端・成長企業をはじめ、大学、高校の教育機関も張り付き、現在、住宅地区に約6千人が生活している。
このように、幕張新都心は『職・住・学・遊』の複合機能を備えた未来型の国際業務都市として着実に成長を遂げている。アジア経済研究所と国際センターの設置も決まり、国際性が一層強化されるなど、メッセの10周年を節目に開発の進む幕張新都心は第二ステージというべき段階を迎えている。幕張新都心の最近の話題などを千葉県企業庁の麻生地域整備部長に伺った。
――幕張新都心は、どのような街づくりを目指しているのですか
麻生
千葉県では、産業構造の高度化と県土の均衡ある発展を目指しています。半島性、袋小路性が地理的なネックになっており、昭和30年代以降から臨海部の工業開発を推進してきました。その結果、東京から50キロ圏の県西側は工業開発も進み、人口が急増したのですが、50年代になってから東京寄りの地域とそれ以外との格差が目立つようになってきました。
このような状況から県として昭和58年に、産業構造の高度化と均衡のとれた地域構造の実現を目標に、千葉新産業三角構想を策定しました。これは核となる幕張と木更津と成田を道路網で結び、湾岸の方は湾岸道路と第二湾岸道路、それからアクアライン(東京湾横断道路)で川崎と木更津を結び、さらに圏央道につなげて木更津から茂原を経由して成田に抜けることで、半島性からの脱却を街づくりの大きな目標に掲げました。
総面積522haに上る幕張新都心事業は、その三角構想の核になる事業です。
――「かずさアカデミアパーク」との違いは
麻生
ともに研究開発機能の集積を目指していますが、幕張新都心は、研究開発機能のほかに、国際的業務機能、中枢的管理機能、学術・教育機能、居住機能を有する複合都市を目指しています。
それに対して、「かずさアカデミアパーク」は、エレクトロニクス、新素材、バイオ等の先端技術産業分野の民間研究所を中心とする国際的水準の研究開発拠点を形成する構想です。
――「かずさ」で新技術を開発し、それをコマーシャルベースに乗せるのが幕張新都心という関係になりますか
麻生
そういう流れもあると思いまが、研究開発分野において両地域が競争・協力関係を築き上げることが、大事だと思います。
――誘致する業種としてターゲットにしているのは、どのような産業ですか
麻生
幕張新都心はメッセが核になっていますが、同時に「職・住・学・遊」ということで、業務研究地区、文教地区、タウンセンター(商業)地区、住宅地区、公園緑地地区に分かれており、様々な業種が誘致の対象となっています。先端産業や情報産業のほかに、商業資本や大学、研究機関もどんどん誘致したいと思います。
――住宅の立地状況はいかがですか
麻生
優れた居住環境で非常に人気のある幕張ベイタウンですが、この1月までで約2,200 戸、約 6千人に達しています。
平成12、3年には新たに超高層マンション2棟が完成しますので、その頃には人口も1万人の大台に乗りそうです。最終目標は 2万 6千人です。既に、昨年6月に幕張ベイタウン自治会連合会が発足し、活発なコミュニティ活動を展開しています。やはり、街づくりの主役は何といっても、住民と企業ですので、街づくりの担い手になる人口が増えることは新都心の発展の大きな要素です。
――交通機関は京葉線と総武線が通っていますが、これを結ぶ交通対策は
麻生
現在、JR総武線から幕張新都心へはバスで乗り換えて行きますが、朝夕のラッシュ時には、1分間隔でバスが発車しています。
そこで、総武線幕張本郷駅と京葉線海浜幕張駅を結ぶ新しい交通機関の検討を内部的に進めているところです。今のところは新交通システムなどが考えられています。
また、昨年4月から幕張ベイタウンを循環するバスが2社乗り入れており、海浜幕張駅から住宅地区を廻るルートで走っています。将来、全地区が埋まって充実すれば、海浜幕張駅や幕張本郷駅と結びながら新都心全体を循環する交通機関の整備は可能だと思っています。
――県の公共施設整備の計画は
麻生
昨年着工したアジア経済研究所の隣接地に(仮称)幕張国際センターを設置する計画で、新年度予算に基本設計費を計上しており、できるだけ早く完成したいと思います。
これは、アジア経済研究所で研究活動をする諸外国からの長期滞在者向けの宿泊機能を持たせつつ、文化交流や経済交流を支援する国際交流の拠点施設として期待されています。その他公共埠頭やマリーナの建設も予定しております。
既存の公的施設では総合高校や放送大学、看護高等学校のほか、海外職業訓練協会(ovta)、高度職業能力開発促進センター(ポリテクセンター)、障害者職業総合センターなどが立地しています。
――首都圏における都市開発には、横浜の『みなとみらい21』、東京の『臨海副都心』がありますが、『幕張新都心』としてのアピール点は
