建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2000年11月号〉

interview

JR駅を活かして都市構造の骨格づくりを

文教都市の誇りにかけ国際的に開かれた都市を目指す

江別市長 小川 公人 氏

小川 公人 おがわ・きみと
生年月日 昭和16年9月1日(満59歳)
家族妻、子2人
学歴 江別高等学校卒業
職歴
昭和 35年 4月 江別市役所採用
昭和 46年 3月 退職
昭和 46年 4月 江別市議会議員当選
平成 7年 3月 江別市議会議員退任(6期24年)
平成 7年 4月 江別市長当選(1期目)
平成 11年 4月 江別市長当選(現在2期目)
随会役職
昭和46年〜54年 総務文教常任委員会
昭和54年〜56年 厚生常任委員長
昭和56年〜58年 総務文教常任委員長
昭和58年〜62年 建設常任委員
昭和62年〜平成3年 副議長、厚生常任委員
平成3年〜7年 建設常任委員
煉瓦など窯業で有名な都市・江別市は、市内に4つの4年制大学がある文教都市でもある。15万人都市を目指して発展しつつあり、小川公人市長は後世のために、今から都市構造の骨格を完成させるべくまちづくりを進めている。だが、少子高齢化の問題、it革命、国際標準化、地方分権など、行政を取り巻く環境も激変しており、小川市長としても対応に苦慮している。江別市としては21世紀をどう迎えるのか、小川市長に政策を伺った。
――2期目を迎えて、かなり独自のカラーが市政に反映できるのでは
小川
就任してから2期5年目に入りましたが、私としては、市民のみなさんの意見を聞きながら、という考え方を一貫して持っているのです。
基本的な考え方は、時代が大きく変わって、経済状況もようやく持ち直してきましたが、国も地方自治体も財政的には非常に厳しいですから、行政改革には取り組んできましたし、これからも進めたい。
今後は21世紀の時代に即応するような政策へのシフト替えをさらに進めていきたいと思っています。今年の政策としては6つの項目を決めました。「時代に誇れる美しい江別」、「21世紀を担う若々しい江別」、「心安らぐ健やかな江別」、「いきいきふるさと江別」、「自主自立のたくましい江別」、そして「市民参加の開かれた江別」の6テーマです。すでに予算的裏付けもしており、規模は一般会計で約430億円ですが、今回施行された介護保険にともなう特別会計及び企業会計分も含めると、824億円に上ります。
――近年はどこの自治体も財政難で、緊急事態を宣言するところが多いようですが、江別市は
小川
確かに、全国的には減収傾向で、江別も例外ではありません。本年度に限って言えば、マイナスといってもほぼ0.9%位ですから、やや前年並みから落ちるといった程度に治まっています。しかし、やはり次年度以降予断を許さない厳しさの中にあることは否定できません。
――そうした財政状況を背景に、それらの政策をどのように実現しますか
小川
江別には12万2,000人の人口がいますが、平成16年には、15万人を目指しています。しかし、最近は増加傾向が少し鈍化しており、予定通りにはいかないと思いますが、着目すべきは、函館本線が市の東西を貫いているため閉塞状態になっていることです。そこで、15万人規模を念頭に、鉄道高架を視野に入れた「まちづくり」というのが政策全体の長期ビジョンの中において、リーディングプロジェクトの一つとなります。
経済情勢は厳しいながらも、将来を考えると、まずは都市構造を根本的に改善していかなければ、交通渋滞の問題が深刻化したり、また街全体に活気をもたせる上でもネックとなりかねません。そこで、鉄道高架の連続立体交差事業と、それと組み合わせで行う野幌駅周辺の区画整理事業を街の再開発事業とし、これら2本立てで、まちづくりを進めていきたいと思っています。
ただ、このために必要な投資経費は500億円を越えることになり、市の一般会計予算額よりも多いほどですから、とうてい単独事業としてはできません。連続立体交差は、道に事業主体になってもらうことはできますが、国の承認を得なければ財源的な見通しもたちませんから、何とか来年度に向けて、新規調査の採択をお願いしているところです。これは1、2年で完了するものではありませんから、まちづくり事業として最も大規模な事業です。
また、市内には4つの4年制大学があり、それに付随する私立高校もできている文教地域ですが、大学連携を有効に進め、町おこし市民大学を作る計画もあります。
