建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ1997年12月号〉

interview

まちづくりに貢献できる官庁施設整備を

地域性を考慮したまちづくりと連携

北海道開発局営繕部長 佐々木良夫 氏

佐々木良夫(ささき・よしお)

昭和23年5月28日生まれ、昭和46年北海道大学工学部卒。
昭和 50年 北海道開発局建築課建築第1係長
54年 北海道開発局建築課営繕監督官
55年 建設省関東地方建設局営繕部建築第2課営繕設計官
57年 建設省関東地方建設局営繕部建築第1課長補佐
58年 建設大臣官房官庁営繕部建築課長補佐
62年 北海道開発局建築課長
平成 2年 建設省関東地方建設局営繕部建築第2課長
4年 茨城県総務部県庁舎建設準備局次長
6年 建設大臣官房官庁営繕部
6年 営繕計画課営繕積算システム官
7年 建設大臣官房官庁営繕部
7年 営繕計画課特別整備企画室長
9年 4月 現職

今年の4月に建設省の官庁営繕部営繕計画課特別整備企画室長から北海道開発局営繕部長に就任した佐々木良夫氏に、ご登場いただいた。同部には、昭和50年と62年に続き3回目の赴任となるが「建築物は民間のものが圧倒的に多い。国の営繕部の仕事をもっとprしたい」と抱負を語る。北海道の官庁施設整備については「地域性を活かし、自然環境に配慮することが重要。積雪寒冷地の対策として『外断熱工法』を設計段階から取り入れている」という。また、「まちづくりに貢献できる官庁施設整備が基本。地域のまちづくりと連携しながら進めたい」と述べている。
――寒冷地の北海道は本州とは建築の条件が異なると思いますが、そうした地域性と工法についてはどのように考えていますか
佐々木
確かに地域性は大切です。特に北海道は自然が豊かで広大な所ですから、自然環境に配慮していくことが重要です。
また、積雪寒冷地ということで、高断熱・高気密に取り組んできましたが、最近は外断熱工法を設計段階から採用しています。
函館地方合同庁舎の外壁改修の際にも「外断熱工法」を採用しましたが、燃費がなんと30%も節約できました。かなりの省エネ効果が上がっています。
――市町村とはどんな関係でありたいと考えていますか
佐々木
まちづくりに貢献できる官庁施設整備を基本に、それぞれの市町村が推進している地域性を考慮したまちづくりと連携しながら進めていきたいと考えています。
――その点では、釧路市のシビックコア事業はモデルケースになりますね
佐々木
そうですね。この事業は、阪神大震災後に防災対策費として補正予算が認められ実現したわけですが、防災拠点として大規模の地震にも耐えられる、先端技術の免震構法を取り入れて工事中です。
大宮地区と岡崎市でも、シビック・コア事業が展開されています。国としては、長期営繕計画に基づく合同庁舎整備は今後もシビックで進める方針にしており、北海道では旭川、八雲、網走合同庁舎が現在、検討の対象になっています。
――最近、課題になっている建設コストの縮減に対してはどのように取り組まれますか
佐々木
営繕部の予算は建設省の予算が配分されています。建設省は平成6年度から建設コストの縮減に取り組み始めており、その後、政府の行動指針が示されて今年4月に各省庁の行動計画がまとまったところです。
一つには、設計段階でコストを下げるようにしており、今年から設計veの本格的な試行として「札幌北公共職業安定所」を対象に実施しています。施工段階でコストを下げるのはなかなか難しいので、やはり設計段階から取り組むのが効果的だと思います。
その他、施工の合理化工法でコスト縮減を図っています。こうした取り組みは、オールジャパンで推進しています。
――民間の企業努力に期待するところも大きいですね
佐々木
民間の新しい工法を積極的に採用していくことがコスト縮減のそもそもの趣旨です。
建設省の技術評価制度や総合技術開発プロジェクトなどいろいろな制度がありますが、民間が率先して技術研究開発に取り組むことを期待しています。
私たちは実施機関として新しい工法、技術を積極的に取り込み、普及を図ることでコスト縮減に努めたいと考えています。
――建設業界への提言、要望をお聞かせください
佐々木
コスト削減には官も民も相当の覚悟で取り組まなければならない時期に来ています。透明性、客観性に加えて受注者側は競争性が叫ばれていますが、これはまさに技術力の競争が主となります。そのためにもボトムアップとともに差別化を図っていく努力を期待したいですね。
発注者側の注文も「こういう方法でモノを造りなさい」という材料工法を仕様書に明記する方法から、性能規定に少しずつ移行する傾向にありますから、どんな工法でもかまいません。そこに技術力の差が現れます。短期間により安いコストでいい性能の建物を造るという点で、技術力の競争がますます激しくなるでしょう。
――自治体には何かアドバイスは
佐々木
最近は設計者選定に、プロポーザル方式を採用するケースが増えてきましたが、こうして選定された設計者とより良い施設づくりを練り上げてほしいと思います。私たちも資料の提供など情報を公開し、お手伝いさせていただきたいと思っています。

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