建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ1998年1月号〉

interview

まちは市民との共同作品

今後の地域の発展には地域の自助努力が必要不可欠

北海道帯広市長 高橋幹夫 氏

高橋 幹夫(たかはし・みきお)

昭和16年生まれ、帯広市出身、早稲田大学文学部卒。
帯広市役所に勤務。
平成2年4月に市長に就任。現在2期目。
任期満了日は平成10年4月20日。
全国地方拠点都市地域整備推進協議会副会長
全国都市公園整備促進協議会理事
全国市長会評議員。

平成10年4月20日で2期目の任期が満了する北海道帯広市の橋幹夫市長に、ご登場いただいた。2期・8年間の公約については、ほぼ達成することができたと語る。また、今後の地域の発展には、国任せではなく、地域の自助努力が必要不可欠であると主張している。
―市長のまちづくりに対する基本的な考えは
これからの時代は市民にも、自分たちの住んでいるマチに対して自分たちで何ができるかを考えていただき、行政と住民が一緒にスクラムを組んで、まちづくりを進めていくことが重要だと思います。
少し気取った言い方になりますが、私は「まちづくりとは、市民と『協同思考』『協同作業』そして、できあがるのは『協同作品』としてのマチ」という言い方をしています。これを実施するために、市民にどう参加してもらうかが重要なことです。
帯広市は、町内会の活動をはじめ、いろいろな住民活動が非常に盛んですが、もっと積極的に市民に参加していただくために必要なことがあります。これは私のスローガンですが、「公平・平等・ガラス張り」です。つまり、情報を公開しなければなりません。さらに、公開だけではなく、行政側から積極的に情報を提供していくことが、これからの時代は大事になってくるでしょう。
―市長就任から2期・8年が経とうとしていますが、公約の達成度などはいかがですか
すでに完了したものもあり、とりあえずはすべてに着手できたと思っています。ただ、大変申し訳なく思っているのが、企業立地を絡ませた複合型の大型開発「新産業ゾーン」が、経済状況などもあり、断念せざるを得なかったことです。私自身も非常に残念であり、関係者の方々にご迷惑もおかけしましたので、率直に反省しなければならないと思っています。
2期目の課題としては、市立病院と大学の整備がありました。市立病院もいろいろな議論がありましたが、市議会での議決も頂いて平成13年度の開院に向けて手続きなども進んでおり、平成10年度には着工する予定です。また、大学も期成会などの論議が終了すれば、具体的な内容について、きちんとした方向性を示した上で、市議会との話し合いに進むと思います。
一方、拠点都市整備事業については、jicaの国際研修センターの誘致に成功し、発展途上国からかなりの人数の方が研修に見えています。また、jr帯広駅北口の地下駐車場も平成9年度から着工し、現在掘削を行っているところです。
このほか、下水道や教育、福祉についても公約通り順調に進めることができました。下水道は普及率を90%以上にまであげることができましたし、教育はハード的な面で、校舎の改築などを行いました。
福祉は厚生省の「ゴールドプラン」に基づいて取り組んでいますが、国の予算の関係もありますので、難しい要素もあります。しかし、高齢者福祉や子供の問題にしても、ほかのマチには負けないものを実施してきたと自負しています。
―平成10年度予算は骨格予算となりますが、そのポイントは
国も我々も、財政状況はだんだん厳しくなってきており、構造的な問題もあるので、財政の健全化を第一に考えています。そのためには、今までの延長で予算を配分するのではなく、一旦、事務費も含めてすべてを白紙に近い状態にして、あらためて組み直すことが必要だと思います。
これまで無駄があったということではありませんが、できる限り投資効果などを検討し、場合によっては効果のないものは思い切って中止することもあり得るでしょう。これによって、本当に必要な予算を確保するため、各部長を中心に現在、検討しているところです。
―広域行政の取り組みについては
十勝圏は、かなり進んでいると思います。十勝の20市町村は、地形的・国土的・風土的、あるいは基幹産業である農林水産業の一次産業での結びつきなどによって、広域行政、いわゆる事務組合がたくさんあります。20市町村すべてが加盟している事務組合だけでも、教職員の研修センターや高等看護学校のほか、珍しいケースでは伝染病対策についての事務組合などがあります。また、十勝全体の町おこしを行うための企画立案も20市町村で実施しています。
このほか、周辺町村で事務組合を運営しているのはごみ処理、上・下水道、消防などがあります。
中でも特徴的に際だっているのは、「十勝圏振興機構」です。これは財団法人として数年前に発足し、通称「十勝財団」と呼んでいますが、官・民が一体となって、十勝圏の振興を図っており、十勝の協調性を表していると思います。この財団は、道立の食品技術加工センターが受け皿となり運営していますが、これからは、この食品加工物を核とした産業クラスターにまで引き上げていきたいと思っています。また、十勝の特長を生かしながら十勝の地域おこしを目指していければと思います。
―帯広市を含め、十勝の発展のために国や中央省庁に求めることは
これからの時代の流れから言うと、地方は地方が求めている地方であって、中央から見た地方とは異なっているということです。地方が本当に求めているものを理解していただくこととあわせて、規制緩和などをもっと進めていただき、地方が特色を生かして頑張っているものを応援していただきたい。
この意味からも十勝圏は、20市町村が力を合わせて自立できる体制を造るべきだと思います。これから全国的には、地方が自立していく方向でまちづくりが進んでいくのでないかと思いますし、こういう流れをしっかりとつかみ、自助努力をしながらも、不足分は応援していただくと言うことを忘れてはならないと思います。
国民の生活はすべて地域に根ざしているわけですから、国民にとって一番近い行政組織というのは市町村になるわけです。だから、国には国の仕事、外交や防衛などがあるわけですから、市町村との役割分担が明確にされてくれば、地方分権ということにもなるのではないでしょうか。
それには、我々地域の行政が自助努力を精一杯して、今までのように国任せではなく、自分たちの限られた財政などの中で、どうまちづくりを進めていくかが重要になってくると思います。

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