建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ1998年1月号〉

interview

道路の安全確保に全力

『豊浜』、『第2白糸』の教訓を生かす

北海道開発局函館開発建設部長 佐久間達男 氏

佐久間 達男(さくま・たつお)

昭和21年8月23日生まれ、44年北海道大学工学部土木工学科卒業。
昭和 44年 4月 運輸省第三港湾建設局勤務
48年 4月 北海道開発局に出向
51年 9月 北海道開発局室蘭開発建設部 苫小牧港湾建設事務所第2計画課長
52年 4月 北海道開発局港湾部港湾建設課開発専門官
54年 4月 留萌開発建設部留萌港湾建設事務所 第2工事課長
55年 4月 留萌開発建設部留萌港湾建設事務所 第1工事課長
56年 4月 帯広開発建設部十勝港建設事業所長
59年 4月 小樽開発建設部小樽港湾建設事務所長
62年 4月 北海道開発局農業水産部水産課長補佐
63年 4月 北海道開発局港湾部港湾計画課長補佐
平成 元年 2月 北海道開発局港湾部港湾計画課港湾企画官
2年 4月 釧路開発建設部次長
4年 6月 留萌開発建設部次長
7年 6月 北海道開発局港湾部港湾建設課長
9年 6月 函館開発建設部長

函館開発建設部長に就任した佐久間達男氏に、ご登場いただいた。佐久間部長は港湾畑の専門家で、開発局港湾建設課長から起用された。平成9年8月の第2白糸トンネル崩落事故が発生したためか、管外とはいえ、函館開発建設部としても崩落事故を深刻に受け止めており、『管内の道路も海岸線の厳しい地形を通っている。安全確保は最大の課題』と表情を引き締めている。『常に住民の意見に耳を傾けて事業の推進に努める』ことを抱負とする同部長に管内の課題や取り組み状況を語ってもらった。
―第2白糸トンネルの事故はショックでしたが、この管内の状況は
佐久間
この管内でもほとんどの道路が海岸線を通っており、山側は崖になっています。中央と結ぶ動脈は国道5号線一本しかありませんし、鉄道も道路と同様に厳しい地形を走っています。
日本海と太平洋を結ぶ路線にしても、渡島半島中央部の急峻な山岳を乗り越えていくわけです。当然、川や沢がたくさんあり、沢伝いに道路を設定することになりますが、地滑り地帯が多い難点があります。
したがって、道路の安全性確保がこの管内では最も重要だと思っています。
管内の経済発展を図っていくためには高速道路や函館と江差を結ぶ高規格幹線道路の整備も急がなければなりませんが、今回の第2白糸トンネル崩落事故を見ても、住民生活を守るのがまず第一と考えています。

―着任の際、職員の方たちにはどう訓示しましたか
佐久間
行政改革、予算の削減など開発局はいま、厳しい状況に置かれています。
したがって、職員それぞれが自分の職務に効率的に、また的確に取り組むこと。そのためには特定の情報を鵜呑みにせず、できるだけ多くの情報をキャッチし、自分の頭で考え、物事を判断する訓練をしてほしいとお願いしました。
―本局で防災マニュアルを作成していますが、防災対策についてはどう取り組んでいますか
佐久間
できるだけ住民の意見を聴くことが大切です。8月の野田追橋の陥没事故(※)では、迂回路を設定したのですが、通常は交通量の少ない所にいきなり車両が殺到しましたので、地元の方々から事故の多発を心配する声が高まりました。
そこで、道路管理者の町と道警、国、道の4者で協議して大型車両の通行を制限しました。私たちが何をやっているか、なぜやっているのかということを、わかりやすく報道機関などを通じて提供していくよう心がけたいと思います。
また、第2白糸トンネルのような災害発生時では、担当事業に関わらず開発局全体で対応していきたいものと考えています。 ※渡島管内八雲町野田生の国道5号線で野田追川にかかる「野田追橋」の橋脚1本が8月の豪雨で約1m沈下。このため、橋面の一部が陥没した。
―管内市町村からはどんな要望がありますか
佐久間
国の行財政改革に伴って、来年度からは公共事業費の削減、重点的投資が政府の方針となっています。このため、地元では何が最も重要ですかと聞いてみると、ほとんどの市町村長さんから『全部が一番』という答が返ってくるのです。実際、どれも地域に密着した要望ばかりですから、いちがいに評価するのは難しいものですね。
―局としての判断ではどんな事業を重点的に進める方針ですか
佐久間
例えば、函館港などは5万トンクラスの船が接岸できる水深14mの大型岸壁を建設していますが、物流基地としては1バースでは足りないので、来年度に向けて横に12mの岸壁建設を予算要求しているところです。
また、奥尻の青苗漁港の背後には津波対策として防潮堤が設置されましたが、漁港の地盤より高いので、実際には津波に襲われたら漁民は閉じ込められる恐れがあります。そこで、緊急避難広場を兼ねた二階建ての用地(人工地盤)を整備しており、来年度にはほとんど完成します。福島漁港ではフュリー就航に対応する関連施設を整備しています。
道路整備事業では高規格幹線道路の函館江差自動車道のほか、地域高規格道路として渡島半島横断道路の整備区間である国道230号花石道路の整備を促進します。さらに、国道5号・函館新道の大沼トンネルの供用や、国縫道路の早期着工を目指して環境アセスメントを行います。
空港では函館空港の滑走路延長(2,500m→3,000m)の早期供用を目指して、延長部の用地造成を継続して実施します。

―治水や農業農村整備事業では
佐久間
治水事業は、今年度が第9次治水事業五箇年の初年度にあたります。主な事業は後志利別川において下流能力の拡大や、自然と共生する「アクア・グリーン・ストラテジー」を推進します。また後志利別川の洪水調節や流水の正常な機能の維持を図るため「美利河ダム」の整備を行います。
農業農村整備事業は、国営かんがい排水で「知内地区」が今年度完了し、「利別川地区」の二期工事が新規着工します。さらに、農業開発事業の「八雲地区」や草地開発事業「奥尻地区」はそれぞれ地区完了に向け整備を進めていく予定です。どれも地元にとっては重要な施策ですから、地域と連携をとりながら進めていきたいと思います。


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