建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ1997年12月号〉

interview

別海で環境保全型かんがい排水事業の第1号がスタート

観光振興を視野に入れて基盤整備を

北海道開発局釧路開発建設部長 遠藤 優 氏

遠藤 優(えんどう・まさる)

昭和21年2月8日生まれ、昭和43年3月岩手大学農学部農業工学科卒。
昭和 48年 建設省都市局公園緑地課係長
43年 4月 農林省に採用、小樽開発建設部開墾建設課
50年 4月 農林省構造改善局建設部設計課係長
52年 4月 農林省東北農政局村山北部農業水利事業所鶴子支所長
10月 同村山北部農業水利事業所工事課長
55年 4月 水資源開発公団中部支社管理部副参事
57年 4月 函館開発建設部農業開発課長
59年 10月 北海道開発局農業水産部土地改良課長補佐
61年 4月 同農業調査課長補佐
63年 6月 函館開発建設部函館農業事務所長
平成 元年 6月 北海道開発局長官房開発調査課開発企画官
3年 8月 旭川開発建設部次長
6年 4月 北海道開発局農業水産部農業調査課長

6年

6月

同農業水産部農業設計課農業企画官
7年 10月 同農業設計課長
9年 7月 釧路開発建設部長

国の行・財政改革が進む中で、公共事業依存度の高い北海道には厳しい将来展望となっている。だが、今回の第2次橋本内閣で、地元選出の鈴木宗男代議士が北海道開発庁長官に就任したのは、地元にとって明るいニュースだ。この7月に、開発事業の実施部隊である釧路開発建設部の部長として就任した遠藤優氏も、これを追い風に何とか本道、釧路管内の開発促進に拍車をかけたい意向で、「将来有望とされる観光の振興を視野に入れながら、地域の連携を保ちつつ開発事業を進めたい」と語っている。

心強い道産子代議士の長官就任
――管内選出の鈴木宗男代議士が北海道開発庁長官に就任しましたね
遠藤
釧路・根室というよりも、オール北海道として歓迎すべきことです。北海道の事情をよく知っている上に、あのようにタフで精力的な方ですから期待しています。
北海道は人口が全国の4.5%、経済ベースでも4.0%ですが、その中で全国の公共事業費の10%以上を確保しているわけですから、開発庁の果たしてきた役割は大きい。国の財政構造改革で10年度以降、公共事業は3年間で15%の削減が政府の方針として決まっています。10年度は7%の削減が目標です。公共事業に依存している本道では、それぞれの地域で建設業の位置付けが大きいので、公共事業の削減によって倒産する企業が続出するのではないかと心配です。
これを踏まえて、新長官には北海道の役割や社会資本整備の意義などを中央で強力にアピールしてほしいですね。
東京都民の間には、「建設費の償還が終わった高速道路の料金は無料にすべき、交通量の少ない北海道に高速道路は不要」といった批判がありますね。余談になりますが、先日、東京から来た女性作家が、「北海道の農産物や水産物の供給を通じて、東京都民も間接的なメリットを受けているのだから、地方の高速体系の整備は必要」と話していました。これを聞いて、私は内心で拍手喝采しました。
確かに高速道路で新鮮な食糧などを首都圏に輸送しているわけですから、こうした考えを私たちも中央に伝える努力をしなければなりません。
体験型観光の振興を
――ところで、部長はこの7月に就任されましたが、管内の印象はいかがですか
遠藤
管内は水産と酪農が経済の中心になっているものの、先行きが厳しい展望ですが、一方では観光が有望です。阿寒、釧路湿原などの国立公園を抱え、管内には年間1,300万人の入り込みがあるわけですから、例えば乳搾りなどの体験型の観光にも力を入れる必要を感じています。
JRのスーパー特急で釧路と札幌の時間距離が大幅に短縮されたり、空港はカテゴリーIII−A(計器着陸装置)の導入によって就航率が飛躍的に向上したこともプラス材料です。
――それをバックアップするものとして、管内ではどんな主要事業に取り組んでいますか
遠藤
将来の高速道路体系を先取りするうえで釧路新道や、地域高規格道路として春別道路(別海町)の整備を促進します。将来は横断道路にアクセスします。
港湾は釧路西港第4、5埠頭を順次拡張し、水深14m岸壁で5万トンクラスの大型船に対応したいと思います。
治水事業では、釧路川の遊水地が予定どおり12年度に完成します。
農業農村整備は、環境保全型のかんがい排水事業の第1号が別海で始まります。牛の糞尿を肥料として農地に還元したり、河畔に木を植え、遊水地に汚れを沈殿させるなど、地域全体の水質保全に取り組みながら、生産・生活環境を整備していきます。
また、もう一つの柱は農地防災で、排水改良や客土を実施します。
――管内の市町村との連携については、どのように考えていますか
遠藤
私たちの業務はハード面の事業が中心ですが、施設などの整備をきっかけに市町村間の連携をお手伝いしたいと考えています。
特に、今後は各自治体が機能を分担しつつ役割を果たしていく広域連携がますます大事になりますから、釧路支庁や釧路土木現業所などとも意見交換しながら効率的な事業の執行に努めたい。
全体の意識改革が必要になりますから、建設業界もそれぞれの企業が生き残るすべを考えてもらいたいですね。

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