建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ1998年12月号〉

interview

札幌市のまちづくりに高い評価

市民の好感度はナンバー1

札幌市建設局長 瓜田一郎 氏

瓜田一郎 うりた・いちろう
昭和17年10月12日生まれ、札幌市出身、札幌北高、北大卒。
昭和46年札幌市入庁、施設局下水道部配属、下水道局工事部計画一係長、同厚別処理場長、同施設部施設管理課長、同工事部西部工事課長、同管渠次長、建設局土木部長、7年6月現職。
北海道開拓の拠点として最初に鍬が入れられた札幌市は、今日に至るまでそのまちづくりに対する市民の評価が良好で、好感度は高い。本州都市と比べて後発だったことがプラスになり、開拓当初から計画的に行われてきたのが奏功していると言えそうだ。札幌市の土木建設事業と行政を担う瓜田一郎建設局長に、建設事業とまちづくりについて伺った。
――札幌市の市政世論調査で、「札幌を好きだ」という回答が、実に18年も連続して90%以上とのことで、理由には、街づくりを高く評価するものが多く挙げられています。これまで、どんな街づくりが行われてきたのですか
瓜田
札幌は明治2年に開拓使が設置され、北毎道開拓の中心に位置づけられたことによって、その発展の基礎が作られました。明治4年には市街の測量がおこなわれ、大通りで南北に、創成川で東西に分けられる碁盤の目の市街地区画とし、北は官庁街、南は商店、住宅街とされ、当初の開発から計画的な街づくりが行われました。この時の土地利用形態が、今も色濃く残っています。
今日の発展において特に大きな転機となったのは、昭和47年の冬季札幌オリンピックの開催です。このオリンピックを契機とした都市基盤整備は、15年分の社会資本を先取りしたともいわれています。この時期に、オリンピックの関連施設はもちろんのこと、道路、上下水道などの都市の基本施設に加えて、地下街や地下鉄、ばい煙による大気汚染防止のための集中暖房にいたるまで、都市として備えるべき施設が押しなべて整備されました。
またこの年に、政令指定都市へ移行し、資金調達面でもメリットを受けることとなり、今日まで計画的に街づくりを進めているわけです。
――現在の街づくりの計画について伺いたい
瓜田
札幌市の街づくりは、市政執行の指針となる市議会の議決を経て制定された「札幌市基本構想」に基づき策定される、概ね20年間を計画期間とする「長期総合計画」と、中期の実施計画である5年計画によって推進されています。
現在の街づくりは、昭和63年に制定された「札幌市基本構想」を踏まえ、同年3月に策定された「第3次札幌市長期総合計画」に基づき、その実施計画である第3次5年計画によって進められており、平成10年度はその3年目に当たります。
この計画の中で、道路整備においては道路の安全性、快適性、防災機能の向上を図り、環境の保全にも配慮した道づくりを進めるため「災害に強い道路ネットワークの整備」、「公共交通機関の利用促進を図る道路の整備」など4つの施策に大別して整備を進めています。
また、河川整備では、河川氾濫地域における安全性の確保はもとより、緑が広がり、生き物がすむ川や親しみやすい川をつくるため「うるおいのある自然豊かな水辺づくり」、「市民とともに進める川づくりの推進」など5つの施策に大別して整備を進めています。
――第3次5年計画における道路整備の中心事業は
瓜田
札幌市では、広域交通への対応や中心市街地への分散導入を図るため、「2バイパス2環状13放射道路」を基本構成とする都市圏道路網の整備を進めています。なかでも「環状通」は、内環状道路として位置づけられ総延長23qのうち未供用区間が、北大構内の約1qのみとなっており、この区間の整備が急務となっていることから、平成13年度の完成を目指して施工しています。
その他にも、札幌市北部の新川・新琴似地域における市街地の分断と交通混雑の解消を目指す「JR札沼線連続立体交差」や、国道230号を補完する災害時の緊急輸送路として、昭和48年の崖崩れ以来、通行止めとなっている市道砥山豊平川沿線の「八剣山トンネル」も施工中です。
――河川整備では、様々な工法が採用され始めていますね
瓜田
