建設グラフインターネットダイジェスト

<建設グラフ97年4月号>

interview

各区の防災マップを作成

全戸に配布、全市に自主防災組織を結成へ

千葉市市民局長 川島勝人 氏

川島 勝人 かわしま・かつひと
昭和13年1月21日生まれ
昭和34年10月  千葉市役所入所
  56年 8月  税務部市民税課長
  63年 4月  税務部参事
平成 3年 4月  税務部長
   5年 4月  稲毛区長
   7年 4月  市民局長

千葉市市民局の川島勝人局長にご登場いただいた。市民局は防災対策から、コミュニティづくり、文化振興まで非常に間口が広いが、中でも市民局が重要施策として推進しているのは防災対策と市民文化の振興、女性の地位向上、そして駐輪対策だ。人口増加の著しい同市の川島局長に、直接市民と対面する局の政策について語ってもらった。
―防災は全国共通の課題になっていますが、千葉市の防災対策についての取り組みは
川島
阪神・淡路大震災のような直下型地震は、千葉市も決して無縁ではありません。市としても応急対策の見直しを手掛けています。昨年1月には、緊急時の職員の出動にどのくらい時間がかかるのかを調べるため、地震を想定して予告なしに参集させる訓練を実施したところです。
一方、市の地域防災計画は平成6年に見直したばかりですが、その後、阪神大震災の発生を機に、避難場所、避難所の見直しを早急に行い、非常食についても被害想定15万人の3食分に備蓄量を増やしたほか、各区ごとの防災マップを作成し全世帯に配布しました。また、全市を監視できる防災用映像システムを整備したほか、新防災行政無線システムを公共施設やライフライン事業所など600か所以上と結ぶ整備を順次進めています。
阪神大震災では水の問題が深刻でした。私たちは各区の消防署等に耐震性井戸付貯水槽を設置していますが、市内56中学校区を単位に小学校に毎年10か所ずつ非常食等の備蓄品とセットにして非常用井戸を設置しており、12年度までには完了する予定です。また、浴場組合とも協定を結び、災害時の井戸の提供をお願いしています。これは全国でも初の試みです。

―地域住民の防災体制についてはどのように考えていますか
川島
毎年1回、市内の自主防災組織のリーダーを対象とした研修会を開催していますが、災害時はまず何と言っても地域住民の助け合いが基本です。
最近は住民の関心が高まってきましたが、組織率がまだ5割弱と低いので、自主防災組織の結成を呼び掛けているところです。地震に対して住民にあまり危機感がないこともありますが、行政としては当面の応急対策に手抜りのないようにしているところです。

―千葉市は埋立地が多いと聞いていますが、液状化対策にはどう取り組んでいますか
川島
所管の建設局で対策を検討していますが、既存の高層住宅地については難しい面があります。市民局としては予防、応急、復旧・復興対策の三段構えの中で、8年度末までにまとめる地域防災計画をもって万全を期したいと考えています。

―住宅地域の道路幅は、十分ですか。また、低層の木造住宅は密集していませんか
川島
低層住宅は旧市街地に若干、密集しています。したがって、まちづくりの中で都市計画も含めて対応していく必要があります。今の段階では応急の緊急対策を重点的に実施してきましたが、これからは予防対策など全般にわたって取り組まなければならないと考えています。

―ところで、千葉市も東京への通勤する市民が多いようですが、駅には自転車を放置しているケースが目立ちますね
川島
多少オーバーな表現になりますが、放置自転車の対策は永遠の課題といえます。6万台程度の自転車のうち、放置自転車は2万台に上ります。現在、市内にjrと私鉄、モノレール合わせて46駅があり、駅周辺に駐輪用地を手当てするのが難しいことが悩みです。
昨年9月、千葉駅東口の地下道にラック式の駐輪場を設置しましたが、今後とも土地の有効利用を図るために立体化を検討したいと考えています。

―一定の日数が経過すれば廃棄処分したり、リサイクルするという方法は
川島
2万台のうち1万台は引き取りに来て頂いていますが、残りはリサイクルをするか、廃棄処分をしています。いかんせん保管場所にも困っているのが実情です。
指導員を配置して放置自転車の指導・啓発をしていますが、このほか保管料を改定したり、地元の自治会の協力をいただき、「クリーンキャンペーン」として放置自転車の追放運動を展開しています。しかし、自転車は消耗品という感覚を持たれているのか、思うように成果が上がっていません。

―地域のコミュニティ施設づくりについては、どのような事業を行っていますか
川島
市内には各中学校区単位に公民館が、また、10か所にコミュニティセンターがあります。現在、11館目のセンターを建設するところですが、コミセンはあと2か所を予定しています。今のところは、用地を選定中で、市内を13のエリアに分けて建設計画を進めています。
各種サークル活動や軽スポーツなどに年間延べ130万人が利用しており、地域活動の拠点として親しまれています。行政としてはリーダー育成の効果も期待しています。

―コミュニティセンターなどの文化施設における活動を通じて市民の文化が形成されていくと思いますが、行政としては、こうした活動をリードしていくべきか、あるいは後方支援に徹するべきか、といったスタンスのとり方が問題ですね
川島
確かに難しい問題です。そのため、本市の文化行政の基本的な方向を明らかにし、市民の方々のご理解とご協力を得ることを目的として、8年度から3か年計画で千葉市の文化施設マスタープランをまとめているところです。
一口に文化といっても、その概念は非常に幅が広いので、市民各層にかかわる文化施策の展開をめざしたいと思っています。

―最近、女性の社会進出は目覚ましいものがありますが、男女共生社会の実現に向けた取り組みは
川島
女性の社会参画を支援するため、平成3年度に女性行政のためのハーモニープランを策定し、これに基づいて推進しています。
その拠点として女性会館を建設中で、11年度に完成の予定です。これは福祉との複合施設です。
また、今後は市の各種審議会における女性委員の割合を高めることを考えています。しかし、いずれにしろ社会全体の意識改革が基本になるものと思います。

―最近、地方分権の議論が高まっていますが、千葉市はこの問題についてはどう考えていますか
川島
行革のひとつの柱といえますが、まだ全体像が見えません。ただ、財源の伴う地方分権であるべきだと思います。

―自治体としての地方分権として、各区役所へ権限を移譲するという方向性は考えられますか
川島
市内には6つの区役所がありますが、人口は1区平均15万人程度です。そのため、現在では窓口業務が主体となる小区役所制度となっています。このため、地域では道路、下水道、清掃業務まで含め区役所で対応できるようにとの要望もあり、現在、区機能の検討委員会を設置して見直しを進めているところです。したがって、当面は段階的に進めるのが基本的な考えです。


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