建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ1998年11月号〉

interview

今後とも北海道開発は、我が国の極めて重要な政策課題である

11年度予算概算要求の総額は、48%増の1兆3,756億円

北海道開発局長 小野 薫 氏

小野 薫 おの・かおる
昭和19年8月7日生まれ、北海道大学大学院修了。
昭和 50年 建設省関東地方建設局大宮国道工事事務所調査課長
52年 建設省関東地方建設局建設専門官
53年 建設省関東地方建設局道路部計画調整課長
54年 建設省関東地方建設局道路部道路計画第一課長
56年 建設省道路局企画課長補佐
58年 建設省関東地方建設局長野国道工事事務所長
60年 建設省中部地方建設局静岡国道工事事務所長
62年 建設省建設経済局建設業課建設専門官
63年 千葉県土木部道路建設課長
平成 2年 建設省道路局地方道課市町村道室長
3年 建設省中部地方建設局道路部長
4年 阪神高速道路公団計画部長
6年 北海道開発庁地政課長
8年 北海道開発局長官房官房次長
9年 北海道開発庁総務監理官
10年 現職
今年6月に北海道開発庁総務監理官から北海道開発局長に就任した小野薫(おのかおる)氏は、「これまで北海道の開発は、地域の特殊事情や歴史的背景から国が他の地域より大きく関与してきたが、今後とも国の果たす役割は極めて重要である」と話している。行政改革に伴い、北海道開発庁は建設省、運輸省、国土庁とともに国土交通省に統合されるが、その開発行政は現行どおり、国土交通省へ継承されるとしている。特に、北海道経済が依然として厳しい状況下にあることを踏まえ、来年度予算は総額で1兆3,756億円(前年度比48%増)を要求している。「予算編成が見込まれる年末前後には、10年度第2次補正予算も予想されるところであるが、いずれにしてもできるだけ多くの予算を確保したい」と、力説している。小野局長に北海道における公共事業の意義や11年度予算概算要求のポイントなどについて伺った。
――北海道開発庁が統合された後、北海道開発局が21世紀において果たすべき役割は
小野
現在、政府において、「中央省庁等改革基本法」に基づいて、省庁再編の具体化に向けた取組みが行なわれています。
同法では、北海道開発庁の任務、機能は、国土交通省に継承され、開発局はその下に存置されることになっていますので、北海道開発体制の枠組みは、従来どおり確保されたと考えています。
21世紀を間近に控え、我が国は地球規摸での課題に対応しながら、地域の個性を活かし、豊かさを実感できる社会を形成していくことが求められています。その中で、北海道は、恵まれた環境・資源を継承し、「国民全体の食糧基地」や「北の国際交流拠点」などとして、大きな役割を担っていくことが期待されています。
これまで、北海道の開発においては、地域の特殊事情、歴史的経緯から、他の地域より、国が地域開発に大きく関与してきましたが、北海道は豊かな開発可能性を有する地域でもあり、今後とも国の果たす役割は、極めて重要であると考えています。
行革論議の中で、北海道開発局は縦割り行政の弊害を是正したモデル官庁であるとの評価をいただいています。また、地域開発を円滑に展開するためには、官と民、国と地方の役割の変化に対応し、現地段階で、国の機関、道庁・市町村や民間団体など多様な主体の交流・連携による「現地完結性」を高めることがますます重要になっています。
これらのことからも、21世紀に向けて、分権型の地方支分部局としての役割を果たしていくことが求められていると考えています。
開発局としては、先ごろ閣議決定された「第6期北海道総合開発計画」に基づき、従来にも増して、地域との連携を強化しつつ、開発事業の効果的な推進を図り、モデル官庁としての評価を更に高めるよう努力していきたいと考えています。
――北海道における公共事業の意義について、どうお考えですか
小野
北海道の総合開発に必要な公共事業費は、北海道開発庁に一括して予算計上されています。これは、北海道総合開発計画の推進の基幹となる各開発事業について、計画に沿った総合的な調整を行い、必要な予算を確保するためです。
この予算一括計上によってこそ、地域の要望への総合的な対応が可能となっているのです。つまり、このような制度が、北海道総合開発計画推進の原動力となっているわけです。
また、北海道における公共事業の意義についてですが、今年度から、「第6期北海道総合開発計画」がスタートしました。同計画の主要施策に沿った事業の展開や各事業の一層の重点化・効率化をはじめ、幅広い事業の連携などを図っていくことにより、計画が目指す北海道の自立・発展に貢献できるものと考えています。
当面の対応としては、北海道経済の厳しい状況に的確に対処し、景気の回復に向け、全力を尽くしていくことが非常に重要であると考えています。
――平成11年度予算要求の基本的な考え方は
小野
平成11年度北海道開発予算の概算要求の基本的な考え方としては、第一に、「第6期北海道総合開発計画」の2年目として、「北海道総合開発計画の推進方針」を踏まえ、内外に開かれた自立する北海道の実現を目指し、計画に掲げられた5つの主要施策を積極的に推進していきます。その主要施策とは、@「地球規模に視点を置いた食料基地の実現、成長期待産業等の育成」、A「北の国際交流圏の形成」、B「北海道の美しさ雄大さを引き継ぐ環境の保全」、C「観光・保養など国民の多様な自己実現や交流の場の形成」、D「安全でゆとりある生活の場の実現」の5つです。
第二に、北海道経済の依然として厳しい状況に適切に対処するため、今回の「概算要求方針」で示されました「景気対策臨時緊急特別枠」の活用など、当面の景気回復に全力を尽していきます。
第三に、施策の展開に当たっては、全般にわたり重点化・効率化等を図るとともに、一定期間が経過した後の継続事業等の再評価や、新規事業についても、費用対効果分析等の活用を図っていきます。
また、各種事業の総合性を高めるため、観光振興対策等、ソフト施策を含めた、各般の施策の幅広い事業連携を図っていく考えです。
――平成11年度予算要求のポイントは
小野
平成11年度においては、以上のような基本的な考え方に基づき、「第6期計画」に示された主要施策に沿った道路・河川・港湾・農業などの各種事業の積極的な展開を図ることが重要と考えています。要求額は、9,559億円で、平成10年度当初予算に比べ3%増の要求を行いました。
また、このほかに、依然として厳しい地域経済の回復のため、「景気対策臨時緊急特別枠」が設定されたのを受け、4,197億円を要望しています。この特別枠を合わせた概算要求総額は、1兆3,756億円となり、前年度当初予算比で48%という大幅増となっています。北海道経済の回復に資するためには、この特別枠の活用が、非常に重要なポイントとなっていくものと考えています。
また、事業の一層の重点化・効率化などを図るとともに、「ニューカントリー事業」や「ふゆトピア事業」などのソフト施策や観光振興対策などを含めた幅広い事業連携による総合的な施策展開を図っていくことも、非常に重要であると考えています。
平成11年度北海道開発予算については、今後、財政当局との折衝を経て、例年どおり年末の予算編成が見込まれ、その前後には平成10年度第2次補正予算の編成も予想されるところですが、いずれにしてもできるだけ多くの予算を確保し、北海道経済の浮揚と北海道開発の進展に貢献したいと考えています。

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