建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ1998年1月号〉

interview

多様化するまちづくりへのニーズにどう対応

住宅供給公社の業務を改訂

北海道建設部参事監 遠藤禎一氏

遠藤 禎一(えんどう・ていいち)
昭和15年4月28日生まれ、小樽市出身、小樽桜陽高、芝浦工大建築科卒。
昭和 38年 入庁
55年 住宅都市部住宅課建設係長
59年 同建築指導課企画係長
61年 商工観光部企業立地推進局主幹
63年 寒地建築研究所第三研究部長
2年 住宅都市部まちづくり推進室都市計画課長
4年 同工営課長
5年 同まちづくり推進室長
6年 同技監兼営繕室長
7年 胆振支庁長
9年 現職
北海道庁の機構改革で新設された建設部に、参事監ポストが新設された。部長級で、主に建築行政やまちづくり政策を担当する。そのポストに前胆振支庁長の遠藤禎一氏が就任した。これまではとかく行政任せだったまちづくりだが、最近では一般道民も関心を持ち始め、各界各層から様々な注文が出されるようになった。それだけに、多様な要望を巧みに取り入れながらプロデュースするには、高度な調整力やバランス感覚が必要になる。一方、建築事業のコストダウンという課題もあり、また在庫処分に悩む北海道住宅供給公社の今後の方向性をどう規定していくかといった、全国共通の課題にも直面している。遠藤参事監にとってはプレッシャーも大きいが、どうこなしていくか期待も大きいところだ。
―機構改革で建設部という新しいセクションが設けられただけでなく、参事監というポストが新設されたことは、注目に値しますね
遠藤
そうですね、土木行政と住宅都市行政を一元化し効率的な事務執行を図るため、建設部が設けられましたが、この参事監というポストは部内の重要課題の調整に関する業務として、北海道の長期計画の策定及び推進、建設コスト縮減、建設副産物リサイクルなどに関することを担当していきます。
私としては、担当している建築業務とまちづくり業務に関する部門のリーダー的役割を果たしていきたいと思います。
特に、前職では胆振支庁長を務め、その間、支庁長という立場で2年間、地域の中に入り、地域の人達や各市町村の首長、各関係団体の方々と直に接する機会があったので、その中から道のこれからの役目を勉強させていただきました。今後も、その経験を生かしていこうと考えています。
21世紀に向けて、道民の方々がより豊かな生活を実現できるよう、北国にふさわしい柱まいづくり・まちづくりを推進していく方針です。

―よく道民のまちづくりに対するニーズが変わったとか、多様化したと言われますが、どのように変化しているのでしょうか
遠藤
最近の道民生活を取り巻く状況は、少子高齢化による人口構造の変化や産業構造の転換、環境保全に対する関心の高まり、余暇時間の増大など、道民の生活実態や価値観・ライフスタイルなどが変わってきています。
このため、最近ではゆとりと潤いのある生活の実現を目指し、自然と共生できる居住環境や都市環境の整備が求められているわけです。
また、大規模な災害を契機として、都市の基盤施設や住宅など建築物の安全性の向上・確保など、安全なまちづくりに対する期待も大きくなっています。
したがって、幅広い分野を担当する建設部の重要施策の一つとして、住宅や都市の快適な環境づくりという道民の日常生活に密着した施策を積極的に推進していきたいと考えています。

―かつては事務費の削減が財政上のリストラ策とされてきましたが、最近ではそれが公共事業費にまで及ぶようになりましたね
遠藤
我が国は、経済社会情勢が変化する中で、国・地方の財政収支が著しく不均衡な状況にあることから、財政構造改革を実施し、財政再建を進めることが喫緊の課題となっています。このため、国の財政構造改革や道の財政健全化方針を受け、公共投資予算も抑制基調となることから、今後、公共事業を進めるに当たっては、社会資本のストックをいかにして長持ちさせ、いかに効果的な投資を選択するかが問われることとなります。
したがって今後は、策定を進めている第三次北海道長期総合計画に基づき、道民二―ズの的確な把握に努め、緊急性や経済性を勘案しながら効果的かつ重点的な整備を推進する必要があります。
そして、公共事業の推進に当たっては、限られた財源を有効に活用し、投資の重点化などにより投資の質を高め、投資効果の向上を図ることや、より一層の合理化・省力化の努力、事業間調整の強化など建設コストの縮減対策などにより、事業の効率性の向上を図りながら必要な社会資本の整備を着実に進めていくことが必要です。

―公共事業に批判的な昨今の世論については、どう考えますか
遠藤
公共事業は今、「投資費用に見合った効果が得られていない」、「建設のコストが高い」、「重複投資が行われているなど効率性が低い」、「公共投資の内容がわかりにくく、投資の決定過程が不明確である」などの指摘・批判を受けています。
このため、公共事業の執行に当たっては、先にも述べましたが、やはり投資の重点化などにより投資の質を高め、投資効果の向上を図ること。建設コストの縮減対策などにより事業の効率性の向上を図ること。公共事業の対費用効果など事業の実施過程に関する情報を公開し、透明化を進めることが必要でしょう。
とりわけ、建設部においては、建設コストの縮減対策を重点施策として取り組むことにしており、平成9年6月には、部内に「北海道建設部公共工事コスト縮減推進委員会」を設置しました。建設部としての行動計画を策定して、モデル工事を実施しながらコスト縮減に対する取り組みを推進しているところです。

―ところで、在庫処分に苦慮した北海道住宅供給公社は、一般分譲業務から撤退することになりましたね
遠藤
公社住宅は、価格が棟ごとに設定されますから、民間住宅のように柔軟な在庫処分がしづらいという側面があります。もう少し、不動産の流動が活発であれば事態は違っていたのでしょう。
一方、民間の開発業者でも良質で安価な住宅供給が可能な状況となっていますから、北海道住宅供給公社がいつまでもその業務に携わっていなければならないという理由はありません。今後は再開発事業に関連したものや、自治体の構想に基づいて委託されたもの、道営住宅建設の委託、また高齢者、障害者などの福祉政策を反映したものなど、より高度な政策に基づいた住宅供給業務に専念すべきでしょう。
具体的にどんな業務体系とするかは、これからさらに研究を進めたいと思います。私としては、年内に構想をまとめ、2月頃には決定していきたいと考えています。


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