建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ1999年12月号〉

interview

環日本海交流拠点としての道路網構築を

意外と低い国道整備率、急がれる幹線整備

建設省北陸地方建設局道路部長 川路正行 氏

川路 正行 かわじ・まさゆき
鹿児島県出身、昭和41年日本大学理工学部卒。
昭和 36年 4月 建設省入省
関東地方建設局首都国道工事事務所
47年 1月 道路部道路計画第一課
51年 4月 東京国道工事事務所
53年 4月 横浜国道工事事務所
61年 4月 建設省道路局国道第一課
63年 4月 大宮国道工事事務所調査課長
平成元年 11月 局道路部道路計画第一課補佐
3年 4月 横浜国道工事事務所副所長
5年 10月 沖縄総合事務局南部国道事務所長
8年 4月 関東地方建設局企画部(技術調整管理官)
9年 4月 首都国道工事事務所長
11年 4月 現職
新潟、富山、石川といった北陸地域は、日本海側の国際交流拠点としての役割を果たすべく、各県で地域づくりが行われている。とりわけ、道路ネットワークの構築は重要で、北陸地方建設局は道路整備に邁進している。しかし、それでも整備率は29.5パーセントと全国平均には追いつかない。のみならず、道路整備にも福祉や情報化といった新しい視点も求められており、また豪雪地帯でもあることから通年通行確保の体制のレベルアップの必要など、課せられた課題は多岐にわたる。同地建の川路正行道路部長に、北陸の道路づくりについて見解を伺った。
――公共事業が産業基盤から生活基盤にシフトしたため、経済的な波及効果が薄れたという指摘が一部の新聞報道にありました。今後は、管内の産業をさらに発展させていく上で、道路整備の果たす役割は大きいと思いますが
川路
いま、マスコミや経済界に公共事業不用論があるのは承知しています。しかし、北陸は少し事情が違います。首都圏などでは整備が進んだとはいえ、交通混雑は今なお激しいですね。北陸では、首都圏、中部圏、近畿圏の三大中核都市とは違う面で、かなりのネットワークが築かれています。
大都市圏の交通混雑緩和という意味も含めて、地方部のネットワークの形成は大切なのです。
ただ、北陸、東北自動車道など国土幹線道路のネットワークは出来てきましたが、一般国道の整備水準だけは未だに非常に低いのが実態です。
――整備率は何パーセントなのですか
川路
指定区間で全国平均の46.0%に対して、北陸地方は29.5%です。
――そんなに低いのですか!?
川路
国道の延長が長いことと、交通量が主要幹線に集中していることが一因だと思いますが、今後はできるだけ県道、市町村道の整備水準に追い付くよう努力したいと思っています。
――道路整備を推進し、整備率を高めることは確かに重要課題ですね。その一方で、道路の「量と質」のバランスについてはどのように考えていますか
川路
私見になりますが、これまでは砂利道を一掃し、舗装率を高めようと努めてきました。とかく道路整備による恩恵を全県民に行き渡らせるべく、質はひとまず置いて、いち早く道路を開通させることだけに専心するという傾向がありました。
しかし、時代の要請や潮流を考えると、これからは質を高めることが求められてきます。バリアフリーなど環境にやさしい、人にやさしい、質の高い行政がわれわれの使命です。段差解消、歩道橋にエレベーターを設置するなど、福祉政策にも目配りした道路整備が必要になります。しかもある程度のネットワークを持った、連続した整備が大事です。ある区間だけが人と環境にやさしくても意味はありません。
――道路にも今や多機能であることが求められるようになりましたね
川路
道路網の構築にあたっては、あらためて地域の現状と課題から洗い出していく必要があります。その第一は安全(自然災害、雪害、交通事故)であり、第二は人口の減少、高齢化、第三に特色ある豊かな自然、風土の確認、第四に日本列島の中央に位置し、環日本海の中で北陸が扇の要になっているという地理的条件、第五は高度情報化、積雪など道路情報をいち早くドライバーに知らせるための、CCBOX整備を北陸が先行すべきであること、そして最後に港、空港の活用によって地域の活性化に取り組むことの6項目となります。
これを考慮しながら、北陸の道路整備の将来ビジョンとして「越のくにの道づくり」を策定しています。そこでは「私たちの生活を支える道」、「広域交流を支える道」「港や空港と結び国際交流を支える道」が重要テーマとなっています。
――それらについて、現在、実施されている事業を含めて詳しく伺いたい
川路
道路整備においては、先に触れた環日本海時代に向けての日本海国土軸の強化という目標を念頭に置くことが必要です。そのためには、国際交流の支援、環日本海交流、空港・港湾へのアクセス強化に寄与するものでなければなりません。
とりわけ2002年にはワールドカップを控えていますから、これに向けての支援として万代橋下流橋の整備を進めています。また能越自動車道は、来年の富山国体に向けて高岡IC−福岡ic間の供用開始を予定しています。これは地建としての目玉事業といえるでしょう。
平成15年には能登空港の開港が予定されています。そのため能越自動車道を延伸(穴水道路)すべく、平成11年度に用地買収に着手することとしています。
一方、国内のネットワークとして、三大都市圏との広域交通のインフラ強化も重要です。また、住民の足となる生活道路の整備は、地方と都市の連携を支えるインフラの整備ということで、広域道路整備基本計画に基づき、地域高規格道路を指定しています。
その他、安全で快適な道づくり、都市圏内における渋滞対策、情報BOXや光ケーブルによる道路情報の高度化に取り組んでいます。
――高レベルの道路が、細密に整備されることで、計り知れない利便性をもたらすことは確かですが、問題はメンテナンスですね
川路
そうですね、特に北陸は豪雪地帯でもあります。したがって、冬期における雪対策も一つの重要政策になります。豪雪などで、たとえ高速道路などが交通止めを余儀なくされても、一般国道だけは絶対に交通を確保することを大前提として、地域のニーズに応えていきたいと思っています。
道路は生活基盤の中でも、最も基礎的なインフラですから、直轄国道に対する地域住民の期待は非常に大きい。そこで、雪対策のためのいろいろな技術開発や、情報ネットワークを駆使しながらレベルアップさせたいと思っています。
――どんな豪雪でも交通止めの心配がないことは、道路交通への信頼を高めることになりますね
川路
その通りです。信頼というのは、交通の安全、安心を間違いなく確保出来るということです。言うは易く行い難しで、実行に移すのは大変なことだと聞いていますが、これこそが地元の他ならぬ最大の要望ですし、それによって安心した生活が営めるわけです。
北陸地方はこの10年間、少雪が続いていますが、長期的に見ると18年周期で豪雪が来ると言われています。昨年がその年に相当していましたが、だからといって、今年からは手を抜いて良いというものではありません。
――一方、今年は全国的に猛暑の夏でしたが、降雨量も多かったようです。路面への影響や、水害への対策は
川路
確かに今年は非常に暑い年でした。新潟県上越市では最高気温37.8度にも達するなど大変な暑さでした。
しかし、舗装の性能はかなり向上しています。最近は排水性舗装が流行しており、これは環境にやさしいといわれ、評価の良い工法です。透水性が高いため、雨が降った際に、雨水が飛沫となってはね飛ばないことから視界も良くなり走行性が向上します。
しかも騒音が2−3デシベル減るという防音効果があり、沿道環境も向上します。
コストが2−3割高いのが難点ですが、安全性が高まればコスト以上に得るものがあります。
――あながち、高コストをただ非難するわけにもいかないようですね
川路
そうです。単にコストの比較だけで判断するのではなく、安全性や環境面も含めた総合的な判断が重要となります。

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