建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ1999年11月号〉

interview

省庁再編に伴い開発局の所掌事務はむしろ拡大

北海道開発局 熊谷勝弘 氏

昭和20年8月9日生まれ、45年北大大学院修了。
昭和48年北海道開発局札幌開建道路建設課橋梁係長
51年 北海道開発局土木試験所舗装研究室副室長
52年 建設省計画局国際課長補佐
53年 ケニア日本国大使館一等書記官
56年 北海道開発局道路計画課付
58年 北海道開発局道路建設課長補佐
61年 北海道開発局室蘭開建室蘭道路事務所長
63年 北海道開発局釧路開建次長
平成2年 北海道開発局札幌開建次長
3年 北海道開発局道路建設課長
5年 北海道開発局開発調整課長
6年 北海道開発局稚内開建部長
8年 北海道開発局小樽開建部長
10年 北海道開発局建設部長
11年7月現職。

今年7月13日付で、北海道開発局長に就任した熊谷勝弘氏は、2001年の省庁再編に伴い、「これまでの所掌事務に加えて、補助公共事業、都市計画行政、建設業・不動産業・測量業に関する行政、住宅・宅地行政などが新たに委任されることで、むしろ拡大するとし、この結果、これまで以上に総合的な開発行政が実施できる」として今後の体制に期待をよせている。だが、それには、「道民・国民に理解され、信頼される開発行政の推進に努めることが必要で、事業推進の過程で積極的な情報提供や十分な説明(アカウンタビリティ)が重要である」と強調している。景気対策も交えながら、新任の熊谷局長に業界への期待や、局の今後のあり方などを語ってもらった。
――北海道の経済は依然として厳しい状況が続いていますが、平成11年度の予算の執行状況はどのようになっていますか
熊谷
政府は、今年3月に平成11年度上期の公共事業費等の執行について、今の経済情勢を考慮し、当面の景気回復に全力を尽くす観点から、「上半期末の契約済額が、全体として過去最高の前倒しを図った平成10年度上半期末実績と比較して10%を上回る伸びとなることを目指して積極的な施行を図る」ことを閣議決定しました。
開発局においては、積雪寒冷地であることを考慮し、従来から実施している早期発注・適期施工に努めることを基本に、先の政府方針や北海道の経済を取り巻く厳しい状況などから、過去最高の前倒しを図った昨年度の上半期末実績額5,030億円を10%以上、上回る伸びを目指して、積極的な執行の促進に努めています。
この結果、7月末現在の11年度の予算執行状況は、4,498億円と順調に推移しているところです。
――建設業界側は、それでも苦況であることを強調しています
熊谷
建設業界では、その経営環境の悪化などによる建設業者の倒産が急増したり、下請建設業者や建設関連産業も、下請代金やその支払いのしわ寄せなどの問題により、連鎖倒産の恐れに直面しています。
これについて、建設省は、国内の経済に悪影響を及ぼすとして、平成10年1月に「建設業の経営改善に関する対策」、同年12月には「同緊急対策」を出しました。
開発局も、北海道の建設業界を巡る実情に照らして、事業の円滑な執行を図るだけでなく、緊急及び暫定的な措置を含め、平成10年2月以降、「工事代金の早期支払」をはじめ、「工事代金債権の早期現金化」、「優良な中小・中堅建設業者の上位工事への参入」、「経常jvの積極的活用」、「合併企業・協業組合等の審査数値のかさ上げ措置」、「不良不適格業者の排除の徹底」など、建設業界の経営改善に寄与できる施策を多角的に行ってきています。もちろん、これらの施策のほとんどを、本年度の事業の執行に当たっても、引き続き実施していくこととしています。
また、平成11年度から、等級区分の統合、発注標準の見直しを図ったほか、環境が整い次第、実施できるよう「下請セーフティネット債務保証事業」の検討を行っているところです。
――建設業界における経営改善や技術向上などの面で、業界に期待することは
熊谷
建設投資の低迷の中で、建設業者数の増加、資金繰りの悪化など、建設業界は非常に厳しい経営環境にあるとともに、かつて見られないような大きな構造変化に直面しています。
道内の建設業は、北海道の経済と雇用の安定を支える基幹産業として大きな役割を果たしていますが、その多くは経営基盤の弱い中小企業です。しかし、今日のような金融環境が厳しさを増す中にあっても、個々の企業としての努力はもとより、自らの生き残りの戦略として、企業連携、協業化、専業化などに活路を求めるなど、この厳しい時期を何としても乗り切っていただきたいと思います。
さらには、新しい入札・契約制度の改革やコスト縮減対策などに対応するためには、企業体質の強化、経営基盤の強化などに努めることが重要です。
また、優れた技術者の育成と技術力の向上などの諸課題にも柔軟な発想をもって積極的に取り組み、競争力のある産業として発展することを期待しています。
――行政改革に伴う中央省庁の再編で、北海道開発庁が建設省などとともに国土交通省に統合されますが、行政改革により開発局の所掌事務は変わるのですか
熊谷
北海道開発局は、北海道開発庁の地方支分部局として、北海道開発のための様々な事業を総合的に実施してきました。この開発局は、この度の省庁再編により、平成13年1月から国土交通省の地方支分部局として再出発することになります。
北海道開発庁の所掌事務については、国土交通省にすべて引き継がれ、同時に開発局の所掌事務も基本的にはこれまでのものが継続されることとなります。
具体的な所掌事務の内容については、先頃成立した国土交通省設置法に規定されていますが、これまでの事務内容である「北海道総合開発計画の調査、農林水産省・運輸省・建設省の所管する直轄公共事業や官庁施設の営繕などに関する様々な事務」は、変更なく規定されています。それに加えて、さらには補助公共事業、都市計画行政、建設業・不動産業・測量業に関する行政、住宅・宅地行政等に関する事務が本省から新たに委任されることになっています。
このように、省庁再編に伴い、むしろ開発局の所掌事務は拡大することとなりますが、その結果、これまで以上に総合的な開発行政が実施できるものと考えています。
今後、開発局としては、そのための業務推進体制の整備充実を図っていかなければなりません。
また、行政全体としての課題である透明性、簡素・効率性の推進についても積極的に対処することにしています。道民をはじめ、国民に理解され、信頼される開発行政の推進に努めていきたいと考えています。
――「道民、国民に理解され、信頼される開発行政の推進」として、開発局では、アカウンタビリティ(説明責任)向上への取り組みを宣言しましたが、何を重点として進める考えですか
熊谷
今後の北海道開発事業を推進するに当たっては、国民・道民に北海道の望ましい姿について大いに議論していただき、多くの建設的な意見を出していただくことが大切だと思います。そのための環境醸成や機会を確保することがまず、重要と考えています。
そのためには、事業を進める過程で開発行政に関する情報を積極的に提供するとともに、十分説明した上で、広く意見を聴いたり参加する機会を確保することが必要です。
具体的な取組例としては、パブリシティ活動の充実やインターネツトの活用など、有効な方法により、より多くの情報をよりわかりやすい形で提供します。
また、各種委員会、懇談会などへ参加していただいたり、あるテーマについての意見募集やアンケート調査など、様々な形での機会を設けて意見を聴き、地域の信頼や期待に応えていきたいと思っています。

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