建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ1997年12月号〉

interview

十勝は北海道発展の核になる

各種事業の連携でクロスオーバー効果を追求

北海道開発局帯広開発建設部長 下平尾 蔀 氏

下平尾 蔀(しもひらお・しとみ)

昭和19年8月5日生。45年北海道大院修。
昭和 48年 建設省都市局公園緑地課係長
53年 道開発局札幌開発建設部滝野公園副長
56年 道開発局札幌開発建設部滝野すずらん丘陵公園工務課長
58年 道開発局道路計画課開発専門官
62年 道開発局小樽開発建設部小樽道路副所長
63年 道開発局札幌開発建設部札幌道路所長
平成 元年 道開発局小樽開発建設部次長
3年 道開発局環境審査官
6年 道開発局開発調整課長
5年 農林水産省構造改善局建設部開発課農道整備調査官
8年 稚内開発建設部長
9年 帯広開発建設部長

十勝といえば、本道の穀物生産の中心地。わが国農業の経済的環境が厳しいにもかかわらず、生産額は13年連続で2,000億円台をキープするなど、なかなか健闘している。この7月の人事異動で稚内開発建設部長から帯広開発建設部長に転任した下平尾 蔀氏は『北海道がわが国の食糧基地としての役割を担うことは、これからも変わらない。十勝農業の元気の素を、全道に広げたい』と就任の抱負を語っている。
――就任の抱負からお聞きしたい
下平尾
十勝の基幹産業は何と言っても農業ですが、農業生産額が13年連続で2千億円を突破するなど、非常に元気があります。着任する以前から興味を持っていましたが、その元気の源泉がどこにあるのか、これから勉強して全道に広げていきたいと思っています。
次期の北海道総合開発計画の改定作業の中で、日本における本道の役割が見えにくくなっていると言われていますが、決してそうではありません。わが国の食糧基地としての役割は変わらないし、その中心になるのが帯広・十勝です。農業をもっと前面に押し出して、こうした十勝の特色を生かして地域の発展につなげたいですね。
農業を中心に地域づくりを推進
――十勝の現状と課題についてはどのように認識されていますか
下平尾
農業生産額を何とか2,500億円から3,000億円にまで高めるためにも、農業を中心に地域づくりを進め、それに必要な道路、ダム、河川、港湾事業を有効に活用してフォローしていくのが一番の課題でしょう。
交通網は確実にレベルアップしています。9月25日に国道236号の浦河−広尾道路が開通しました。東西は清水−池田の高速道路に続き、清水−夕張が平成8年12月、整備区間に昇格、池田から東側は既に施工命令が出ています。
こうした横の軸に対して、T字型に帯広・広尾自動車道を整備することで、延長上の帯広空港や十勝港とのアクセスが容易になります。
また、平成8年の9月には、十勝港にフェリーが就航し、農業用の飼料や肥料が入りやすくなり、逆に畜産物や野菜を出しやすくなっています。また、今年の7月には帯広空港のダブルトラッキング化が実現しました。
このように農業と道路・空港・港湾整備事業がうまくかみ合って、地域全体の底上げに役立っています。
――十勝農業は今後とも生産額の伸びが期待できますが、札内川ダムの試験湛水は順調ですか
下平尾
予定どおり来年から管理段階に入ります。十勝も乾燥化と湿地化が心配されていますので、現在、2万ha規模のかんがい事業を実施しており、ダムと連携して構造改善に取り組んでいきます。
河川と公園事業をドッキングしたエコロジーパーク構想
――河川事業では
下平尾
十勝大橋の音更側の狭窄部に建設している木野引堤事業が本年度で完成します。
また、千代田地区に、現在のえん堤とは別に千代田新水路事業を促進します。えん堤と新水路との間に出来る中島と、その周辺の約440haの敷地をエコロジーパークとして道と関係市町村が整備する計画です。
ここからは質のいい川砂利が採取できるので、砂利の売却益を公園整備事業に充てることになっています。
このように河川と公園事業、さらに民活事業がリンクする、いわば事業間連携のモデルが今年から来年にかけてスタートします。行政区域としては池田、音更、幕別町にまたがり、一連の事業には帯広市も支援します。
これからは国や地方の単独事業ではなかなか事業効果は上げられませんので、限られた予算を有効に活用する意味からも、これまで以上に国の事業を核として道、市町村の事業を組み合わせるクロスオーバー効果を追求していく必要があります。
十勝で産業クラスター構想を具体化へ
――十勝は以前から広域行政が盛んな土地柄ですね
下平尾
競い合いながらも、まとまりがありますね。十勝の人達は議論好きの人が多い。もともと民間団体の晩成社が中心になって開拓が始まったところですから、民間のパワーがすごい。
エコロジーパークの構想も、元は地元のJC(青年会議所)が提唱したサーモンパーク構想から始まりました。十勝は道央と道北の交通の結節点に位置しています。そうした地の利を活かし、十勝発の活力を生み出したいと考えています。
道経連が提唱している産業クラスターの農業版を十勝で立ち上げようという動きがあります。戸田(一夫)会長も『十勝で出来なければ、他の地域でも出来ない』と発言しているように、十勝は北海道の核になれる可能性があると、私は思います。

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