――財政基盤の強化に向けては、何らかの取り組みはありますか
小川
企業誘致を進めています。第二工業団地の整備とともに、rtnとして、情報関連の先端企業を集積させるべく、さらに調査対象を拡大し、環境影響評価の調査をしながら取り組んでいます。
またJR江別駅周辺の商業活性化策を検討しています。例えばホテル、企業、駐車スペースの他に住宅機能などを充実させるというものです。
――最近、行政の進め方としては、市民参加型のケースが増えつつあり、どこの自治体でもこぞってその手法を工夫していますね
小川
もちろん開かれた江別ということで、政策評価制度やシステムの検討をしており、財政のバランスシートも関心が持たれているので、そうした仕組みの導入を進めつつあります。
また、行政の利便性の向上の一貫として、市民が身近な場所で住民票等の交付を受けられるよう、市の中心部から離れた地区に、窓口を設けたりするなど改善を図っています。
――ところで、わが国は少子高齢化により、人口は減少傾向にあるといわれていますが、15万都市を目指す江別市としては、どんな対策を考えていますか
小川
基本的には財政も厳しく、経済もいまひとつという情勢ですが、江別は着実に人口が伸びています。ただし、15万人規模への到達に先んじて、まずは都市構造を整備をしておくことが、私の責任だと思っています。子孫に時代を引き継いだときに、江別の街の骨格がすでに出来上がっていることが重要です。
また、少子化といえば、別の問題ですが青少年の重大犯罪への危惧と重なり合うところがあります。ともあれ、従来とは少子化問題の質が異なってきていると感じます。
地方自治体単独だけでは有効な少子化対策を行うのは、難しいものがあります。そもそも、子供を産むのを損得だけでとらえられるとすれば問題です。子を持つと、自由な時間が持てなくなるし、若い母親なら、まだ遊びもしたい。ところが子育てのために時間は制約され、経費はかかるなど、様々なリスクが大きいのが現実です。だから産むのは損だという風潮も生じるわけです。確かに女性が、子供を産んで家庭に入るとすれば、経済的に大変なのが現実です。
だから、本気で少子化に歯止めをかけようと思うならば、社会的にフォローしなければならない面もでてきています。
したがって、私たちも児童館の増設や子育て支援センターの設立など、行政として可能な支援策には、力を入れています。
――最近はit革命の名の下に、デジタルデバイドなどという状況も見られるためか、早くも小学校にパソコンを導入したり、文部省も教員の業務のツールとして活用することを奨励しています
小川
確かに、IT革命といわれて久しいですが、問題もあります。常にディスプレイ画面を長く見つづけていれば、視力も落ちるし、子供たちは対人関係がうまく持てなくなる傾向もでてきます。
しかし、社会的に生きていく上で、避けて通れないのであれば、行政としても時代に即応した対応を考えなければならないと思います。コストはかかるでしょうが、情報化の趨勢は、しっかりと捉えていかなければならないと思っています。
 また、国際化が着実に進んでいます。江別市には4つの大学がある文教都市として、国外の学生の受け入れを広げる一方、外国人にも過ごしやすい江別にしたいと思っています。もちろん、地元江別市民にも、語学上の問題はありますが、単に語学だけでなく、国際感覚を身につけることが大事だと思います。
――ところで、地方分権一括法が成立しましたが、財源が伴っていないという問題もよく指摘されます。また、分権によってまちづくりがどう変わっていくのかが、市民には見えにくい。さらには、自治体の努力によって、分権の成果がよく現れるところと現れないところが出てくるでしょう。そこで、江別市としては、こうした地方分権にどう対応していこうと考えていますか
小川
率直に言うと権限だけ委譲して、財源は地方分権していないというのがやはり問題ですね。国が変化なく今までどおりの財源を握っている限りは、分権など進みようがない。
また、分権は華やかなパフォーマンスではなく、各自治体が一歩一歩積み上げて確立するものだと思っています。したがって、自治体ごとに独自に進めるべき地方分権と、市民の横並び志向という矛盾を同時に解消するのは、かなりしんどい課題ですね。   

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