麻生
何といっても国内では初めての本格的なコンベンション施設である幕張メッセです。モーターショーや様々な国際会議、イベントでこれだけ多くの人々に御利用して頂き、もともとはドイツ語である「メッセ」という言葉が、幕張とともにコンベンションの代名詞として自然に皆様が口にするようになっています。
二つ目には、「職・住・学・遊」の機能を持った、複合的な都市であることです。
成田空港と東京都心に30分で行けるという絶好の立地条件に加え、国内外で著名な企業が多数立地しているほか、ベンチャー企業を育成・支援する施設もあるなど、ビジネス環境が整備されています。また、住宅地であるベイタウンもヨーロッパ風の沿道型住宅であるパティオスで非常に人気が高いですが、多くのテレビcmに利用されるなど優れた景観を有するとともに、ユニークな小・中学校の存在で評判になっています。
さらには、多くの教育・研修機関が集積しており、生徒の自主性を尊重し、総合選択制をとっている幕張総合学校もあります。アジア経済研究所も移転してくるので、リサーチパークとしても発展していくポテンシャルを有しています。
また、コンベンションを支える機能としても6つのホテルが集積し、首都圏でも有数の客室数を誇っています。
幕張の特色のひとつでもありますが、電柱を地中化したり地域冷暖房の採用、中水道の導入など基盤整備に非常に気を遣っています。
オフィスビルについては、街の統一性を保つためデザインや色を決めており、看板にも規制を加えています。そして進出した企業のビルには美術館やドームシアターなどの文化施設を併設して地域に解放しています。これも特色のひとつですね。
――『みなとみらい』にはランドマークタワーがありますが、幕張のシンボルはコンベンションセンターなのですね
麻生
そうですね。お互いにベイエリアということで競争していきたいと思っています。幕張メッセは、来年に10周年の節目を迎えます。元年にオープンして以来、昨年10月までの累計入場者数は5千万人を達しました。
知名度の高いモーターショウをはじめ世界エネルギー大会、第1回asem経済閣僚会合など多彩な国際会議が開催されており、千葉県にとっても非常に意義深いことです。フィギュアスケートや柔道の世界大会などスポーツ関係のイベントも盛んです。
展示面積だけで54,000uの規模があり、それに増築部分の9〜11ホール18,000uを加えると72,000u。これは一昨年オープンした東京ビッグサイトの80,000uに肩を並べています。その意味でも幕張メッセは千葉県のイメージを格段に上げたものと自負しています。
――幕張新都心の第2ステージ推進方針を策定中ということですが、これは既存の計画を変更することなのですか
麻生
変更ではなく、今までの成果と蓄積を活用し更に発展させていくものです。幕張新都心は、来年が10周年です。経済情勢が停滞期のため企業進出は思わしくありませんが、首都圏整備における幕張の役割は今後一層増大していきます。昨年、国際展示場を拡張しましたが、アジア経済研究所の進出に伴い、千葉県が(仮称)幕張国際センターを設置することで幕張の国際化に寄与することが期待されています。
また、幕張は海に面して海浜公園がありますが、将来的には旅客船埠頭やマリーナを建設して海からのアクセスを充実したいと考えています。さらに昨年12月、デンマークのレゴ社がレゴランドの建設候補地として幕張海浜公園の一部を選定し、海浜公園でのテーマパーク建設も具体化しています。
これまでは、未来型の国際業務都市を目標にしてきましたが、今後はそれをベースに、国際交流都市、産業創出都市、文化創造都市もキャッチフレーズにして第2ステージをまとめていきたいと考えています。
――企業が幕張に立地するメリットとしてアピールすることは
麻生
幕張新都心は、東京と成田からそれぞれ30分の好位置にあります。しかも大規模なオフィススペースが確保でき、コンベンションセンターの幕張メッセから国内外の最新の情報が得られることは、進出企業にとって大きな魅力です。国内外で著名な企業も多数立地しています。また、機能的に優れたオフィスビルや、ベンチャー企業を支援する施設もあり、進出を支援する措置も用意されています。背後に住宅地があり、通勤の利便性もあるので、ぜひ進出してもらいたいと思います。
――国や民間への提言や注文は
麻生
幕張新都心は、千葉県の発想で自ら資金を投入して整備してきました。国には権限や財源の委譲によって地方の特色を生かした仕事をやらせてほしいと思います。
また、幕張新都心は、新しいことに挑戦する街ですので、民間の方もぜひ新しい試みをこの街でしてほしいと思います。

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