建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ1998年1月号〉

interview

除雪機械の開発で我が国の積雪地域に貢献

テーマはコスト縮減と安全対策

北海道開発局建設機械工作所長 野坂隆一 氏

野坂 隆一(のさか・りゅういち)

昭和22年9月29日生まれ、47年北大大学院修了。
昭和 47年 建設省入省
49年 建設省四国地方建設局
54年 北海道開発局道路計画課開発専門官
57年 建設省関東地方建設局営繕部建築第1課長補佐
56年 建設省計画局環境管理官付課長補佐
59年 函館開発建設部企画課長
59年 函館開発建設部企画課長
61年 北海道開発局道路計画課長補佐
63年 室蘭開発建設部室蘭道路所長
平成 2年 釧路開発建設部次長
4年 札幌開発建設部次長
6年 北海道開発局道路建設課長
9年 7月 現職

北海道開発局の事業を裏方で支えているのが機械工作所。一般には馴染みの薄い出先機関だが、道民の快適な冬の生活や産業活動に欠かせない道路除雪の技術開発に取り組むなど、その技術水準の高さは、わが国の機械除雪の生みの親という事実からも、うかがい知れる。最近は災害対策機械や環境にやさしい融雪剤散布車の改良にも実績を上げており、技術開発のテーマは多彩だ。機械工作所の技術開発は公共事業費のコスト縮減と安全対策にも貢献している。最近の話題を野坂隆一所長に聞いた。
―昨年7月に就任してから半年が過ぎましたが、改めて機械工作所の役割についてお伺いします
野坂
機械工作所が発足したのは大正8年です。この間、機械の技術開発を通じて北海道開発局の効率的な事業実施を縁の下で支えてきました。
ひと口に機械といっても、除雪機械の技術開発が主体です。世界的にも例を見ない多雪地帯にこれだけ多くの人口が集積しているのは、冬の除雪が行き届いているからだと思います。わが国の除雪機械の多くは工作所が開発してきたもので、その意味からも私たちは北海道の発展に貢献してきたと自負しています。
―昨年の岩盤崩落事故では、現場に出動する機会も多かったのでは
野坂
8月25日の第二白糸トンネル崩落事故では災害対策用のヘリを飛ばし、衛星移動局から事故現場の画像を災害対策本部に送ったり、打合せ室や仮眠設備のある災害対策車、照明車がフル稼働しました。
機械工作所に昨年、防災機械室が発足し、日頃から訓練や機械の点検を行っていますので、迅速かつ的確な支援ができました。
―災害対策用機械の今後の技術開発のテーマは
野坂
不安定な岩盤を効率的に安全に除去できる工法やシステムは必要だと感じています。
災害の規模を直ちに現場で測定できない場合でも、ヘリコプターを活用して河川の氾濫面積や崩落のボリュームを数字でつかむ測定システムを検討しているところです。また、照明車は長時間エンジンをかけたままですから、耐久性の向上も大きな課題です。
―除雪機械では
野坂
機械除雪が本格化したのは、戦後になってからです。私たちが開発した除雪機械は、現在全国に普及しているものと自負しています。排雪作業中の道路の渋滞緩和のために最近開発した、一車線積み込み型のロータリー除雪車が好評で、各機関で利用されています。
高規格幹線道路の供用開始に向けて、除雪車の高速化にも取り組んでおり、技術開発のメドがついたところです。高速化が実用化されると、1台でカバーできる道路延長が長くなりますから、それだけ効率が上がります。その半面、安全性がポイントになります。最近は熟練したオペレーターが不足していますので、操作の自動化も課題のひとつになっています。
室蘭に完成する白鳥大橋の除雪対策では、路肩にたまった雪が凍り、下を航行する船舶に危険を及ぼさないように、風で雪を飛ばすエアースイーパー型除雪車を開発中です。
―スタッドレス化に伴って、ツルツル路面が問題になっていますが、何か対策は
野坂
ツルツル路面を粗面化するのも対策のひとつです。最近路面凍結防止剤については環境に与える影響を考慮し、路面状況をセンサーで測定して必要最小限の散布量を調整したり、散布車の改良に努めています。塩化ナトリウムについても風に飛ばされやすいので、水に浸して散布しています。
今の時代は、低公害型、省エネ型が要請されています。路面清掃で発生する汚泥は産業廃棄物ですから、運搬と処理の問題があります。それも水分を脱水すると、通常の土砂として利用できる場合もあります。実際に盛り土などにリサイクルしています。
―建設業界の機械化によるコスト縮減や、安全対策に関しての展望をお聞かせ下さい
野坂
われわれの仕事はまさにコスト縮減と安全対策そのものを目的としています。除雪車もいろいろな改良を重ねてきましたが、作業効率のアップは当然コスト縮減につながっています。
操作の容易性は安全対策に役立っています。道路や河川管理にかかわる機械の開発は、採算性から見ても民間での開発が難しい分野なのです。経済性、安定性の問題から、なかなか実用化されないローカルエネルギー(太陽光、風力など)も、条件によっては実際に導入も可能と思っています。
―民間では技術開発できない分野に取り組んでいるわけですね
野坂
それが機械工作所の使命だと思います。さらに、先ほども触れました凍結防止剤散布車の改良のように、コスト縮減と安全対策が機械工作所のテーマと言えるでしょう。

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