建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ1998年2月号〉

interview

21世紀に向けて、東京都の都立高整備の在り方

キーワードは「ゆとり」「うるおい」「環境」「情報化」

東京都教育庁施設部長 石井 昌浩 氏

石井 昌浩 (いしい・まさひろ)

昭和15年10月25日生まれ、早稲田大学法学部卒。
昭和 40年 4月 東京都教育庁入都
53年 4月 教育庁八丈出張所副所長
平成 元年 4月 福利厚生部厚生課長
3年 1月 工業技術教育センター所長
5年 4月 教育研究所次長
7年 6月 現代美術館副館長
8年 7月 文化会館副館長
9年 4月 現職
少子・高齢化の今日、社会情勢の変化にともなって学校施設が果たす社会的役割も異なってきた。近年の情勢を踏まえながら、東京都教育庁では、どんな学校施設を理想として整備に当たっているのか。施設部の石井部長にその基本理念を語ってもらった。
―近年は青少年による犯罪事件やいじめが深刻な社会問題となっており、主な要因は情操教育にあるとされています。これは施設整備の面でも反映してくるのでは
石井
確かに昭和50年代までの学校施設は、ベビーブームに伴う急増対策など、いわば、量的整備が中心になり、質的な改善を省みる余裕がなかったため、機能中心の定型的、画一的な施設となったきらいがありました。
今後は、昭和50年代に建築した学校が改築時期に入るため、改築にあたっては、生徒が一日の大半を過ごす生活の場として、その人間形成に資するため、ロビー・ラウンジ・ランチスペースなどの「ゆとり」と「うるおい」をもった、快適で文化性のある施設整備に配慮していきたいと思っています。
―学校施設は、広い敷地を占有し、グラウンドの砂ぼこりや生徒の歓声などの騒音のため、とかく地域社会では迷惑施設などと言われます
石井
しかし、学校施設は今日では、単に学校教育のための施設だけではなく、地域住民からは生涯学習・スポーツの場としての機能を求められています。
したがって、学校施設の整備にあたっては、近隣住民も利用しやすい施設として配慮していくというのが、今日の潮流です。例えば地域開放用倉庫を整備するほか、便所、玄関を開放し、地域住民の用に供するということです。
のみならず、「東京都福祉のまちづくり条例」では、敷地内の段差の解消、エレベーターの設置、身体障害者用便所の配置など13項目にわたった整備基準を定めています。今後ともノーマライゼイションに向けて、より一層障害者や高齢者の円滑な施設利用に配慮した都立高校の整備を進めていく考えです。
―最近では、環境への影響を極力抑えることが、どの分野にも求められていますね
石井
地球的規模の環境保全が、社会的に大きく取り上げられています。そうした中で、学校教育においても環境教育の必要性が高まっています。
文部省も、平成8年3月に「環境を考慮した学校施設(エコスクール)の整備について」をまとめています。
教育庁としては、これに基づき都立高校の施設整備にあたっては、雨水の有効活用と流失抑制対策の実施や、型枠材の熱帯材使用抑制、フロン排出抑制及びノンフロン化、さらに学校施設の緑化を図るなど、「環境にやさしい施設造り」に努めたいと考えています。
―かつてはll教室が注目されましたが、最近では、コンピュータ教育の導入が、全国的な傾向のようですが
石井
もちろん、経済・社会の進展による教育課程の改正に対応できるよう、学校施設は可能な限りフレキシブルな設計にしていかなければなりません。
多様な情報手段の急速な発達など、急激な社会の変化に伴い多様化、高度化する学習需要に対応するため、情報通信・処理機能等の導入が図られています。これらの機器に対応した施設面での整備を図っていかなければなりません。
オフィスビルがインテリジェント化したように、学校施設も情勢に合わせてインテリジェント化を図る必要があるのです。

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