建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ1998年1月号〉

interview

初代部長として建設部をリード

まだまだ大きい公共投資の経済的波及効果

北海道建設部長 尾形 浩氏

尾形  浩(おがた・ひろし)

昭和14年10月27日生まれ、士別市出身、士別高、室蘭工大卒。
昭和 38年 入庁
49年 旭川土木現業所都市施設係長
53年 土木部管理課主査
57年 釧路土木現業所事業課長
57年 釧路土木現業所事業課長
59年 企業局企画開発課主任技師
61年 土木部道路課高速道室主幹
62年 旭川土木現業所技術部長
63年 土木部道路課参事兼市町村道室長兼高速道室長
平成 2年 同道路課長
3年 札幌土木現業所長
5年 土木部技監
5年 総務部長
7年 後志支庁長
9年 現職

北海道の土木事業と建築事業は、これまで土木部、住宅都市部と別々に行ってきたが、9年度からは両者を統合して建設部として生まれ変わった。その初代部長として、前後志支庁長だった尾形浩氏が就任した。尾形部長は「点と線と面をつなぎ、一体的な整備が今後は必要になる」と主張する。一方、巷間、公共事業不要論がブームとなっているが「公共投資の北海道経済に与える影響は、甚大」とし、自立性の低い本道経済の実態を見落としている安易な論調に対しては、公共投資がもたらす産業・経済的インパクトという現実的な側面から警鐘を鳴らしている。
―北海道の土木行政と建築・まちづくり行政が合体して建設部がスタートしましたが、その意義は
尾形
北海道は、総合行政の推進・地域重視・政策重視の道政の展開、トップマネージメントの補佐機能の強化などをねらいとした道政改革の一環として、10部を8部に再編しました。
これまで土木部は、社会資本整備のなかでも主に「点と線」を担い、住宅都市部はまちづくりの「面」を対象としてきましたが、建設行政というくくりで見ると、両者は類似関連性を持っています。しかも、今後は、もっと面的に広い地域を対象に、それらの有効活用を考えた総合的、一体的な整備が求められており、それが地域の豊かさをつくっていくことになるという考え方から、両部を統合再編し新たに建設部が誕生したのです。
―その建設部の初代部長となりましたが、両部をどうとりまとめ、どんな抱負をもって臨みますか
尾形
2つの部が一緒になり、3,200人の職員と6,500億円以上の予算を有する全国にも例のない大きな組織となりました。この組織再編の目標を実現するためには、今まで以上に各課の情報交換、連携を図り期待に応える努力をしていかなければなりません。
北海道は広大な土地と豊かな自然環境に恵まれ、限りない可能性と発展性を秘めています。建設行政はこの可能性を切り開き、21世紀の新しい北海道をつくるために社会資本の整備を通じ、活力ある地域社会や安全で快適な生活環境を実現するという大きな役割を担っています。
良質な社会資本ストックは、現在及び将来の道民の安全で快適な暮らしや経済社会の発展を支える基盤です。北海道が豊かさと活力に満ちた北の大地としてさらに発展していくためには、治水などの国土保全事業や住宅、公園、下水道などの生活環境の整備、地域をつなぐ交通網の整備など社会資本の整備を進めていく必要があります。
地域の皆様の声をお聞きし一緒に考え、総合的、一体的な社会資本の整備と魅力あるまちづくりの推進に取り組んでいきたいと思います。

―公共事業不要論が声高に主張されていますが、社会資本整備は本当にムダだったでしょうか
尾形
とんでもない論調ですね。公共事業によって形成される社会資本ストックは、先に述べた通り、道民の生活や経済社会の発展を支える基盤であり、社会資本の整備がもたらす効果は、決して直接的な経済効果にとどまらず、生活と経済社会に対して多様な面で重要な役割を果たしているのです。
北海道は、全国の2割の面積に、全国の5%の人口が住むという広域分散型社会を形成しています。そして、他聞にもれず出生率が低く急速な高齢化が進んでいます。しかも、地理、地質、気象的に厳しい自然状況下にあることから自然災害が発生しやすく、水害、地震、土砂災害などに対する生活の「安全」を求める二―ズは高いのです。
しかしながら、開発の歴史が浅いため、施設の整備はいまだ十分な状況にあるとは言えません。なにしろ本道の都市間距離は本州に比べ約2倍であり、札幌〜網走間の時間距離は、なんと東京〜青森間に匹敵します。また、鉄道網の廃止などで輸送手段は自動車交通に大きく依存しています。
にも関わらず、高速道路の整備水準は全国に比べ大きく立ち後れているほか、集落が分散していることから、冬期間の交通確保が民生安定上必要条件とされているなど道路網の整備に対する道民二−ズも高いのです。

―生活、産業とも基盤整備は十分とはいえないのですか
尾形
たとえば地域の快適な生活環境の基本となる下水道の整備状況を見ても、普及率の平均は全国を上回っていますが、都市部と郡部との普及率には大きな開きがあります。中には全くの未着手市町村もかなり残されており、早期整備が求められています。
一方、北海道は借家率が全国に比して高く、さらに公営住宅への依存度が高い。また、共同住宅における木造の比率が高く、老朽化したものが多いため、快適でゆとりのある地域社会の形成に向けて整備促進が求められています。
道路、空港、港湾などの社会資本は、人と物を広域的に、大量かつ迅速に輸送することにより、経済の発展に重要な役割を担ってきました。今後はさらに、輸送の広域化、経済の国際化、高度情報化に対応して、効率的な生産活動を支援できるよう社会資本の整備を進めておく必要があります。
都市への人口や経済・社会的な諸機能の集中、電気、ガス、水道などのライフラインに対する都市機能の依存度の高まりから、災害発生時の被害だけでなく、経済活動に対する影響度も大きくなっています。
地方圏においては人口の減少、高齢化などの問題が顕著化しており、地域の自立的発展と連携を促し、活力ある地域社会の形成を図るためにも、地域間、地域内の交通ネットワークの整備は一層進めていかなければなりません。

―不要論にしたがって社会資本整備をすべて断念すると、どうなりますか
尾形
本道経済は、公共投資への依存度が高い。したがって、公共投資は単に建設業界だけの問題ではなく、北海道経済全体に大きな影響が出るものと予想されます。
ですから、21世紀を展望した地域の均衡ある発展や、誰もが安心して暮らせる住み良い北海道づくりをめざし、今後とも着実に、次の世代に残すべき良質で安全性の高い社会資本の整備を進めることは、やはり必要なのです。

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