建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ1998年4月号〉

interview

有料道路11路線を運営

3月20日に東金九十九里有料道路が供用開始 料金徴収業務の無人化を推進

千葉県道路公社建設部長 海保 剛 氏

海保 剛 (かいほ・たけし)

昭和19年12月生まれ、千葉県成田市出身、日本大学理工学部土木工学科卒。
昭和 43年   千葉県庁に入庁
54年   印西市下水道課長
59年 土木部道路維持課市町村道係長
63年 千葉県土地開発公社公務部建設課長
平成 4年 工事検査室検査監
6年 企業庁千葉建設事務所次長
7年 千葉県成田土木事務所次長
8年 土木部道路計画課主幹(計画担当)
9年 現職
独立採算の有料道路を運営している千葉県道路公社の海保建設部長にご登場頂いた。同公社は現在、11路線、総延長にして85qの有料道路を運営しており、3月20日には東金九十九里有料道路(10q)が供用開始する。海保部長に有料道路の現況と課題などを聞いた。
―県内の有料道路整備の現況を伺いたい
海保
千葉県道路公社の運営する一般有料道路の料金は、既存道路と比べた距離差による走行時間の差や燃料費、車両の傷みなどの差から求められる便益額を基に設定されるようになっており、おのずと料金鎖については限度があります。また、建設事業費は、供用後決められた徴収期間内に償還する制度となっていますが、建設費や維持管理費の高騰などにより、料金徴収総額だけで採算性が確保できる新しい有料道路を建設することは難しくなっています。
このため、国の道路審議会からの答申では、建設コストや運営費の削減の努力を求めるばかりでなく、一般公共事業と有料道路事業の合併施行や徴収期間の延長等の方針が盛り込まれています。
―千葉県道路公社の運営する有料道路については
海保
現在、県内に11路線、延長にして約85qの有料道路を供用しており、利用者の利便性を維持しながら採算性の確保に努力しているところです。
合併施行で建設中の路線として、銚子新大橋有料道路と東金九十九里有料道路があります。
銚子新大橋有料道路は、現在供用中の銚子大橋の渋滞対策として計画され、一般公共事業は、主に用地取得や橋梁下部工を、有料道路事業は、橋梁上部工や安全施設工等の建設を分担しています。
3月20日に供用開始を予定している東金九十九里有料道路は、東金市街地の渋滞対策や観光産業の活性化に寄与する道路として計画され、有料道路事業は、主に舗装工と安全施設工等を分担しています。
さらに、料金徴収期間中は、道路公社が維持管理をおこない良好な供用状態を保ちます。
この合併施行により、適正な料金で走行性や快適性の良い有料道路が利用できるようになります。
また、急激な市街化の進む干葉市内で千葉外房有料道路が、周辺既存道路のバイパスの機能を担っていますが、有料道路の混雑が起こり始めてきたことから、4車線化の工事を進めています,この建設事業は、利用交通の増加により料金値上げをせず実施できており、徴収期間以降の急激な転換交通量の増加にも対応できるようになると考えています。
―一般有料道路の場合、制限速度は高速道路並ですか
海保
現在、千葉県道路公社が運営又は建設している有料道路は、いわゆる高速道路を意味する自動車専用道路ではなく、周辺道路と平面交差をしている一般の道路です。ですから、特に速度規制のしていない場合は、法定速度の時速60qが制限速度となります。
しかし、有料道路として道路のサービス水準が高くなるよう極力平面交差が少ない、道路線形の良い道路構造となっているので、平均走行速度は、他の一般道路より早く走ることが出来ます。
また、海の見える銚子有料道路や九十九里有料道路、山並みの見える鴨川有料道路や房総スカイライン有料道路が観光遍路として、すばらしい景観を提供しています。
近年、高齢者や女性ドライバーが増えていることから、安心して一休みできるトイレ併設のパーキング整備にも努めています。
―アイデア次第で通路の付加価値を高めることは可能ですね
海保
その通りです。しかし、適正な料金を保ちつつ、快適性を高める道路整備を進めるところが、有料道路運営の難しいところです。
また、一般の道路に近い形態の道路ですから、料金を払うという抵抗感があり、サービス水準の不満や早期無料化の要望が出ているのも現実です。
―有料であることの意味が理解されていないのですね
海保
それが大きな悩みです。道路公社が運営する有料道路の目的は、道路整備に対する自治体の財政負担を軽減しながら、早期に必要な道路を完成させることであり、そのために受益者負担としての料金を徴収することとなります。
有料道路を利用することで、目に見えないものですが、時間短縮や走行経費、快適性などのメリットを受けていますので、その点のご理解を頂きたいと思います。
―安全面への構造上の配慮は
海保
有料道路の構造基準は、一般の道路と同じですが、道路の線形をゆるやかにしたり、舗装や安全施設の維持管理を良好にする努力を常におこなっています。
また、緑化や休憩所の整備もドライパーの疲れを癒し、注意力を維持することに役立っていると考えています。隣接県の道路公社と広域連合で取り組む考えは、千葉県道路公社の運営する有料道路も、県全体の道路網の一部として機能していますので、常に県の計画に基づいて整備されてきた道路です。県境に係わる道路の場合、両県の合意に基づいて、どの様に整備するべきかが決まってきます。その一助として有料道路事業を行う道路公社が開与することとなります。
道路の管理者が輻輳しないように県境の有料道路は、建設段階で道路公社の役割分担が決まります。
―ビジネスベースで考えるなら、東京都内にアクセスする路線だけを整備運営するのがベターでは
海保
そうですが、県の道路網を補完するという役割も担っていますから、採算性を保てる範囲内で有料道路整備を進める場合もあります。それにより、県の進める「県都一時間構想」等に寄与できると考えています。
―ところで、最近は建設資材のリサイクルと、事業のコストダウンが注目されていますが、この点にはどう取り組んでいますか
海保
有料道路は、まず採算性の確保が重要な要素ですから、リサイクル資材がコスト高につながるのであれば、積極的には導入できなくなります。
リサイクルについては、社会全体という広い視野で取り組んだ上で有料道路が担える役割を模索していきたいと思います。
―再生材利用は、確かにコストダウンとの折り合いが難しい。建設省は短期ではなく、長期的な視点で考えてほしいと強調しています
海保
しかし、道路公社の運営する有料道路は、単路線毎に採算性を確保する必要があり、さらに徴収期間も限られていることから、長期的な対応を独自に推進することは難しくなります。
―償還期間という制約もあり技術者の創意工夫だけでは、やはりクリアできない問題もあるのでしようか
海保
有料道路は、建設の施工技術ばかりでなく、その運営という経済的な側面も持っています。建設コストを低減することは当然ですが、維持費や料金徴収経費などの運営費を適正なサービス水準を保ちつつ節約することも大切なことです。
例えば、交通状況を勘案し、料金所を機械化して人件費を少なくしている路線もあります。また、維持工事も、道路の状況を常に把握しながら削減に努めています。

HOME