河川は、従来から「治水」に重点を置いた整備を進めてきましたが、国民の自然志向への高まりなどから、環境面にも配慮した河川整備が必要となってきています。
そうした背景から、昨年、河川法が改正され「河川環境の整備と保全」が位置づけられ、札幌市でも、治水整備に併せて河川の水質改善と良好な水辺空間の創出を目的とした「水と緑のネットワーク」の形成に取り組んでいます。
具体的には、今後、協議会を組織して、市民や学識経験者の意見を頂きながら、マスタープランを策定していきますが、構想としては、特に水量が少なく水質も悪化している北部地区の河川において、豊平川からの導水や下水道の高度処理水を利用して「せせらぎ」を回復し、公園事業などとも連携して「豊か」で「清らか」な水辺環境や、緑あふれる都市環境の創出を目指しています。
――依然として厳しい経済情勢が続くなかで、今後街づくりを進めていくには何が重要だと考えますか
瓜田
金融機関の経営破たんに象徴されるように景気の見通しは依然として不透明で、本市の財政も引き続き厳しい状況にあります。また、少子化・高齢化の急速な進行に加え、地方分権の推進など、社会の仕組みそのものに大きな変革期が訪れており、街づくりにはこれまで以上に効率性や計画性が求められています。
このような社会情勢の変化に対応するため、2000年度(平成12年度)のスタートを目指して、札幌市の基本計画である「新しい長期総合計画」の策定作業を進めているところです。
既に、今年の2月には市議会で「札幌市基本構想」の改定が議決されたところですが、このなかでは、特に市民・企業・行政のパートナーシップによる街づくりを推進することを明確にし、活力のある都市活動を維持創出していくこととしています。
将来にわたって理想的な街づくりを進めていくには、バリアフリーの街づくり、都心部の交通渋滞解消、さらには、札幌市が避けることの出来ない雪対策など、様々な課題について今後対処していかなければなりません。こうした課題を行政の力のみで解決していくことはもはや困難な時代であり、これまでにも増して、市民・企業・行政のパートナーシップを進めていくことが重要となってきます。
――市民・企業・行政のパートーナーシップが実現している具体例は
瓜田
道路整備においては、計画段階から地域の方々に参加していただき、行政と一体となって進めている「月寒コミュニティーゾーン形成事業」があります。この事業は既成市街地における生活道路を対象に、通過交通の進入を抑え、地区の暮らしの安全を確保するため、歩行者と車が共存できる道路を面的に整備するものです。この事業を進めるに当たっては、地区の商店街、自治会、PTAなど地元住民と大学の先生や設計コンサルタント、市職員で構成される「つきさっぷ道会(どうかい)」が設置されました。そこで地域特性を活かした、住民参加による道づくりの検討が行われて、今年度から工事に着手しています。
また、雪対策においては「除雪パートナーシップ制度」を実施しています。市内に網のようにめぐる幅員10m未満の生活道路は、総延長にして約2,900qにも及びます。この制度は、生活道路の排雪にあたって、地域の方々の協力が不可欠なことから、地域と札幌市が費用を半分ずつ分担して排雪作業を行うというものです。
さらに、個人や法人がロードヒーティングなどの融雪施設を建設する場合には、無利子で300万円を限度に融資する「融雪施設融資制度」も設置し、雪対策における市民の自助努力を支援し、慢性的に不足している雪堆積場への負担軽減も図っていけるものとなっています。
――街づくりのパ−トナーとも言える建設業界に対して、提言や要望など
瓜田
札幌市が21世紀に向けて都市基盤の整備を図っていくためには、街づくりのパートナーである建設業界の皆様が、今後とも健全に発展していくことが本市の街づくりの大きな力となります。
現在、建設業を取り巻く経営環境は大変厳しいものがありますが、このような時にこそ「技術と経営にすぐれた企業」が成長していくことが要請されていますので、技術力を高めるための努力や生産性向上への取り組みに期待しています。
また、建設工事現場における事故の絶滅など、工事の安仝性にも十分に努めていただき、今後とも札幌市の街づくりに貢献されることを期待しています。

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